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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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人のほうが安上がり

 どうやら,1700年から1800年のあいだに,日本人は集団で犂を捨てて鍬を選んだようだ。その理由は,役畜より人間のほうが安く使えたことにある。当時は人口急増の時代であり,それを実現したのは生産性の高い水田だった。水田は窒素を固定できる水中の藍藻のおかげで自然に肥沃になるので,肥料がほとんど必要ない(ただし,人間の糞尿はこつこつ集められ,慎重に保存され,念入りに土に施されていた)。豊富な食糧と衛生に対する入念な取り組みのおかげで日本の人口は急増し,土地は不足したが労働力は安かったので,犂を引く牛馬に食べさせる牧草を育てるために貴重な農地を使うより,人間の労働力を使って土地を耕すほうが,文字どおり経済的である状態に達した。そうして日本人は自給自足を強め,見事なまでに技術と交易から手を引き,商人を必要としなくなって,あらゆる技術の市場が衰退した。さらには資本集約的な銃を使うのを止めて,労働集約的な刀を選んだ。優れた日本刀の刀身は強い軟鋼で作られているが,そのもろく硬い刃は,延々と鎚で鍛えられることで恐ろしく鋭利になっている。



マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.308-309


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