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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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殺人への抵抗を減らす武器

 このような現象は,軍事史をひもとけばいたるところに見られる。たとえば戦車(チャリオット)(馬に牽かせる古代の戦車)である。戦車はきわめて長期にわたって戦場を支配してきたが,その理由はしばしば不可解とされてきた。戦術的,経済的,そして力学的に見た場合,戦車はコスト効率のよい戦争の道具とはいえない。にもかかわらず何世紀にもわたって戦場の花形でありつづけたのである。だが,戦車のもたらす心理的影響に目を向ければ,その成功の理由はすぐにわかる。戦車は史上初の組扱いの武器(クルーサーブド・ウェポン)だったのだ。


 ここには複数の要因が関わっている。長距離兵器としての弓,射手が高貴の身分だったことによる社会的な距離。戦車は敵を追跡して背後から矢を射かけるのに使われたから,そこから心理的な距離も生まれていた。しかし決定的だったのは,戦車が伝統的に御者と射手との二人乗りだったことだ。ただそれだけのことで,近接度の高い集団内における義務と匿名性が発生していたのである。第二次大戦中,ライフル銃手は15~20パーセントしか発砲しなかったのに,組扱いの武器(機関銃など)では100パーセント近くが発砲されていたのと理由は同じである。



デーヴ・グロスマン 安原和見(訳) (2004). 戦争における「人殺し」の心理学 筑摩書房 pp.258-259


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