しかし,この世で最も致死率が高いのは,アンボイナガイ(Connus geograohus)だ。70%という死亡率は,無脊椎動物でずば抜けている。この信じられないような数字は,相手を死に至らしめるスピードに裏打ちされている——一気に麻痺が進行し,数分のうちに死んでしまうのだ。
死亡率は,その毒液が人間にとってどれほど危険であるかを,他の指標よりも正確に反映してはいるが,だからといって完璧なわけではない。たとえばヘビ類は,それに対する抗毒素が開発されたために,最近では致死的な毒性のランキングではかなり低い順位(少数の例外はあるが)になっている。そして,死亡率による「致死度」の計測は,医療サービスをすぐに受けられるかどうかによって,その数字が大きく変わってしまうという問題点もある。
クリスティー・ウィルコックス 垂水雄二(訳) (2017). 毒々生物の奇妙な進化 文藝春秋 pp. 46
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