スタウサマー-ローバー博士の研究も含め,嘘と不適応に関するこうした研究のほぼすべてはある問題を抱えている。それは,心理学者が「後光効果(ハロー効果)」と呼んでいるものに対してそれらの研究が無防備であるという点である。この言葉は,もしあなたがある人物の良い点や悪い点を知っていれば,ほかにも良い点や悪い点を持っているだろうと考える傾向があるという事実を指している。もしも,マザー・テレサは子犬が好きだろうかと尋ねたら,おそらくあなたはイエスと答えるだろう。わたしはそれを「天使の後光(ハロー)/悪魔の角(ホーン)効果」と呼んでいる。なぜなら,それは肯定的にも否定的にも作用するからである。ヒトラーは赤ん坊が好きだろうかと訊かれたら,多分ほとんどの人はノーと答えるだろう。天使の後光/悪魔の角効果はわたしたちを惑わせ,ヒトラーのような悪人ならば,赤ん坊のことを好むといったやさしさは持っていないだろうという予測へと導くのである。
ポール・エクマン 菅靖彦(訳) (2009). 子どもはなぜ嘘をつくのか 河出書房新社 pp.80-81
PR