I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

16世紀イギリスの砂糖・ビール・タバコ

 階級を問わず誰もが好んだのは,甘い味付けだった。料理の多くは甘い砂糖衣でべとべとにコーティングし,ワインにまでたっぷりと砂糖を入れることがあって,魚料理にも卵料理にも肉料理にも砂糖は使われた。ここまで砂糖好きが昂じると歯が黒くなる人も大勢いて,ふつうに暮らしていてはそこにまでいたらない人は,砂糖くらい食べてますというところを見せるためにわざと歯を黒くすることもあった。女王をはじめ金持ちの女性たちは,これに加えて肌を硼砂や硫黄や鉛----どれも多少は有毒だが,時にはかなり毒性の強いものもあった----を混ぜ合わせたもので漂白し,この世のものとは思えぬ美しさをかもし出していた。というのも,青白い肌こそ最高の美人のしるしだったからだ(となると,シェイクスピアのソネットに登場する「黒い婦人(ダーク・レディ)」は奇妙すぎる存在だといえよう)。
 ビールは盛大に飲まれ,朝食のときにも,快楽を敵視するピューリタンたちにも,飲まれた(ピューリタンの主導者ジョン・ウィンスロップがニューイングランドへ渡るとき,その船にはウィンスロップと1万ガロンのビールのほかにはほとんど何も積まれなかった)。1日1ガロン(約3.8リットル)が僧侶たちのふつうに飲む量だったというから,ほかの人がそれ以下ということはなかったと思われる。ただし,外国人はイギリスのエールに馴染めなかった。大陸から来たある外国人は「馬の小便みたいに濁っている」と不安げな言葉を残している。裕福な人々はワインを飲んでいた。それもたいていはジョッキで。
 タバコはシェイクスピアが生まれた翌年にロンドンに伝わり,最初の頃こそ贅沢品だったがすぐに広まって,16世紀の終わりにはロンドンだけでも喫煙者は7千人をくだらなかった。喫煙は嗜好品としてだけでなく,性病や偏頭痛や,なんと,口臭にまで効く治療薬としても用いられた。とくにペストの予防薬として信頼が厚かったので,小さな子供まで喫煙を奨励された。イートン校では,喫煙をサボった生徒が鞭打ちの罰を受けた時代もあった。

ビル・ブライソン 小田島則子・小田島恒志(訳) (2008). シェイクスピアについて僕らが知りえたすべてのこと 日本放送出版協会 pp.76-77

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