I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

クリティカル・マス

 いま挙げた例すべてに共通するのは,人々の行動が,どれだけ多くの人がその行動をとるか,あるいはどれだけの頻度でその行動をとるかに左右されることである。どれだけ多くの人がどれだけの頻度でセミナーに出席するか,どれだけ多くの人がどれだけの頻度でバレーボールに参加するか,どれだけ多くの人が喫煙するか,二重駐車するか,どれだけ多くの人がどの程度力強く拍手するか,どれだけ多くの人がさびれた地区を離れるか,どれだけ多くの生徒が転校していくか,といった具合に。


 これらの行動を総称して,クリティカル・マスと呼ぶ。社会科学者はこの名称を原子力工学からとった。原子力工学では,原子爆弾に関連してこの言葉がよく使われる。ウラニウムのような物質の中で放射性崩壊が発生すると,中性子が大気中に放出される。中性子が他の原子核に衝突すると,核が分裂して2,3個の中性子が飛び出し,それがまた同じことを繰り返す。ウラニウムが少量の場合には,中性子からすれば空間はほとんど「空っぽ」で他の原子と衝突する可能性はごく小さいため,新たな中性子の放出はごく少量にとどまる。だがウラニウムが大量であれば,衝突する可能性が高くなり,2個以上の中性子を生み出すことになる。さらに,中性子の半分以上が新たに2個の中性子を生み出せるだけの量のウラニウムが存在すれば,この分裂反応は自律的に維持されるようになる。このときにウラニウムの量を「臨界質量(クリティカル・マス)」と呼ぶ。臨界質量を上回るウラニウムが蓄積されれば,1個の中性子が平均して1個以上の中性子を生み出す。爆発的な連鎖反応が起きると(密閉空間の中で火薬1粒の爆発が他の爆発を誘発する現象と似ている),ウラニウムは一瞬で全部消費される(ウラニウムがばらばらに飛び散って反応が止まる場合を除く)。



トーマス・シェリング 村井章子(訳) (2016). ミクロ動機とマクロ行動 勁草書房 pp. 103-104


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