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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「パーソナリティ・個人差」の記事一覧

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予感とパーソナリティ

 2004年には,イギリスのノーサンプトン大学の心理学者リチャード・ブラウトンが,予感実験の成績と性格検査の関連を報告した。ひとつの性格検査は,マイヤーズ=ブリッグズのMBTIで,その直観指標と外向性指標にかんして,過去のいくつかの実験では超心理の発現と相関が見られていた。もうひとつは,NEO5因子で,その開放性にかんして,超心理の発現と相関が見られていた。ブラウトンもこの3つの指標について,相関があると予想して予感実験を行なった。
 128人の協力者をえて予感実験を実施したところ,全体の予感効果については,平均的な差異は見られたものの,統計的に有意ではなかった。3つの指標については,どれもそれらが高い協力者に高い予感効果が出る傾向が見られた。そのうち,MBTIの直観指標と,NEOの開放性因子が有意になった。

ディーン・ラディン 竹内薫(監修) 石川幹人(訳) (2007). 量子の宇宙でからみあう心たち:超能力研究最前線 徳間書店 p.237
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スタイルがわかれば争いも減る

 男女のスタイルに気づかないうちは,互いに相手の性格(「あなたは自己中心的だわ」「君は非論理的だよ」)や,意図(「聞いてくれる気持ちがないのね」「僕の話の邪魔をするつもりかい」)を,悪者に仕立ててしまいがちだ。
 しかし,それがスタイルの違いとわかれば,ムダな衝突は避けられる。「あなたは私の話に興味がないのね」「私のことを心配してくれていないんでしょう」「君は僕の自由をとり上げようっていうのかい」などとののしりながら,いちばん親しいはずの人とやりあうのはこの上なく寂しい。
 そんなときに,「この人は私とは違ったスタイルで,話に耳を傾けているんだわ」「彼は彼なりの方法で,私を気づかっているのよ」「彼女は僕との間に真剣に<親和>を築こうとしてるんだな」と理解できたなら,相手を非難したり自分を責めたりすることなく,自ら姿勢を調整し,相手にも協力してもらいながら,相互理解のベースに立ったやりとりができるはずだ。
 もちろん,互いの会話スタイルが理解できたところで,意見の不一致そのものはなくせないだろう。しかし,スタイルの相違に振りまわされず,純粋に問題そのものに焦点を当てた話しあいはできるようになると思う。

デボラ・タネン 田丸美寿々(訳) (2003). わかりあえる理由・わかりあえない理由:男と女が傷つけあわないための口のきき方8章 講談社 pp.291-292

それは本当の優しさか

 フレグルが言うように,もしトキソプラズマに感染した女性に「思いやり」があり,男性に規則を守らない傾向があるとすると、「やさしさ」というのは,人間の性格のひとつだとつねに言えるのだろうか。もしかしたら,病気の症状の一種にもなり得るのだろうか。トキソプラズマにしろ何にしろ,ある人が長年抱えてきた病気を治した結果,その人の性格が変わったとしたら,果たして元の性格はその人自身のものだったと言えるのか。やさしさや無謀さなどの性格が生活環境から影響を受けるのを否定する人はいないが,ある女性が寄生者からも影響を受けているとしたらどうだろう。その女性は,寄生者なしで同じくらいやさしいほかの女性よりも,本当はやさしくないのだろうか。

マーリーン・ズック 藤原多伽夫(訳) (2009). 考える寄生体:戦略・進化・選択 東洋書林 p.347
(Marlene Zuk (2007). Riddled with Life: Friendly Worms, Ladybug Sex, and the Parasites That Make Us Who We Are. Orland: Houghton Mifflin Harcourt.)

