忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

追いつめられた研究者の様子

この異常事態を引き起こした原因を,さらによく読者に理解していただくため,追いつめられた大学研究者の立場をより具体的に説明しよう。
 (1)幸運にも研究費の配分にあずかった研究者(特に,研究履歴の短い若い研究者)は,「成果をただちにあげねばならない」という重圧を感ずる。
 (2)政府の会計年度は,毎年4月1日に始まり翌年の3月末日に終わる。しかしすでに述べたように,実際の研究費が大学に交付され,研究が可能になるのは,6月である。つまりこの年度の最初の2か月は研究の空白期間になる。
 (3)研究者の研究成果の報告は,筆者の経験では研究費交付年度の11月ごろである。つまり,研究者が研究成果をあげるための期間は半年に過ぎない。
 (4)もし研究者が研究費交付の初年度内に学術誌に論文を発表し,研究能力の高さを示そうと思えば,研究機関はさらに短くなる。なぜなら論文を学術誌に投稿し受理され,実際に出版されるまでには,1か月単位で時間がかかるからである。
 (5)実際には個々の研究プロジェクトは数年間継続するので,研究者はこの期間内に,なるべくインパクトファクターの高い(たとえば『ネイチャー』誌のような)学術誌に論文を発表しようとする。
 論文が出せないか,あるいはインパクトファクターの低い学術誌にしか発表できなければ,その研究者は能力に乏しいと見なされ,その将来は暗いものになる。わが国特有の,浅薄な「インパクトファクター偏重」の弊害である。
 (6)権威ある学術誌に論文が受理されるには,論文の内容がインパクトに富む必要がある。この目的のためには,たとえ研究者の守るべき倫理から「多少」外れても,論文原図の切り貼りが有効である。すでに説明したように,インパクトファクターの高い雑誌でも,査読者は玉石混交になりがちで,見た目に綺麗な原図が揃っていれば,彼らに与える印象は格段に良くなる。
 ここで「多少」という言葉を用いたのは,この言葉の研究者自身による解釈が,「悪意,あるいは故意による論文の捏造」か,あるいは「悪意のない論文の改変」か,を分ける分岐点だからである。この分岐点の判断は個々の研究者の主観に依存するので,第三者による判定は著しく困難である。

杉 晴夫 (2014). 論文捏造はなぜ起きたのか? 光文社 pp.78-79
PR

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]