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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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SPIの場合

では,<より公正>であり客観的と主張する心理テストの評価の中身は,じっさいにどんなものだっただろうか。ここに総合人格診断検査(SPI)の実例をあげておこう。
 この検査は人格を行動的側面・意慾的側面・情緒的側面に分けてそれぞれ各側面をさらに細分化して点数で示し(たとえば,社会的内向性37,持続性60,敏感性53,高揚性58,いずれも100点満点),さらに性格類型を内向・直観・感情・知覚の4項目で得点化し,次のように判定する。
 「外界に対して気軽に働きかける社交家である。感じたこと考えたことをちゅうちょなく表現する一方,他人の感情にも敏感で思いやりがあり,友好的な印象を与える。人の気持ちを犠牲にしてまで能率本位に仕事を進めることは好まず,他人に対して同情的で人間関係の調和を重んじながら進めていこうとする。ものの見方は,どちらかといえば現実的で,観念的なものより日常の体験や目前の具体的事実を重視し,周囲の状況に逆らわず,柔軟に適応していく傾向がある。細かい注意力を要する仕事やじっと机に向かう仕事は苦手で,活動的な仕事や人と接することの多い仕事に喜びを見いだす。筋道を立てて論理的に考えることが苦手で注意や考えが散漫になったり,安易な妥協をしやすい。状況に流されたり,いたずらに感情に左右されないように留意するとともに,物事を能率的に進めることの必要性を認識し,ときには合理的に割りきって,厳しい態度で望むことが肝要である」

 また,これらの診断から職務適応性として社交性・対人指向性を必要とする職務に適していると述べている。担任が3年間ないし4年間,子どもとつき合ってきて具体的な生きざまを書ききった中身と比べて,何とそらぞらしい(そして同時に傲慢な)言葉の羅列だろう。企業の側にしても,これらの点数なり評価を本気で信じているというより,好ましくない者を排除するための口実として使用する可能性こそ問題であろう。たとえば,企業が本心では国籍を問題にしながら心理テストで気分性が何点以下だったので採用しなかった,などと主張するのに使われることが恐ろしいのである。このような似非科学性の上にあぐらをかき,企業にテスト問題を販売しているテスト業者と,これに癒着する一部の心理学者の態度は今後とも,きびしく見守っていかねばなるまい。

日本臨床心理学会(編) (1979). 心理テスト・その虚構と現実 現代書館 pp.105-106
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