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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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人類がやったようだ

 オーストラリアが有袋類の国であることはすでに述べたとおりだが,実は,5万年以上前のこの土地の光景は,現在と同じではなかった。このころオーストラリアには,もっと多様な野生動物がおり,その多くは現生の種よりも大型であった。有袋類としては,体長3メートルを超える草食動物のディプロトドン,体高が2メートルにもなるジャイアント・カンガルー,体長1.6メートルという大型のウォンバットなどが徘徊し,ほかにも体長5〜7メートルにもなる超巨大トカゲや,体重100キログラムに達する飛べない鳥もいた。ところがこうした動物たちは,氷期が終わる以前に絶滅し,姿を消してしまった。専門家の推計では,100キログラムを超えていた19種のすべて,そして38いた10〜100キログラムの種のうち22が,このときまでに絶滅したという。
 大絶滅の原因としては,環境変動と人間の関与という2つの可能性があり,双方の見解の支持者の間で激しい論争がなされてきた。環境変動説では,例えば2万1000年前頃の最終氷期の最寒冷期へ向けて降雨量が減り,乾燥化が進んだことが大型動物に不利に働いたと説明している。人の関与の中で最も直接的かつ影響が大きいのは,もちろん狩猟活動であろう。一方,アボリジニが行っていた野焼きが,絶滅の部分的な原因になった可能性も問われている。しばらく前まで,動物の絶滅と人の渡来のどちらの年代もあいまいであったため,環境か人間かの論争は膠着状態にあった。しかし最近の研究で,絶滅の年代と背景が少しずつはっきりしてきている。
 1999年,アメリカとオーストラリアの研究グループが,興味深い論文を発表した。オーストラリア南東部で出土した前述の巨鳥の卵の殻700点以上を年代測定したところ,この鳥が10万年以上前から存在し,約5万年前(測定誤差はプラスマイナス5000年ほど)に絶滅したことがわかったのである。続いてオーストラリアを中心とする別の研究グループが,ニューギニアを含むサフル各地に散らばる28地点において,絶滅動物化石の年代を調査するという大規模な研究の結果を,2001年の『サイエンス』誌に報告した。これによれば,絶滅の年代は約4万6000年前(測定誤差はプラスマイナス5000年ほど)で,多数の大型動物たちはこのころ,急激に消え去ったらしい。
 これらの研究成果は,サフルにおける大型動物の絶滅の背景に,ヒトの活動があったことを強く疑わせるものである。絶滅の年代が5万〜4万6000年前だったのであれば,2万1000年前ごろにピークを迎えた寒冷化が原因という考え方は,もはや成り立たない。新しく報告された絶滅年代は測定誤差が大きいので,仮にサピエンスの渡来が4万5000〜4万年前であったとしても,絶滅年代を下方修正すればシナリオは成り立つ。サフルの動物たちは,それまでホモ・サピエンスという動物を全く知らなかった。突然現れた侵入者に対して警戒心をもたなかったことが,この動物たちにとって命取りになったのであろう。

海部陽介 (2005). 人類がたどってきた道:“文化の多様化”の起源を探る 日本放送出版協会 pp.198-200
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