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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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ボトックス実験

ボトックス(科学者のあいだでは「ボツリヌス・トキシン」と呼ばれている)の注入は,世界できわめて人気の高い美容整形法の1つである。もともとは顔の筋肉痙攣の治療用に開発されたボトックスは,顔の筋肉の収縮に関わる神経を麻痺させる効果がある。1990年代のはじめに,研究者たちは眉間のしわにボトックスを注入すると,額の動きが部分的に麻痺し,しわが大幅に消えることを発見した。その結果顔つきが前より若々しくなるが,同時に表情がやや固くなり,能面のようになる。
 コロンビア大学バーナード校のジョシュア・イアン・デイヴィスとそのチームは,この若返り法がジェームズ理論の実証に役立つのではないかと考えた。デイヴィスは,実験のために2通りの女性参加者グループを集めた。片方はボトックス注入の施術を受けたグループ,もう片方は額にある種の”詰めもの”を注入するなど,べつの方法による施術を受けたグループである。どちらの方法も目的は若々しい外見を作りだすことだが,顔面筋肉を麻痺させるのはボトックスのみである。デイヴィスは,女性たちにビデオを何本か見せた。男が生きた毛虫を食べるおぞましいビデオ,最高に笑える愉快なアメリカのビデオ,ジャクソン・ポロックについての深刻なドキュメンタリービデオなどである。1本見るごとに,女性たちはビデオに対する感想を点数で評価した。結果を見ると,フィラーで施術を受けた女性たちに比べ,ボトックスで施術を受けた女性たちは感情反応が鈍かった。というわけで,動かないこと(この場合は顔の表情)が,感情体験を衰弱させるというジェームズ説の正しさが実証されたのだった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.119-120
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