重要なのは,子どもの反社会的な行動の発達に,嘘がどんな役割を果たしているかということである。嘘をつくことはさらに深刻な問題の兆候なのだろうか,それとも続いて起こる問題の原因なのだろうか?嘘をつくこととは単に,面倒を引き起こす子どもたちがやらかすことの一部に過ぎないのだろうか?利口ぶった子が,教師が背中を向けている最中に紙つぶてを投げたとしよう。こうした推理に従えば,面倒を起こそうとしている子どもたちは嘘をつくだろうが,嘘をつく子どもが皆面倒を起こすとは限らないと言えるだろう。
それとは反対の見方では,嘘をつくことは子どもを反社会的な行動パターンへと導く第一歩であり,ひょっとしたら非常に重要な一歩かもしれないと考える。嘘をつくことは,子どもが悪い方向へ向かっていることを示すもっとも想起の兆候の1つなのかもしれない。責任を回避する,罰を逃れる方法を学ぶ,成功するためにおべっかを使うといったことは子どもに他のルールを破ることを教えるのかもしれない。嘘をつくことは,問題が持ち上がろうとしていることを示す前兆かもしれないのである。子どもが嘘を隠し通した場合,それによって別の反社会的行動に関わる危険を冒すことになるのかもしれない。
ポール・エクマン 菅靖彦(訳) (2009). 子どもはなぜ嘘をつくのか 河出書房新社 pp.109-110
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