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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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不規則動詞の滅亡

 では,不規則動詞はどうやって生まれたのだろう?それには長い歴史がある。いまから6000年から1万2000年前にかけて,現代の研究者がインド・ヨーロッパ祖語と呼んでいる言語が広範な地域で使用されていた。英語,フランス語,スペイン語,イタリア語,ドイツ語,ギリシア語,チェコ語,ペルシア語,サンスクリット語,ウルドゥー語,ヒンディー語をはじめ,驚くほど多数の現代の言語がインド・ヨーロッパ祖語を祖先にもつ。インド・ヨーロッパ祖語には現代の研究者たちが母音交替(アプラウト)と呼んでいるシステムがある。これは,一定の規則に従って単語中の母音を変化させて意味や時制の異なる別の単語を派生させることをいう。英語では,いまでも不規則動詞の微妙な変化のパターンにこのアプラウトを見ることができる。


 一例として,sing(歌う),ring(鳴る,鳴らす)が過去形および過去分詞ではそれぞれsang,sungとrang,rungになるパターンがあげられる。もう一つの例は,stick(突き刺す,貼る)やdig(掘る)が過去形と完了形のどちらもstuckとdugに変化するパターンである。活用の規則が廃れてしまってっも,あとに言語の「化石」は遺る。不規則動詞はまさにそうした言語の化石なのである。


 巨大隕石の落下が恐竜絶滅の引き金になったとされている。では言語の世界では何が隕石の役割を果たしたのか?不規則動詞という化石だけを残して古代のアプラウトという規則を一掃したのは何だったのだろう?


 その隕石となったのは,現代英語で―edと表記される接尾辞,いわゆるデンタル・サフィックスだった。過去形を示すための接尾辞―edは,紀元前250年から紀元前500年ころにかけてスカンジナヴィアで使われていたドイツ祖語に由来する。



エレツ・エイデン ジャン=バティースト・ミシェル 坂本芳久(訳) (2016). カルチャロミクス:文化をビッグデータで計測する 草思社 pp. 59-60


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