トキソプラズマと性格

 だが,もしかしたら人間におけるトキソプラズマの影響は実際にはあり,寄生虫に感染したカダヤシの泳ぐ速さがほんの少しだけ遅くなるように,見た目にはほとんどわからないだけなのかもしれない。チェコの首都プラハにあるカレル大学のヤロスラフ・フレグルは,トキソプラズマへの感染の痕跡が認められる人と認められない人との性格のちがいを研究している。まず,大学の学生と職員の中から男女合わせた338人に,標準的な性格テストを実施した。その結果,女性にはトキソプラズマの影響は認められなかったが,感染した男性の場合には,性格が控え目で,他者を信頼しにくく,規則を守らない傾向があった。ちがいは小さいが,はっきりしている。この結果を検証するために,サンプルの規模を大きくして同じ調査をしたところ,男性では同様の結果が得られた。また女性の場合は,トキソプラズマの痕跡が認められる人には,社交的で人を信用しやすく,自分に自身をもつ傾向が認められた。
 フレグルは,実験の対象をもう少し広げ,軍の徴集兵857人に同じ性格テストを実施した。今回は男性だけだが,感染者には新しい物事に関心をもたない傾向が認められ,他者を信頼しにくいという前回の結果と合致する結果が得られた。また意外なことに,知能指数が若干低い傾向もあった。フレグルらは,男女の反応の速さも調べた。これには,コンピュータ画面に黒っぽい四角が現れたときにキーを押すという,一般的なテスト法を用いた。その結果,感染者は反応時間がやや長かった。これは,ネズミにおけるトキソプラズマの影響と一致しているように見える。反応時間が遅くなると,ネズミは捕食されやすくなると考えられるからだ。
 人間の場合,反応時間は別の面で重要なのかもしれない。フレグルらは,交通事故との関係も探ってみた。交通事故に関与したプラハ市民146人と,事故現場と同じ地域にすむ446人を比較したところ,事故に関与した人たちに,トキソプラズマの痕跡が多く認められたのだ。車にはねられた歩行者であるかドライバーであるかに,ちがいはなかった。なお,信号待ちしているときに追突されたドライバーなど,事故にまったく影響をおよぼしていない人たちは,分析から除外してある。事故にあうリスクは,感染の痕跡が新しい人のほうが,痕跡が古い人よりも高かった。フレグルは何も触れていないが,この結果だけを見ると,トキソプラズマへの感染を事故の言い訳にして反則切符を逃れようとする人が,そのうち出てきそうだ。特に,チェコ国民よりも訴訟好きの人々がすむどこかの国では,あり得るかもしれない。

マーリーン・ズック 藤原多伽夫(訳) (2009). 考える寄生体:戦略・進化・選択 東洋書林 pp.345-346
(Marlene Zuk (2007). Riddled with Life: Friendly Worms, Ladybug Sex, and the Parasites That Make Us Who We Are. Orland: Houghton Mifflin Harcourt.)

素直に行動すれば個性的

 個性に強いも弱いもない。良いも悪いもない。「個性がない」という状態がそもそもありえないことだし,「個性的」という表現に至っては,なにか全然違うイメージをみんなが抱いている可能性がある。違う言葉でいえば,「珍しい」くらいの感じだ。
 個性を出す方法は極めて簡単である。素直に行動していれば,その人の個性のままになる。それでは不都合がある場合には,少し首を引っ込めて,我慢をしなければならないかもしれない。あまりに個性的だと,人に理解をしてもらえないことになるからだ。でも,個人から発するものを,言葉という共通の通信手段に乗せる段階で,たいていは首を引っ込めたのと同じ状態になるから,そんなに気にすることではない。

森博嗣 (2009). 自由をつくる 自在に生きる 集英社 p.124

暗いことを規制する法律はない

 ついつい,「明るいことは良いことであり,暗いのは悪いことだ」とイメージしてしまう。「お前は暗いな」という言葉が悪口になっている。明るい犯罪者と暗い正義の味方,というのは,僕は「バットマン」くらいしか知らないけれど,けして「あってはならない」ものではない。暗いのがどこがいけないのか。その論理的な理由は特に思い当たらない。籠もること,暗いことを規制する法律はないのである。

