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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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必要IQの低下

 過去には,大学院志望の学生を気後れさせるIQはいくつだったのだろうか?修士取得者の平均IQが125だったとすると,その下限は117.6だったと推定できる。これは,時代とともにIQが上昇するという事実について,きわめて重要な情報を提供してくれる。1960年から2010年の50年間に,大学院に入学可能なIQの下限が117.6から103に下がり,その差は14.6ポイントである。その間のIQ上昇はどれくらいだったのだろうか?WAISの場合,1953年~54年から2006年の間に16ポイント上昇している。この52.5年を50年に減らして換算すると,15.2ポイント上昇したことになる。


 これら2つはほぼ同じ数値である。このことは,最近の50年間のIQ上昇によって,専門職や準専門職に就くのに必要なIQの下限が15ポイント低下したことを意味している。つまり,IQ上昇には現実社会における職能レベルにおいて,見返りがあったのである。医師,経営者,銀行家,大学講師,技術者などの専門職や準専門職は,50年前まではIQが15ポイント高い人々の職業であり,このレベルのIQの人々は,もちろん今日にでもこれらの仕事をこなすことができる。そうだとすれば,次のような反論が出るかもしれない。すなわち,それらの仕事は今日ではそんなに認知的要求が高い仕事ではなくなったのではないかという反論である。しかし,私の医学系の同僚たちは,今日の医師は昔よりも多くの科学についての知識が必要だと言い,商学系の同僚たちは,今日の経営者は幅広い知識に基づく企画力が必要だと言い,経済学系の同僚たちは,今日の投資着運行の銀行家は複雑な知識を駆使する認知的熟達者だと言っている。もちろん私の仕事である大学の研究者も,しっかり講義もし,研究もしなければならないので,昔に比べると非常に多くの知識を持っていないと務まらない。


 以上を総括すると,次の結論を導き出すことができる。すなわち,大学や大学院入試の合格yラインが下がったことは,20世紀の認知的進歩が決して幻想ではなく,現実であることを示す最も確かな証拠なのである。



(Flynn, J. R. (2013). Intelligence and Human Progress: The Story of What was Hidden in our Genes. New York: Elsevier.)


ジェームズ・ロバート・フリン 無藤 隆・白川佳子・森 敏昭(訳) (2016). 知能と人類の進歩:遺伝子に秘められた人類の可能性 新曜社 pp.120-121


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