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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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夢分析の落とし穴

 とはいえ,夢を読み解くことは,「ヘビが出てきたら,それはこういう意味である」などといった辞書式の定義に頼ってできる作業ではない。その定義が,フロイトの理論にもとづくものだろうと,古代中国の夢占いによるものだろうと,書店の棚に並ぶ流行の夢占い本から引っ張りだしてきたものだろうと,同じことだ。こうした単純なやり方で夢を解釈する慣行は,古代ギリシャからあった。紀元1世紀にアルテミドロスはギリシャ,イタリア,それにアジアの一部を旅して,多くの人々から夢の話を聞き集め,五巻の夢事典を編集した。これが夢解釈の最古の文献である。このアルテミドロスの時代から現代にいたるまで,夢解釈の本はすべて,夢に出てくるモチーフは何かのシンボルであり,そのシンボルは普遍的な意味をもつということを前提にしている。たとえばフロイトは夢の中で歯が抜けるのは去勢を意味すると述べているが,古代中国の夢占いでは同じモチーフが父親か母親が危ない目にあっているというお告げだとされている。
 こうしたワンパターンの解釈には共通の落とし穴がある。それを夢研究者のホールは次のように指摘する。「アルテミドロスは,チーズを食べる夢を見ると得をすると書いている。たまたまそういうケースがあったとも,夢を見る人の状況やどんな文脈でチーズを食べるかによるとも書いていない。チーズを食べる夢は一義的,普遍的に,時代を超えて常に1つの意味しかもたないとされる。このようにシンボルとそれが意味する事柄をイコールで結ぶ説明が,夢占い本の人気につながっているそこには例外もなければ,条件も付かず,判断したり区別したりする必要がない。お手軽な夢占い本があれば,だれでも簡単に夢を読み解き,未来を占えるというわけだ」

アンドレア・ロック 伊藤和子(訳) (2009). 脳は眠らない:夢を生み出す脳のしくみ ランダムハウス講談社 pp.201-202
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