森博嗣 (2009). 自由をつくる 自在に生きる 集英社 pp.70-71

フリン効果の原因:フィードバック効果

 ジェームズ・フリン自身は,自らの名が冠せられたこの効果の意味について考えを変えたように思われる。フリンはかつて,IQの長期的な上昇は実社会の知的能力の向上とは関係がなく,それがどう説明できるかは不確かなままだという意見だった(フリンが懐疑的だった理由の1つは,もし環境条件の変化で,ある世代から次の世代へ平均10ポイントのIQ値の上昇を説明しなければならないとすると,そうした変化は信じられないほど大きなものでなければならないということであった)。
 もっと最近になってフリンは,ブルッキングズ研究所のウィリアム・ディケンズとチームを組み,IQ得点の上昇を説明するための特別な数学モデルを提案した。このモデルで,フリンとディケンズは,IQ得点の上昇は,実は時代につれての認知能力の向上を意味しているのではないかと示唆した。フリンとディケンズは,フィードバック機構により,前向きな内的・外的変化が個人の知的能力を高めるようなさらなる前向きな変化を生み出し,各個人の信用と機会が増大するにつれて,成功がさらなる成功を生むのではないかと示唆する。こうした変化の原動力となり,IQ値の上昇の原因となるこの社会的な変化がどのようなものかは,時代と場所によって異なる。さらに,社会の平均的な認知能力の全般的な向上は,個々人にフィードバックして,自らの能力をさらに増大させるような新しい挑戦をつくりださせることになると言う。
 こうした正のフィードバック効果は,スポーツのような他の領域でも明らかで,時代につれてプレイの全般的なレベルが向上するにつれて,個々の選手は新しい挑戦に立ち向かっていく。能力の漸進的な増大は,競泳,トラック競技,フィールド競技などの個人スポーツにおいてもっとも顕著で,新記録がつくられつづけている。しかしチーム・スポーツでは,そのような技量レベルの向上がときに,矛盾した結果をもたらすこともある。たとえば,現在,三割バッターは,かつてよりもはるかに数が少ない。なぜなら,バッターの打撃は以前よりもどんどん向上しているのだが,ピッチングと守備の改善はそれを帳消しにしてあまりあるからである。同じような効果は,より高い認知的能力が要求される領域でも起こっており,成功が競争に依存することから,その技量レベルの向上を観察するのはむずかしい。 

ロバート・アーリック 垂水雄二・阪本芳久(訳) (2007). 怪しい科学の見抜きかた:嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説 草思社 Pp.129-130

フリン効果を説明する要因

 もし,フリン効果が,時代につれての知能の本当の向上を表しているのであれば,この上昇は間違いなく,遺伝的要因よりも環境的要因のせいであると思えるだろう。進化が集団内に大きな変化をもたらすためには,多くの世代を要する。人類の世代時間はおよそ30年なので,これほどの短期間で作用することはおそらく不可能である。時代につれての知能の向上を説明できる環境変化は多数考えられるが,たとえば以下のようなものが考えられる。

・就学年数の増加
・学校および学業における技術の進歩
・視覚的スキル訓練の増加
・栄養状態の改善
・都市化の進展
・技術職の増加

ロバート・アーリック 垂水雄二・阪本芳久(訳) (2007). 怪しい科学の見抜きかた:嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説 草思社 p.123

フリン効果

 IQ得点の上昇という不思議な現象は,ニュージーランドの哲学者,ジェームズ・フリンにちなんで「フリン効果」と呼ばれている。フリン効果を支持する個々のデータは何年も前からそこここに存在したが,この発見の功績はフリンに帰されている。なぜなら,彼は,誰も気づかなかった幅広いパターンに気づいたからである。IQテストは定期的に新しく改変されるが,そのとき,一部の受験者には新版と旧版の両方が与えられる。フリンは,一方のIQテストがもう一方のものより30年ぶん古ければ,両方の版を同じ人が受験した場合,それぞれのIQ値の平均得点を比べると旧版のほうが10点高くなることを見つけた。言いかえると,現在のIQテストで平均点をとる人間は,1世代前の受験者と一緒に受けたら平均よりずっと高い点をとれただろうということであり,したがって,フリン効果を単にIQテストがやさしくなったせいだとすることはできない。

