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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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ボブ・ヘアの経験

 1960年代の半ば——ちょうどエリオット・バーカーがオンタリオで,例のトータル・エンカウンター・カプセルを思いついたころだ——ボブ・ヘアはバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア重警備刑務所というところで心理学者として働いていた。近ごろでは,刑務所風のバーとかダイナーなんてのがあって,縦縞の囚人服を着たウエイターが,有名な収監者にちなんだ名前がついた料理を運んできたりするが,当時,刑務所といえば,野蛮な評判がつきまとうおっかない場所だった。エリオットと同じくボブも,自分が担当しているサイコパスたちは正気の仮面の下に狂気を隠していると信じていた。しかしボブは,エリオットほど理想主義者でなかった。彼が興味を持ったのは,サイコパスを回復させることではなく,サイコパスを見つけることだった。彼は何度も何度もずるがしこいサイコパスに騙されていた。たとえば,刑務所勤務の初日のこと。刑務所長から,制服が必要だから,刑務所内で仕立てを担当している収監者にサイズを測ってもらいたまえ,と言われた。そこでボブは言われたとおり採寸してもらい,その男がとても熱心にやってくれるのを見てうれしく思った。男は長い時間をかけてすべてのサイズを正確に測った。足のサイズや,脚の内側のサイズまで。ボブはその光景に感動した。このひどい刑務所のなかにも,自分の仕事に誇りを持つ男がいるのだ。
 しかし,あとでできあがった制服が届くと,ズボンの片脚はふくらはぎまでしかなく,もう片方は引きずるほど長かった。ジャケットの袖も同じく左右の長さが違った。ただのミスであるはずがなかった。明らかに,あの男が彼をピエロのように見せようと仕組んだのだ。

ジョン・ロンソン 古川奈々子(訳) (2012). サイコパスを探せ!:「狂気」をめぐる冒険 朝日出版社 pp.117
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