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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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大虐殺の影響

 ポル・ポトの虐殺の被害者となった人々の職業的地位と彼らの子どもたち(もはや生まれてはこないのであるが)のIQの相関がどの程度であったのかは不明である。しかし,半農耕社会においては,おそらく米国での相関よりも低かったであろう。その当時のアメリカでは,その相関が0.300であったと推定できる(Flynn, 2000b)。したがって,仮に職業によって米国の人口のトップ26%を排除しても,その子どもたちのIQの平均値は1.92低下するにすぎない。さらに,ポル・ポトは純粋に職業的地位を実際の抹殺の基準としたのではなかった。その証拠に,虐殺を実行した彼の取り巻きたちの多くは知識人であった(ちなみにポル・ポト自身もソルボンヌ大学に入学した。もっとも,すべての教科で落第したのであるが)。さらに,彼が首都プノンペンに住む人々のすべてを排除しようとしたとき,その中には職業的地位が低い人も多く含まれていた。以上を総合すると,カンボジアの人々の遺伝的資産は,IQ得点に換算して1ポイントも低下しなかったのではないかと推定できる。つまり,カンボジアの人々の知的能力は,ポル・ポトの抹殺による被害をほとんど受けなかったと考えられる。


 カンボジアの目覚ましい復興が,そのことを証明している。ポル・ポト軍の残存者によって苦しめられたにもかかわらず,1979年に就任したヘン・サムリン新政権は,見事な復興を成し遂げた。新政権は,飢えの問題,学校,本,病院,警察,裁判所,市民サービス,郵便・電話・ラジオ・テレビなど通信事業の復興に着手し,1985年までに新しい行政的エリートと技術的エリートを育成した。そして社会は正常に戻ったのである(Flynn, 2012b)。



(Flynn, J. R. (2013). Intelligence and Human Progress: The Story of What was Hidden in our Genes. New York: Elsevier.)


ジェームズ・ロバート・フリン 無藤 隆・白川佳子・森 敏昭(訳) (2016). 知能と人類の進歩:遺伝子に秘められた人類の可能性 新曜社 pp.50-51


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