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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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マレーのTAT

20世紀半ばの心理学は,プロの領域となりつつあったが,傑出したアマチュアも食い込む余地があった。その時代の優れた人物の1人が,ヘンリー・A・マレーである。ニューヨークの名家の子息で,巨額の不動産の相続人だ。グロトン校とハーバード大学を卒業し(両校を通じてデブルー・ジョセフスと同級生),医者になった。1920年代に大西洋を横断するあいだ,『白鯨』を読んで衝撃を受ける。そして即座に医者を廃業し,心理学者になると決断。マレーは博士号を取らないまま,ハーバード大学の教授に就任した。長身で礼儀正しく,こざっぱりした身なりの紳士だが,外見と違って,強迫観念,強迫衝動,抑制できない欲望といった暗い奥底の世界に完全に没頭していた。それはマレーがハーマン・メルビルの作品に強く引き寄せられていたからである。彼は長年かかって,26種に及ぶ根本的な人間の要求(need)の図式を開発。その多くは暗く恐ろしい中世欧州の感覚だ。n支配,n顕示,n屈従などである。
 マレーは長年,妻と離婚しないまま,助手の1人と苦痛に満ちた濃厚な恋愛関係にあった。相手はクリスティアナ・モルガン。カール・ユングのもとで学んだスイス女性である。マレーとモルガンは共同で,主題統覚検査(TAT)を開発した。被験者は硬いカードに描かれた白黒の絵を見て,思いつくストーリーを語る。大半の絵は,わざと動揺させるような場面が描かれている。マレーとモルガンは,被験者が表現するストーリーは無意識の深い部分から出てくると考えた。

ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.109-110
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