ロバート・アーリック 垂水雄二・阪本芳久(訳) (2007). 怪しい科学の見抜きかた:嘘か本当か気になって仕方ない8つの仮説 草思社 p.120

複数の証拠で意味合いが変わる

 うわべは矛盾した2つの性格をもう少し挙げてみよう。聡明で愚か。攻撃的で依存心が強い。陽気で陰気。厳しくてやさしい。寛大で執念深い。こうした2つの特性が,1人の人間に共存する状態を想像してみよう。たぶんあなたは,上手に2つをつなげる物語をつくれるだろう。この作業では,人についての情報を組み合わせる才覚が発揮される。これは,スヌーパーも居住スペースの手がかりから結論を導き出すときに,やらなくちゃいけないことだ。かつて調査したある寝室に,つじつまが合わないアイテムが含まれていた。聖母マリアの小さな漆喰の像が愁いを帯びた顔で窓の上の出っ張りから見下ろしているのに,ベッド脇のテーブルには大きくて色鮮やかなプラスチックのパイナップルが置いてあった。まじめで信心深いのか,ふまじめなのか。これは部屋にある他のアイテムが解決してくれた。マリア像とパイナップルとともに,エルヴィス・プレスリーもどきがついたベッドカバーと,サンタの帽子をかぶった牛の形のクリスマスの照明を組み合わせると,もっとはっきりした印象があらわれてくる。この人はキッチュな物の収集家であり,誠実性があって,遊び心のある気のきいた美的センスを持っているのだ。寝室や音楽のコレクションなどで見つかった情報を組み合わせることに関心を持つぼくたちにとって,重要な結論は,人が形成する印象は部分を足し算した結果以上のものだということだ。文脈を考慮せずに情報を吟味するやり方は,重要かもしれない社会的情報を無視することだ。さっきの収集家の部屋にあったマリア像が,聖書やローマ教皇の伝記や壁にかけた十字架と一緒にあれば,マリア像の意味合いはまったく違ってくるだろう。この場合は敬虔なカトリック教徒になる。

サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 p.244
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)

ホーダー(蒐集家)についての研究

 人は実にさまざまな種類のアイテムをしまっておく。レシート,請求書,雑誌,新聞,手紙,カード,着なくなった服,いらなくなった薬品,食べられない食品,ペン,紙袋,せっけん,箱,厚紙,櫛など,ほぼなんでも家に詰めこむ。極端なホーダーになると,使用済みのトイレットペーパーまで捨てられないことが知られている。ホーディングは家の外にまで及ぶ。赤ちゃん用の壊れたブランコや旧式のオイル・バーナーが裏庭に散らばっているのをよく見かける。
 極端なホーディングは,まだ少ししか研究が進んでいない症状であり,強迫神経症と関連づけられることもある。南アフリカのステレンボッシュ大学精神医学部のソラヤ・シーダット博士とダン・スタイン博士は,極度な15例に焦点をあては最近の研究論文で,“ホーディング”のことを「価値がほとんどなくてあまり役にも立たない物を,くりかえし過剰なほど収集し,時間がたっても捨てられないこと」だと表現している。シーダットとスタインによれば,ホーダーが動機としてもっともよく挙げたのは,実用的価値がある物を捨てるのがこわいということだった。彼らは,行動をほとんどコントロールできない,としばしば報告した。「いつか必要になったらどうするんです。先のことはわかりませんよ。役に立つかもしれないんだし,もしそうなったときは捨てたことを心から後悔するでしょう」ということらしい。

サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 pp.222-223
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)

