視覚的錯覚は目(実際には脳)を欺いて,現実には存在しないものを知覚させる。同様に心は欺かれて,テストに対する反応と性格との間に,実在しない相関を知覚してしまうことがあるといえる。チャップマン夫妻は他の研究で,特定のテスト反応と特定の性格特性との間に「言語的な関連」があるとき,相関の錯覚がもっとも起こりやすいことを示した。たとえば,体のどの部分が知能ともっとも密接に関連するかを人々に尋ねると,頭という答えが返ってくるし,体のどの部分が疑り深さと関連するかを尋ねると,目という答えが返ってくることが多い。学生たちと臨床家たちが特定のテスト反応と性格特性との間につながりがあるようにみえると答えるとき(大きな頭と知能の高さ,目と疑り深さ),実際には彼らは言語的関連に基づいて期待したものを答えているのかもしれない。
J.M.ウッド,M.T.ネゾースキ,S.O.リリエンフェルド,H.N.ガーブ 宮崎謙一(訳) (2006). ロールシャッハテストはまちがっている—科学からの異議— 北大路書房 p.145
(Wood, J. M., Nezworski, M. T., Lilienfeld, S. O., & Garb, H. N. (2003). What’s Wrong with the Rorschach?: Science Confronts the Controversial Inkblot Test. New York: John Wiley & Sons.)
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