I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

科学は可能性

 科学は私たちに説明を探すための戦略を授ける――だが絶対的な真理を探すための戦略はもたらさない。それどころか,絶対的な真理を求めるなら目を向ける先は純粋数学か宗教しかなく,断じて科学ではないと言われている。なぜ純粋数学が絶対的な真理をもたらすかと言えば,純粋数学とは単にあるルール一式を適用した場合にある公理一式からもたらされる結論を導くことだからだ。あなたは独自の世界を定義するわけで,その中でなら確かに絶対的な真理を述べられる。一方,信仰の表現としての宗教は,ある絶対的な真理を信じていることの表明である。


 それに対し,科学は可能性がすべてだ。私たちは理論を,予想を,仮説を,説明を提唱する。そして証拠やデータを集め,その新たな証拠に照らして理論を検証する。データが理論と矛盾するなら理論のほうを変える。そうすることで科学は前進し,理解はいっそう深まる。だが,既存の理論と矛盾する新たな証拠が出てくる可能性は常にある。結論が変わりうること,すなわち真理が絶対でないことは科学のきわめつけの本質だ。



デイヴィッド・J・ハンド 松井信彦(訳) (2015). 「偶然」の統計学 早川書房 pp. 253


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