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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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患者ではない人が病的だとされる

 1999年の夏にアムステルダムで開かれた国際ロールシャッハ会議の席上で,新たな事実が初めて明るみに出されて聴衆を当惑させた。「非患者のロールシャッハ・データ:世界中の知見」という平凡な題目のシンポジウムで,フィリップ・アードバーグ,トーマス・シェーファー,およびメキシコ,ポルトガル,フランス,イタリア,フィンランドの共同研究者たちが,国際共同プロジェクトの結果を発表した。ほとんどのロールシャッハ研究は,心理的問題を抱える人々に焦点を当てていたが,この研究者たちは非患者(明らかな心理的問題なしに社会で生活している人々)に関する結果を報告した。
 この一見したところ無難なプロジェクトの結果は,多くの心理学者が包括システムをみる見方を変えることになった重要な知見が2つあった。第1は,ヨーロッパ,中央アメリカ,アメリカ合衆国の人々のロールシャッハ・スコアは非常に似ていることが多いというものだった。この知見は多くの聴衆に歓迎された。包括システムが,アメリカ合衆国以外でも,文化的・言語的違いに大きく影響されることなく用いることができることを示唆していたからである。
 しかし第2の知見は人々を当惑させるものだった。さまざまな国で得られたスコアは互いに似てはいたが,包括システムの基準と合わなかったのである。包括システムの基準と大きく異なるロールシャッハ変数が次々と明らかになった。エクスナーの本の基準値と比較すると,アメリカを含むすべての国で,非患者は病的であると判定された。

J.M.ウッド,M.T.ネゾースキ,S.O.リリエンフェルド,H.N.ガーブ 宮崎謙一(訳) (2006). ロールシャッハテストはまちがっている—科学からの異議— 北大路書房 pp.208-209
(Wood, J. M., Nezworski, M. T., Lilienfeld, S. O., & Garb, H. N. (2003). What’s Wrong with the Rorschach?: Science Confronts the Controversial Inkblot Test. New York: John Wiley & Sons.)
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