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読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

ヴントの実験心理学

 ヴント心理学の二本の柱の一つである実験心理学は,1874年の主著の表題に即して言えば「生理学的心理学」であるが,伝えられるところによると,この名称は,上記の表題以外ではあまり用いられず,彼自身も“実験的”という言葉の方を早くから慣用的に使っている。ヴントの場合,“実験的”というのは“生理的”というのと内容的にまったく同じで,そのころの感覚生理学者が日常ごく普通に用いていた実験室的方法のみが念頭に置かれており,したがって,彼の言う<実験>は非常に限られた意味しか持っていない。一方,ある学問が他の学問と異なる独立した一個の学と呼ばれるためには,当然,その学問に固有の方法と固有の対象ないし立場が明確にされていなければならない。“生理学的”方法を用いることは,これまでの“哲学的”心理学に対する新しい心理学の立場を明らかにするものではあるが,たんに“生理学的”方法を用いるだけでは,従来の生理学者による感覚知覚の研究から区別された生理学的“心理学”の存在理由として不十分である。ヴントの実験心理学をそれまでの感覚生理学から独立させ,“生理学的”諸学に対してユニークな学問にしてきたのは,したがって,生理学的方法と並ぶ内観的方法(方法としての内観)の定式化であり,生理過程ではなく意識過程を固有の研究対象と定めた点であろう。



高橋澪子 (2016). 心の科学史:西洋心理学の背景と実験心理学の誕生 講談社 pp.186


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