忍者ブログ

I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「宗教」の記事一覧

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

アメリカ人の信仰への関心

 また,カウンターカルチャーのひとつとして栄えたものに,仏教やヒンズー教などキリスト教以外の宗教への目覚めがあった。1970年代には,曹洞宗の流れをくむ禅センターがサンフランシスコに設立されるようになる。早朝,5時から7時までの座禅と読経に参加したのは,当時はヒッピーが中心だった。自営農場で無農薬野菜を栽培して,玄米パンと菜食を徹底した。いまでもカリフォルニアの富裕層には仏教徒が少なくない。自宅のフローリングに金ぴかの仏像を持ち込む人もいれば,,仏陀の肖像画を壁や天井に埋め込んで,家族で座禅を組むなど,「アメリカ化」されたアプローチも当時と変わっていない。根底に東洋文化や哲学への興味があり,ヨガマットや座禅で使う「坐蒲」も西海岸から流通がはじまった。
 つまり,なんらかのかたちでの信仰への関心は「保守」「リベラル」ともにもつものであり,福音派信者やキリスト教原理主義は保守派や共和党に多いものの,必ずしも信仰そのものが「保守」の専売特許ではない。「リベラル」にも信仰を熱心にきわめようとする人たちは多い。ニューエイジやベジタリアンのライフスタイルには,リベラルの「信仰」への接し方に別の意味での激しさもうかがえる。キリスト教の神を信じないとすれば,いったいなにを信じていけるかという深刻な模索がそこにはある。

渡辺将人 (2008). 見えないアメリカ---保守とリベラルのあいだ 講談社 p.155-156.
PR

宗教で大学選択

 割合としては少ないが宗教を基準に進学する大学を選ぶひとたちもいる。モルモン教徒,原理主義的なプロテスタント教徒,そして敬虔的なカトリック教徒である。モルモン教徒はユタ州のブリガムヤング大学に進学するが,高校の成績があまり芳しくない生徒は,アイダホ州などユタ州外にある分校に進学する。南部には原理主義的なプロテスタント教徒の大学が多数あるが,有名なもののひとつにサウスカロライナ州のボブ・ジョーンズ大学がある。ここは1990年代まで,聖書の教えにもとづいてとの理由で異人種間の恋愛が禁止されていた。アメリカ国内でも原理主義性が有名な大学である。


渡辺将人 (2008). 見えないアメリカ---保守とリベラルのあいだ 講談社 p.146.

区別のためのレッテルの一つ

 ちょっとだけ付け加えれば,宗教は区別のためのレッテルとして使われているもののなかで,驚くほど不必要だという点で異例のものである。もし宗教的な信念を支持する何らかの証拠があるならば,それに付随する不愉快なことにもかかわらず,それを受け入れなければならないかもしれない。しかし,そんな証拠などありはしないのだ。現実の世界政治についての意見の不一致のゆえに,他の人間に死に値する敵というレッテルを貼るのは確かに悪いことだ。大天使や悪魔や空想上の友だちがすむ妄想の世界についての意見の不一致によって同じことをするのは,どうしようもなく馬鹿馬鹿しい悲劇である。


リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2004). 悪魔に仕える牧師 なぜ科学は「神』を必要としないのか 早川書房 p.279.

善人が悪事をなすには宗教が必要である

 だが,メッカ---あるいはシャルトル,ヨークミンスター,ノートルダムの大聖堂,シェタゴン・パゴダ,京都の寺院,あるいはもちろんバーミヤンの大仏像---をブルドーザーで壊そうとする無神論者がこの世にいるとは,私には信じられない。ノーベル賞を受賞したアメリカの物理学者スティーヴン・ワインバーグが言うように,「宗教は人間の尊厳に対する侮辱である。宗教があってもなくても,善いことをする善人はいるし,悪いことをする悪人もいるだろう。しかし,善人が悪事をなすには宗教が必要である」。ブレーズ・パスカル(パスカルの賭けのパスカルである)も似たようなことを言っている。「人間は,宗教的な確信をもっておこなっているとき以上に,完璧かつ快活に悪をなすことはない」。


リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2007). 神は妄想である 宗教との決別 早川書房 p.363.

