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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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プラシーボの意味

 プラシーボ(placebo)という用語は,「私は喜ばせるでしょう」(この一句の含みは,「騙すことによって,私は喜ばせるでしょう」である)という意味の,死者を讃えるラテン語の晩禱の詩の翻訳をもとにして,19世紀に英語にとり込まれた。プラシーボ,および患者を幸福に保つために薬を処方するという医師たちの考え方には,医学の長い歴史がある。実際に,プラシーボを広範に研究したアーサー・シャピロとエイレン・シャピロという2人の医師は,「医療の歴史は最近まではおおむねプラシーボ効果の歴史であった」と述べている。この異論の多い仮説は,長年にわたって集められてきた民間薬のなかに有効な治療薬がたくさん見つかるのではないかという一部の人々の意見に公然と反対するものだ。しかしながら,シャピロたちによれば,太古の世界から伝えられてきた治療法には5000近くの薬が含まれるが,「ほとんどすべてがプラシーボで,ごく少数の例外も,可能性はあるが見込みの少ない憶測上のものにすぎない」と言う。
 実際に,科学的医学の時代以前には治療法の多くはプラシーボよりも悪く,瀉血,消毒していない針を用いた針治療,毒物,および不必要な外科手術など,明白に体に有害なものであった。医学はここ150年間に長足の進歩をとげ,病原菌が多くの病気を引き起こすという発見と,その後の生化学や遺伝学の発達をもたらしたが,20世紀に入ってもしばらくのあいだ,ほとんどの治療法はプラシーボでありつづけた。実際に,1950年という最近でさえ,『英国医学雑誌』の編者の言葉によれば,その当時に施された医療のおよそ40%はプラシーボとして用いられていたのである。

ロバート・アーリック 垂水雄二・阪本芳久(訳) (2007). 怪しい科学の見抜きかた:嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説 草思社 Pp.277-278
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