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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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Y-G検査の場合

Y-G検査の実際の使われ方を問題にする前に,この検査が具体的にどのような手順を経て,どのような論理に基づいて作成されたかを,みておくことが必要であろう。しかし,本稿の目的は,それらを「実証的」に批判してゆくことではないので,辻岡美延氏が作成過程をまとめた論文より,辻岡氏の「意図」を最低限明らかにするにとどめたい。
 彼はまず,妥当性と信頼性の概念を問題にしているが,妥当性に関しては実際的妥当性よりも因子的妥当性を優先させようとする立場を明らかにし,「信頼性を高めるという目標はそれぞれの下位検査に向け,妥当性を高める目標はテストバッテリーそのものに向けられるべきだと考え」ている。
 辻岡氏はこの論文の目的を次の7点に要約している。
 (1)内的整合性を有する特性別人格診断目録を作成すること。
 (2)その検査の尺度間の因子構造を明らかにすること。
 (3)各尺度を構成している項目間の因子構造を明らかにすること。
 (4)各尺度の信頼性を明らかにすること。
 (5)大学生・高校生・中学生・一般成人・非行少年などの集団について本検査の標準化を行なうこと。
 (6)種々の実際的分野における本検査の実際的妥当性を検討すること。
 (7)他の人格検査との関係を研究すること。(ただし,実際には(5)の大学生の標準化までで,それ以外の集団及び(6),(7)については論じられていない。)
 なお,辻岡氏はまず信頼性と因子的妥当性の高い尺度を作成し,次に種々の現場で,種々の立場からの実際的妥当性を検討することを課題として設定しているのであるが,これらの現場及び立場として,「教育的な場では教育的価値観から,産業では作業員の能率や適性や作業への適応度の観点から」をあげている。このように作成過程の当初から,Y-G検査の用途として,教育・臨床・産業のように多方面な場を考えていたということは,記憶されるべき点であろう。

日本臨床心理学会(編) (1979). 心理テスト・その虚構と現実 現代書館 pp.213-214
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