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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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方向性は読めない

 核兵器からインターネットまで,あるいはレーダーから衛星航法まで,政府は大きな発明を多数生み出している。ところが政府は技術革新の方向性を見誤ることでも悪名高い。私がジャーナリストだった1980年代,ヨーロッパ諸国の政府はコンピューター産業を支援する各国の最新の取り組みについて自慢気に紹介してくれたものだった。プログラムはアルヴィー,エスプリ,「第五世代」計算機など人目を引く呼称を与えられ,ヨーロッパの産業を世界の頂点へと導くと考えられていた。彼らが手本としていたのは,やはり期待薄のアイデアであることが多かった。これらのアイデアを生み出したのは,当時流行の最先端にいたが,気のきかない日本の旧通商産業省(MITI)だった。これらのプログラムはかならず敗者を選び,企業を袋小路に追い込んだ。彼らが思い描く未来に携帯電話や検索エンジンは存在していなかった。


 そのころアメリカでは,狂気の沙汰としか思えないセマテックという政府主導の計画が進行中だった。大企業がメモリーチップ(生産拠点は雪崩を打ってアジアに移りつつあった)製造に乗り出せば国の将来は安泰だという前提の下,アメリカ政府はチップ製造業に1億ドルを投入した。ただし各社が相互競争を慎み,当時急速にコモディティー産業になりつつあったこの業界にとどまる努力を払うという条件で。このために1980年に成立した独占禁止法を改正しなければならなかった。1988年になっても統制経済を推進する人びとは,シリコンバレーの中小企業を「いつまでも起業の夢に取り憑かれている」ため,長期投資の対象にならないと批判した。まさにこのとき,マイクロソフト,アップル,インテル,のちにデル,シスコ,ヤフー,グーグル,フェイスブック――すべて,いつまでも起業の夢に取り憑かれている企業であり,これらの企業にとってガレージやベッドルームが起業の場だった――は,投影経済派お気に入りの大企業をいくつもなぎ倒しながら,世界制覇の基礎固めをしていたのだ。 



マット・リドレー 大田直子・鍛原多惠子・柴田裕之(訳) (2013). 繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史 早川書房 pp.410-411


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