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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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二重思考の効用

 作家のジョージ・オーウェルは小説『1984』の中で,二重思考の概念を登場させた。自分の中に相反する2つの考え方を共存させ,両方とも受け入れることである。オーウェルの小説でこの方法を使うのは,たえず歴史を改竄しつづけ,大衆支配をもくろむ独裁政府である。だが最近の研究で,同じ手法のもっと前向きな使い方が示された。目標を達成し夢を実現させるために,応用ができるのだ。エッティンゲンはやる気を出すには,自分の目標達成について楽観的になる(プラス)と同時に,行く手に待ち構える問題(マイナス)を現実的に捉えるほうがいいと考えた。それを実証するため,彼女は風変わりな設定で参加者にプラスとマイナスの両方を考えてもらい,一連の実験でその有効性を調べた。
 やり方は簡単だ。まず参加者は減量,新しい技術の習得,節酒など自分が達成したい目標について考える。つぎに目標を達成したときの自分をしばらく想像し,目標達成でえられる最高のメリットを2つ書き出す。続いて参加者は,目標達成を目指す過程で遭遇しそうな困難や障害についてしばらく想像し,最大の障害を2つ書き出す。ここで二重思考が登場する。参加者は第1のメリットについて,それによって自分の生活がどれほど楽しくなるか細かく具体的に考える。その直後に,成功の前に立ちはだかる第1の障害について,遭遇したとき自分はどうするか細かく具体的に考える。同じことを第2のメリットと第2の障害についてもおこなう。
 いくつかの実験を通して,エッティンゲンはこの方法にプラスとマイナスの相乗効果があることを発見した。たとえば参加者が対人関係の改善を望んだ場合,二重思考をとるほうがたんにプラスだけの場面,あるいはマイナスだけの場面を想像したときより,成功する割合が高かった。エッティンゲンは,ひそかに恋心を抱く学生を対象とした実験に,二重思考の方法を取り入れてみた。夢と現実の両方を自分の中に取り入れた学生は,ひたすら甘いデートを夢見たり,恋心を打ち明けるむずかしさばかりを考えたりする学生より,恋に成功する割合が高かった。二重思考は,職場でも役立つことが証明された。社員を研修コースに参加させる,部下を効果的に使う,時間管理能力を上げるときなどに効き目があったのだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2010). その科学が成功を決める 文藝春秋 pp.93-94
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