もしあなたが商売をしていて,この点を理解しているなら,たいしたことができる。お客をおおぜい集めたい?何かを無料!にしよう。商品をもっと売りたい?買い物の一部を無料!にしよう。
同じように,無料!を利用して社会政策を推進することもできる。人々に電気自動車を運転させたい?登録や車検の手数料を安くするのではなく,手数料をなくしてしまって,無料!をつくりだそう。あるいは,公衆衛生に関心があるなら,重い病気への進行を防ぐ方法として早期発見に重点をおくことだ。人々に適正な行動----定期的な結腸鏡検査や,マンモグラフィー,コレステロールのチェック,糖尿病のチェックなど----をさせたい?自己負担金をさげて検査費用を安くするのではなく,重要な検査は無料!にしよう。
思うに,ほとんどの政策参謀は,無料!が手持ちのエースだということに気づいていない。まして,その切り札をどう使うかなど考えてもいない。予算削減が叫ばれる昨今,何かを無料!にするのはたしかに直観に反している。しかし,ちょっと立ちどまって考えると,無料!は絶大な力を持ちうるし,それを利用するのはとても意味があるものに思える。
ダン・アリエリー 熊谷淳子(訳) (2008). 予想どおりに不合理:行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 Pp.100-101
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