面接で何がわかるのか

 就職面接は,キャリアでもっとも重要な30分になることがある。ささいな行動の内容から,雇用主はあなたと契約するか,警備員に敷地内から連れ出させるか,決めなくてはならない。間違った選択が大きな悲しみを生むこともある。いい印象を与える行動が,数々のビジネス調査に取り上げられてきたのも,当然といえば当然だ。そうした調査結果によれば,仕事を手に入れたいなら相手の目を見てにこにこし,何度もうなずいたほうがいいという。こういう人はポジティブな性質を持っている有望な候補者だと受けとられる。でもこの結果には重大な要素が欠けている。相手を見たりにこにこしたりうなずいたりすることが,本当にその仕事に望ましい性質を示しているのか。
 入社志願者の審査は,ブルンスウィックのシステムに非常に適している。ギフォードらがおこなったのも,まさにこれだった。研究助手を雇うために34回おこなわれた本物の面接を分析し,それぞれの具体的な行動を記録した。話した時間,面接官の顔をまっすぐ見た時間,笑顔を見せた時間,身振りをまじえた時間,前のめりになった時間,のけぞった時間など。指や髪をいじったかどうか,ペンでコツコツたたいたかどうかも記録した。また年齢,性別,服装のフォーマル度,外見の魅力についても評定した。
 それからギフォードはベテランの面接官に面接のビデオテープを見せて,志願者の社交術とやる気にレートをつけるように頼んだ。そしてこの2つに対する評定が,行動の手がかりとどのくらいつながりがあるかを数値にした。その分析結果によると,話す時間が長く,身振りが多く,服装がフォーマな志願者は,社交術でもやる気でも高い評価を受けていた。これらの結果は,それまでの研究結果と一致していた。
 しかしギフォードらが,ブルンスウィックのモデルの残り半分である,人の本当の姿(どう評定されたかではない)と行動の手がかりのつながりを調べたところ,予想だにしない結果が出てきた。その分析結果では,話し方や身振りや服装は確かに社交術においては正しい手がかりになるけれども,志願者のやる気に関しては服装のフォーマル度しか参考にならなかった。この結果は,フォーマルな服装は被験者の誠実性を示す手がかりになるという,ボルケナウとリーブラーの研究結果を反映している。またギフォードの分析によれば,面接官は社交術を判断することには長けているが,やる気を判断することにかけては惨憺たるものだったという。やる気を判断するには身ぶりの多さを見るのではなく,どれだけ前に身を乗り出しているか注目するべきだそうだ。志願者は前のめりであればあるほど,やる気があったのだ。スヌーパーにとってブルンスウィックのモデルは,いつ正しい方向に進んでいて,いつ勘違いしそうになっているか知る手段になるので重要だ。

サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 pp.213-215
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)

ステレオタイプは慎重に扱うべし

 そういうわけでスヌープをするときは,ステレオタイプを慎重に扱うことを忘れちゃいけない。そのためには,次の4点を頭に入れておくことだ。

1 ステレオタイプは,物から人格を割り出す2つの方法のうちの1つにすぎない。たとえば,住人を信頼できる人だと推測するとき,中国語の本がベッドのそばにあるということはアジア人だからきっときちんとしている,というようにステレオタイプを使って推測するか,卓上カレンダーにきちょうめんに予定が書きこまれているから,というように,信頼性を示す証拠をそのまま使って推測するかのどちらかだ。
2 寝室研究のとき,女性は神経症傾向が強いというステレオタイプは正しかったが,調和性が高いというステレオタイプは間違っていた。判断の助けになるステレオタイプはたくさんあるけれど,間違ったステレオタイプは判断を狂わせてしまうことがある。
3 女性は神経症傾向が男性よりも強い,といったような特徴の方向性は正しくても,程度を勘違いすることがある。たとえば,男女の差をじっさいよりずっと大きいように思ってしまう。
4 ワシントンの住民を,(地域のステレオタイプをもとに)まだやってもいない凶悪犯罪で逮捕しろと要求する前に,ステレオタイプによる一般化はグループ内の多様性を無視していることを思い出そう。確かにワシントンの住民の調和性は全米で50位だが,全員が悪者というわけではない。

サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 pp.208-209
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)

武士の実力とは

 武士の実力とは何か。
 それは,自己の持っているものすべての力である。腕力,武芸はいうにおよばず,知識,才覚,身体能力,財産,家族,肩書はじめ,容貌,性格,気質から,はては運勢まで,およそ自分に属するあらゆるものが,他を制する力として使われるならば,それこそがその人の実力である。要するに,自分のすべてを力に換算したものを,実力と呼ぶのだ。

