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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「食・農業」の記事一覧

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隠れた問題

 残念ながら,多くの生産者や消費者がウソに気づいていない。その結果,奇妙な現象が起きている。たとえば,ある中国の団体が,地産地消活動の一環として,地元産のコメをレトルトパックのご飯にして売ることにした。だが,ご飯のレトルトパックは地元企業では作れないため,関東地方の企業にわざわざ地元の米を持ってゆき加工したそうだ。「地産地消」の名目で,コメが日本列島を大横断している。
 あるいは,「安全でエコな生活を」と,休日に都会から地方の直売所に車で乗り付ける消費者も目立つ。大型乗用車に乗っているのは1人か2人。買うのはごくわずかな野菜,というタイプだ。快適なドライブで,地方のよい空気を吸って気分がよいのは分かる。だが,近くのスーパーマーケットに歩いて行って買う方が,おそらくうんと環境にはやさしい。スーパーマーケットに並ぶ野菜は多くの場合,効率よく大量生産され,エネルギー効率のよい大型船や鉄道,大型トラックで運ばれているからだ。
 本当のことが伝えられず,消費者の「気分のエコ」の対象になっているのは,地産地消ばかりではない。減農薬や有機農業,食品リサイクルなど,褒めそやされるさまざまな事柄をじっくりと検討していくと,多くの問題が隠されていることに気付く。

松永和紀 (2010). 食の安全と環境:「気分のエコ」にはだまされない 日本評論社 pp.18-19
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カドミウムが多い

 実際に,火山国日本は土壌中のカドミウム量が比較的多く,農産物のカドミウム含有割合も諸外国に比べれば全般に高い。特に,コメはカドミウムの平均濃度が0.06ppmだが,栽培されている地域によっては1ppmを超えるコメもできる。国は1ppmを超えるコメは焼却処分とし,0.4ppm以上1ppm未満は農家から買い上げて工業用のノリとして処理している。
 米国のコメの平均カドミウム濃度は0.01ppm,タイは0.02ppmなので,これらに比べると日本のコメはリスクが高い。国際基準を検討するFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)では1998年,コメの上限許容値を0.2ppmに強化する案が浮上した。だが,これが決まって日本も従わざるをえなくなると,国産米の数%が食べられなくなってしまう。そこで,日本はさまざまな実験や調査の結果を提出し,日本国内で行っている0.4ppm未満を食用とする規制で,健康影響が発生していないことを主張した。議論の結果,コーデックス委員会は2006年,コメ上限許容値を0.4ppmとすることを決めた。
 皮肉なことだが,コメのカドミウム濃度が高くても,日本人が健康影響を心配せずにすむのは,コメを食べる量が減ったからだ。最近は「コメを食べて自給率を上げよう」という運動が盛んだが,日本人が再びコメを大量に食べるようになれば,カドミウムの摂取量は増え健康影響をもたらす可能性もあり,規制をより厳しくする必要が出てくるかもしれない。

松永和紀 (2010). 食の安全と環境:「気分のエコ」にはだまされない 日本評論社 pp.15-16

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