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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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再入壜の実験

 「というのはどういうことですか」と野蛮人(サヴェジ)はたずねた。
 ムスタファ・モンドは笑った。「いや,これは再入壜の実験と呼んでいいかもしれない。それはフォード紀元473年から始まったことなのだ。総統たちはキプロスの島からその原住民をみな追い出してしまって,特に2万2千のアルファの集団を選んでこれに住まわせることにした。彼らには農工業のあらゆる設備や道具を手渡して,好き勝手にやらせることにした。ところがその結果は,まさに理論上での予想を完全に裏書きすることになった。土地は正しく耕作されず,あらゆる工場ではストライキが起こった。法律は無視され,命令は守られなかった。しばらく低級な仕事に振り当てられた連中はみな高級な仕事にありつこうとして,絶えず陰謀を企て,高級な仕事を持つ連中は何が何でも現状にしがみつこうとしてこれに対抗して陰謀をたくらむ。6年とたたぬうちに彼らは申し分のない内乱を引き起こしているという結末だ。2万2千のうち,1万9千まで殺されてしまったとき,残存者たちが世界総統たちにこの島の統治をも一度やって欲しいと嘆願してきた。そこでその通りにしてやることにした。かつてこの世に存在したアルファたちだけの唯一の社会は,こんなふうにして終わりを告げたのだ」
 野蛮人はため息を深くついた。
 「最適の人口は」とムスタファ・モンドが言った,「氷山になぞらえて構成される--つまり,9分の8が水面下,9分の1が水面上,というわけだ」
 「それで水面下の連中は幸福なんですか」
 「水面上の連中より幸福だよ。たとえば,ここにいる君の友人たちなんかよりはね」と総統は指さした。

ハックスリー 村松達雄(訳) (1974). すばらしい新世界 講談社 p.259
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