菅野覚明 (2004). 武士道の逆襲 講談社 p.54

ほめ言葉を際限なくのみこむナルシスト

 ナルシストは魅力的な人たちだ。世間には偏執症とか,過度に感情的で人の注意を引こうとする人たちがたくさんいるけど,そういう極端なパーソナリティを持つ人たちとは違って,ナルシストは権力と責任がある地位ではいい働きをする。コロンビア大学のビジネス・スクールにいるぼくの共同研究者ダニエル・エイムズは,MBAにいる非常に能力の高い学生たちに,さまざまなパーソナリティ・テストを受けさせて,その結果を渡すようにしている。数年前,ある学生がナルシシズム・テストで最高得点をとった。たいていの人はナルシシズムをネガティブにとらえるので,学生がこの結果を見たら打ちのめされるんじゃないかとエイムズは心配した。でもそんな心配はいらなかった。ナルシシズムのレベルが高いせいで,学生はこの悩ましい情報をすぐにポジティブな意味に解釈したのだ。後にエイムズは,その学生が誰かに「ぼくはナルシシズムのテストで一番だったんだ。すべての質問に正しく答えたってことだな」と言っているのを耳にしたそうだ。
 ナルシストのもう1つの特徴は,ほめ言葉を際限なくのみこめる能力があることだ。数年前,同僚たちとぼくは,信じがたいほど才能のあるナルシストの共同研究者と会うことになった。そこで,ぼくたちが大げさに言っていることに彼が気づくまで,どれだけほめ言葉を言い続けられるかやってみよう,ということになった。さて,その面会と他に数回あった面会の間に彼が見せた反応は,ぼくたちが予想していたような疑いの念ではなく,うれしそうな謙遜だった。ぼくたちはじっさい「こんなにすばらしい意見を聞いたことは,これまで“一度たりとも”なかったんじゃないかな」なんてことまで言った。でも何を言っても,彼は真に受けていた。

サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 pp.154-155.
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)

ナルシストの自己欺瞞

 こうした自己欺瞞はナルシストにとてもよく見られるものだけど,ある程度の自己欺瞞なら多くの人がしている。そのプロセスを理解するために,ポールハス教授は社会的に望ましい反応を役立つ2つのタイプに分けている。
 わかりやすいのは印象操作(impression management)というタイプで,これは好ましい(社会的に望ましい)印象を他者に与えるように自己を呈示しようとする意図的な試みをいう。そのために,ポジティブな特性を誇張したり,ネガティブな特性を否定したりする。
 2つめのわかりにくいタイプは,自己欺瞞的高揚(self-deceptive enhancement)と呼ばれていて,ポジティブな方向に偏りつつも正直な自己表現をする傾向だ。この特徴が強い人は,言っていることと考えていることに違いがない。自分についてすばらしいことを言っていたら,それは本当にそう信じているのだ。勘違いなのである。そういうわけなので,人が自分のことをポジティブに表現するよう指示されると,印象操作の度合いは急上昇する(印象操作は故意にすることだから)。でも自己欺瞞的高揚の度合いはほとんど変わらない(自己欺瞞的高揚は意識しないものだから)。お察しの通り,ナルシシズムの特性が高い人はたいてい自己欺瞞的高揚の度合いも強いけれど,印象操作については他の人たちと変わらない。

サム・ゴズリング 篠森ゆりこ(訳) (2008). スヌープ!:あの人の心ののぞき方 講談社 p.153
(Gosling, S. D. (2008). Snoop: What Your Stuff Says About You. New York: Basic Books.)

