忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

汚泥の汚染度

 汚泥には栄養分があるため,それを餌とする藻類が海中に繁殖しすぎて,水中に溶けている酸素を吸い尽くす。すると,ほかの生物が海に棲めなくなってしまう。汚泥が海を窒息させてしまうのだ。1989年には,海藻が大繁殖して,貝の養殖場が大きな被害にあった事態を受け,海洋投棄以外の汚泥の処理法を考えなくてはならなくなった。アメリカは,乾燥重量にして,年間700万トンの汚泥を産出していた。その捨て場所が必要になったのだ。
 このとき,だれかが19世紀のヨーロッパのことを思い出したにちがいない。19世紀の初めに下水設備が普及するまでは,自分の家族の未処理の汚物を自分の畑にまくのが,一般的な農家の汚物処理法だった。当時,パリの郊外にあるジェヌビリエでつくられる野菜には,パリのレストランから注文が殺到していた。カリフォルニア州,パサデナにある汚物を肥料に使う農場では,高品質のウォールナッツが収穫されていた。その後の安価な化学肥料の登場で,汚物を肥料とする農業に経済的価値はなくなったが,基本的には理にかなったやり方だ。適切な処理を施せば,下水汚物も栄養のサイクルの一環となりうる。食物が人間に栄養を与え,人間の汚物が食物に栄養を与えるのである。
 けれども,19世紀の終わりごろには,下水汚物は,人の糞尿だけを含むものではなくなり,そして昔ほどよいものではなくなっていた。下水に流されるものは,すべて汚泥に含まれている可能性がある。アメリカの産業界は,現在十万種の化学物質を使用しており,さらに毎年千種類の化学物質が新たに加えられていくと考えられている。この化学物質のなかには,PCBやフタル塩酸,ダイオキシン,その他の発がん性物質が含まれている可能性がある。また,汚泥には,あらゆる場所から集まった病原菌を含んでいる危険性がある。病院や葬儀場から出た廃棄物には,SARS,結核,肝炎などのウイルスが混入しているかもしれない。
 「〜の可能性がある」とか「〜かもしれない」という表現にならざるをえないのは,汚泥に含まれているものを正確に知ることは不可能だからだ。法律上は,企業は危険な化学物質や廃棄物を事前に処理することになっているが,その点についての監視はほとんどされていない。それに,いずれにしても,何千種類もの化学物質が,互いにどう反応し合うか,そして近くに潜む病原菌との間にどんな反応が起きるかは,だれにもわからないのだ。もっとも楽天的な見方をする人は,汚泥のことを,「未知なるものの混合液」だと考えている。それ以外の人々は,汚泥は有害そのものだ,と考えている。汚染物質を取り除いて濃縮し,汚泥にすることによって,水は浄化される。しかし,水の浄化処理の精度が上がったぶんだけ,残った汚泥の汚染度は高くなるのである。

ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.233-235
PR

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]