ホブソンは,夢は本質的に幻覚めいたものであるという自身の仮説の根拠として,覚醒時と夢を見ているときの脳の活動の違いを明らかにした実験結果をあげている。被験者にポケットベルをもたせ,日中地下鉄に乗っているときやデスクで仕事をしているときなど,研究者がいきなり連絡をとって,いま何を考えていたかと聞く。被験者は夜間にはナイトキャップをつけ,寝入りばなからノンレムとレム段階の夢を報告する。この実験でデータとして価値のある報告が1800件集まった。ホブソンらは,それらを感情の強さ,思考の質,荒唐無稽さなどさまざまな基準で判定した。めざめて静かにしているときから寝入りばな,レム段階まで,思考が形づくられる頻度は4分の1に減っていき,幻覚めいた妄想が現れる頻度は10倍増えることがわかった。
アンドレア・ロック 伊藤和子(訳) (2009). 脳は眠らない:夢を生み出す脳のしくみ ランダムハウス講談社 pp.56-57
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