IQの高さはバスケットボールにおける背の高さと同じ

 「IQ170の人がIQ70の人よりも,物事を深く考える傾向にあることは十分証明されている」
 英国の心理学者リアム・ハドソンはそのように書いている。
 「両者の開きがあまりない,例えばIQ100と130の場合でも同じことがいえる。だが,ともに高いIQを持つ場合,その関係は成り立たないらしい。IQ130とIQ180の科学者がノーベル賞を受賞する可能性は同じくらいだ」
 ハドソンが述べているのは,「IQはバスケットボールにおける身長みたいなものだ」ということだ。5フィート6インチ(約167.6cm)の人に,プロのバスケットボールチームで活躍できる現実的な見込みはあるだろうか?そうは思えない。少なくとも6フィート(約182.9cm)か6フィート1インチ(約185.4cm)は必要だし,他の条件が同じなら,同じ6フィート台でも1インチよりは2インチ,2インチよりは3インチあったほうが有利だろう。だが一定の高さを超えると,身長は大きな問題ではなくなる。6フィート8インチ(約203.2cm)の選手が2インチ低い選手より自動的に優れているわけではない(なんといっても,史上最強の選手マイケル・ジョーダンは6フィート6インチ(約198.1cm)だった)。バスケットボール選手にとって身長は十分高ければそれでよい。知性もまた同じ。知性には基準点がある。

マルコム・グラッドウェル 勝間和代(訳) (2009). 天才!成功する人々の法則 講談社 pp.90-91.

満喫すること

 感謝の気持ちを忘れないことと似た態度としては,好ましい経験を「満喫する」という態度も重要であるという報告がされている。ブライアントとヴェロフによると,日常生活での平凡な経験でも,満喫する態度を持つことで非凡なものになるという。たとえば,通勤で東京駅の丸の内出口を利用する人であれば,普段は仕事のことに気持ちが集中していて東京駅舎の建築の美しさを立ち止まって鑑賞する時間などないだろう。しかし,信号を待っている時に東京駅の駅舎を鑑賞したり,オフィスビルの入り口に飾ってある花を眺めたりする瞬間を大切にすることで,日常生活への満足度が高まるという。なぜ東京駅舎の美しさは,最初に見た時には印象に残るのに,その後は完全に無視されがちなのであろうか?これは,初めての経験は人の注意を引くが,慣れるにしたがって新しい刺激や変化だけに注意が向くからであるという。ここには,前述のさまざまな出来事への適応と同じような心理的機能が働いていると思われる。つまり,意識して注意を払わない限り,美しい山々も川も田園も,すべて背景として潜み隠れてしまうのである。同様に,意識して注意を払わない限り,暖かい親友や家族の存在も当然のこととして受け取られ,感謝の気持ちを忘れてしまうのであろう。

大石繁宏 (2009). 幸せを科学する:心理学からわかったこと 新曜社 pp.140-141

感謝する人は健康になる

 エモンズとマカラフは,被験者をランダムに3つの実験群に分け,「感謝」群では,過去1週間を振り返って,自分が感謝することを5つ書かせた。これに対し,「雑用」群では,過去1週間で面倒くさかったことを5つ書かせた。最後に「出来事」群では,過去1週間に起こった出来事を5つ書かせた。これを9週間にわたって実行した結果,人生の満足度は「感謝」群で最も高かった。さらには,「感謝」群の被験者には,筋肉痛やのどの痛みなどの症状の数も「雑用」や「出来事」群より有意に少ないという結果が出た。

大石繁宏 (2009). 幸せを科学する:心理学からわかったこと 新曜社 p.139

最大効果の追求派vs.適度でオーケー派

 バリー・シュワルツ教授によると,これに似た個人差も存在し,何か購入するたびにありとあらゆる情報を手に入れ,吟味したうえでなければ何の決断もできない「最大効果の追求派」もいれば,ある程度の情報が入ればそれをもとに決断する「適度でオーケー派」もいる。これは,車や家の購入時に最も顕著であるが,最大効果の追求派対適度でオーケー派という面での個人差と幸福感との関連も面白い。
 まず,最大効果の追求派は,適度でオーケー派より幸福度が低く,うつ傾向が強い。またこの関係は,最大効果の追求派が自分と他の人を比較する傾向が強いところからきているという結果が出ている。また,ありとあらゆる情報を手に入れてよりよい選択をしようと試みる最大効果の追求派は,ある程度の情報をもとに決断を下す適度でオーケー派に比べて,皮肉にも,その決断に後悔することが多いという。つまり,考えれば考えるほど,選ばなかった選択肢のことが気になり,もし別のものを選んでいたらどうだっただろうという発想が出てしまうらしい。

大石繁宏 (2009). 幸せを科学する:心理学からわかったこと 新曜社 pp.132-133

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