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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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大人は子どもの心を知らない

 しかたがないので,ある作家から贈られてきた子どもむけの本を読み始めた。けれど,すぐに放り出してしまった。腹が立ったからだ。なぜかというと,この人は,この本を読む子どもたちに,子どもというものはのべつまくなしに楽しくて,どうしていいかわからないくらいしあわせなのだと信じ込ませようとしていたからだ。このうそつきの作家は,子ども時代はとびきり上等のケーキみたいなものだと言おうとしていたのだ。
 どうしておとなは,自分の子どものころをすっかり忘れてしまい,子どもたちにはときには悲しいことやみじめなことだってあるということを,ある日とつぜん,まったく理解できなくなってしまうのだろう。(この際,みんなに心からお願いする。どうか,子どものころのことを,けっして忘れないでほしい。約束してくれる?ほんとうに?)
 人形がこわれたので泣くか,それとも,もっと大きくなってから,友達をなくしたので泣くかは,どうでもいい。人生,なにを悲しむかではなく,どれくらい深く悲しむかが重要なのだ。誓ってもいいが,子どもの涙は大人の涙よりちいさいなんてことはない。おとなの涙よりも重いことだって,いくらでもある。誤解しないでくれ,みんな。なにも,むやみに泣けばいいと言っているのではないんだ。ただ,正直であることがどんなにつらくても,正直であるべきだ,と思うのだ。骨の髄まで正直であるべきだ,と。


エーリッヒ・ケストナー(作) 池田香代子(訳) (2006). 飛ぶ教室 岩波書店 p.19-20.


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