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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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「中程度の相関」の意味

「中程度の相関」が日常生活でも重要な意味をもつということをご理解いただくために,人種差別とまったく関係のない例でご説明しよう。あなたは銀行の支店長で,多数の借入申込者のうちの誰に融資するかを考える仕事をしていると想像してほしい。多くの借り手はきちんと返済するし,人によっては全額でなくとも何割かを返済する場合もある。しかしなかには銀行にとって利益をもたらし得る十分な額を支払わない者もいる。ただ,幸運なことに,あなたには各々の借入申込者について,信用評価という,支払い能力の適性を判断する材料があると考えてほしい。
 この例を使うにあたり,もう1つ前提が必要になる。前提として以下を推測してみよう。それは,あなたは銀行の支店長として,一般的銀行にとって利益になるのに十分な返済ができるのは借り手のうち半数であることを知っている,というものである。この場合,申込者の信用評価が彼らの実際の返済額と完全に相関するなら,あなたの課題はすべて解決したことになる。つまりあなたは,借入申込者を支払い能力の信用評価順に並べ,上位50%の人にまで融資をすればよいのだ。それによって,あなたは銀行にとって利益になるのに十分な額の返済をするとわかっている人にのみ融資をすることになる。そしてあなたは銀行の利益を最大化することができるのだ。
 しかし当然ながら,信用評価は完全ではない。信用評価スコアと融資の返済額の相関は,1という完全な値になることはない。ここで,あなたの手元にある信用評価と,期待される返済額の相関が中程度(.30)であると仮定しよう。この場合,あなたが申込者のなかで信用評価の高い人から順に50%の人に融資をしたとすると,銀行にとって利益となるレベルまで返済する人は,そのなかの65%となる。もしも低い方から順に半数の人に融資をした場合,返済する人の率は35%である。当然ながらこれは明らかに完全な結果ではないが,信用評価スコアを全くもっていない状況と比べると,はるかに望ましい状況であることはおわかりだろう。情報がまったくない場合,確率的に,融資した半分は利益を生むが半分は損失となる。これは,銀行は利益がほとんどないか全くない事態になることを意味する。中程度の「予測的妥当性」の相関をもつ信用評価スコアは,可能な限り最大の利益とはいかなくとも,かなりの利益を得ることを可能にするのだ。

M.R.バナージ・A.G.グリーンワルド 北村英哉・小林知博(訳) (2015). 心の中のブラインド・スポット:善良な人々に潜む非意識のバイアス 北大路書房 pp.91-92
(Banaji, M. R., & Greenwald, A. G. (2013). Blindspot: Hidden biases of good people. )
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