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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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広大な無償貸与

驚くべきは,ハドソン湾会社に与えられた領土の広さと,その境界の曖昧さである。特許状の文言は同社の領土を,ハドソン湾の海,沿岸,およびそこに流れこむ諸河川の流域一体と,ごく抽象的に規定している。だが海岸や内陸部の正確な地図がまだ存在しない以上,ルパーツランドと名付けられた領土が,実際どれだけの広さをもつのか,当時は誰にも検討さえつかなかった。19世紀にやっと北米大陸の地理が明らかになった時点で,ルパーツランドは東はラブラドールから西はロッキー山脈まで,きたは北極海から南は現在アメリカのミネソタ州,北ダコタ州までおよそ777万平方キロと主張された。先住民の存在なぞまるで顧慮することなく,イギリス議会の同意さえないまま,国王のペンの一振りで,同社は巨大な領土の「真の絶対的な支配者にして所有者」となったのである。湾岸と内陸での排他的な交易独占権は,より具体的に記されており,同社のみが領土内での交易と通商を支配でき,違反者は船舶と積み荷を没収され,1000ポンドの保釈金を支払うまで投獄と定められた。領土と独占権の代価として求められたのは,国王と彼の後継者がルパーツランドを訪問した際,「2頭のエルクと2匹のビーヴァー」を贈ることだけだった。王族がハドソン湾を訪れるなど当時は論外だったし,まったくの無償貸与に他ならない。

木村和男 (2004). 毛皮交易が創る世界:ハドソン湾からユーラシアへ 岩波書店 pp.16
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