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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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異分野

 コミュニケーションをさらに困難にしたのは,異なる分野には異なる種類の人間が引き寄せられているという事実だった。統計重視のオフィスに行けば,よく整理された棚や引き出しがすらりと並び,そのなかには数字が整然と記された書類が積み重ねられているはずだ。のちの時代ならば,書棚の中身がコンピュータのプリントアウトになっているだろう。プログラムづくりに費やした無数の時間の成果だ。気候学者はどういう種類の人間かというと,おそらく少年時代は自宅に自分だけの測候所を作り,毎年毎年,日々の風速や降水量を細かく記録していたはずだ。海洋学者のオフィスに行けば,七つの海の岸辺で見つけた珍品がごちゃごちゃと山積みになっているだろう。ある経験豊富な研究者が船上で波にさらわれて間一髪で溺死を逃れたときの話など,冒険譚を聞かせてもらえるかもしれない。海洋学者は「潮の香りのする」タイプになりがちだ。快適な我が家から遠く離れた長い航海も慣れっこで,歯に衣着せぬ性格でときには自己中心的にふるまったりする。
 これらの違いは,使用するデータの種類といった実に基本的な事柄の多様性と一致していた。たとえば気候の専門家は,世界中の何千もの測候所から技術者が標準化されたデータを報告してくるWMOのネットワークに頼った。海洋学者は個人で観測機器を組み立てて,わずかな調査船のうちの一石の船側から海に下ろしていた。気候学者の天気は100万個の数値をもとに作成されたもので,海洋学者の天気——横なぐりのみぞれか,執拗な暖かい貿易風——とはまったく異なっていた。技術的な相違すら存在した。ある気候の専門家も1961年に次のように述べている。「たとえば気象学,海洋学,地理学,水文学[地球上の水の生成・循環・性質・分布などを研究する地学の一部門],地質学および雪氷学,植物生態学および植生史学など,あまりにも多数の分野——これらはほんの一部だ——がかかわっているという事実により……十分に確立された共通の定義や方法を用いて研究することが不可能となっている」

スペンサー・R・ワート 増田耕一・熊井ひろ美(訳) (2005). 温暖化の<発見>とは何か みすず書房 pp.46-47
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