有神論者・理神論者・汎神論者

 用語法について念を押しておこう。有神論者(theist)は,そもそもこの宇宙を創造するという主要な仕事に加えて,自分の最初の創造物のその後の運命をいまだに監視し,影響を及ぼしているような超自然的知性の存在を信じている。多くの有神論的な信仰体系においては,神は人間界の事柄に密接にかかわっている。神は祈りに応える。罪を赦し,あるいは罰する。奇跡をおこなうことで世界に干渉する。善行と悪行に思い悩み,私たちがいつそれをおこなうかを(あるいはそうしようと考えることさえ)知っている。理神論者(deist)も超自然的な知性を信じているが,その活動は,そもそも最初に宇宙を支配する法則を設定することに限定される。理神論の神はそれ以降のことに一切干渉せず,人間界の事柄に特別な関心をもっていないのも確かだ。汎神論者(pantheist)は,超自然的な神をまったく信じないが,神という単語を,超自然的なものではない<自然>,あるいは宇宙,あるいは宇宙の仕組みを支配する法則性の同義語として使う。理神論者は,彼らの神が祈りに応えず,罪や懺悔に関心をもたず,私たちの考えを読みとったりせず,気まぐれな奇跡によって干渉したりしないという点で有神論者と異なる。理神論者は,彼らの神が,汎神論者の神のように宇宙の法則の比喩的あるいは詩的な同義語ではなく,ある種の宇宙的な知性である点で汎神論者と異なる。汎神論は,潤色された無神論であり,理神論は薄めた有神論なのである。


リチャード・ドーキンス 垂水雄二(訳) (2007). 神は妄想である 宗教との決別 早川書房 p.34.

アメリカ新宗教

 ヨーロッパ人にとって,アメリカ的なキリスト教は,もはや自分たちが知る宗教ではなく,「アメリカ新宗教」としか言いようのないものになっている。このアメリカ新宗教は,魂の救済よりも,むしろ幸福の追求を第一とする。つまり,アメリカにおける宗教活動は,一般に,非常に現世的な営みなのである。
 だから,アメリカの各教会は,宗派ごとに分かれているだけでなく,階級や人種といった現世的な指標によっても明確に区別されている。宗派別で見れば,聖公会,長老派,メソジスト,バプティストの順に,平均収入も平均学歴も上である。人々は,社会的地位が変われば,しばしば,所属する教会や,時として宗派をも変えてしまう。事実,所属宗教団体を変えたアメリカ人の割合は,三分の一にも上っている。バプティストのコミュニティーに生まれた者でも,社会的にのし上がると,長老派のコミュニティーに宗旨替えするといった次第である。
 つまるところ,アメリカでは,教会もまた,自分たちの権利や主張を発信するための自発的集団なのだ。したがって,各教会や各宗派は,ヨコの争いの中で,非常に厳しい競争関係に置かれることになる。だから,アメリカの聖職者は清貧であってはならない。貧しい牧師は敗者なのだ。宗教市場において,いかに多くの信者=顧客を集め,いかに多くの寄付金=売り上げを集めるかが,聖職者=ビジネスマンにとって非常に重要なのである。
 ちなみに,ヨーロッパの教会では,お祈りの後,参列者の席に籠や壺が回ってくる。参列者たちは,そこに教会への寄付の小銭を入れる。一方,アメリカの教会では,しばしばカード払いの記入用紙が配られる。アメリカ新宗教は,ほとんど商売なのである。


薬師院仁志 (2005). 英語を学べばバカになる-グルーバル思考という妄想- 光文社 p.163-164

信心と悪事

 また,魂は肉体よりも長く生きるという教義は,正当さにはほど遠い。この地球上に住む私たちの生活の価値を必然的に下げるからである。スーザン・スミスは幼い二人の息子を湖の底に沈め,「私の子どもたちは最善のものにふさわしい子たちです。そしてこれから,それを得るのです」という合理化で,良心をぬぐいさった。幸福な死後の生活への言及は,子どもを殺して自殺した親の遺書に典型的であり,また私たちは,そのような信念が自爆者や自爆ハイジャック犯を鼓舞することをあらためて感じたばかりでもある。だからこそ私たちは,神の裁きを信じなくなったら人は大手を振って悪を実行するようになるという議論を否定すべきなのである。たしかに神の裁きを信じない人が,法制度やコミュニティの非難や自分の良心からうまく逃れることができると考えたとしたら,永久に地獄で暮らさなくてはならないという脅しで悪事を思いとどまることはないだろう。しかしそういう人は,永久に天国で暮らせるという約束に誘惑されて,何千人という人びとを殺すこともないのである。

スティーブン・ピンカー 山下篤子(訳) (2004). 人間の本性を考える[中] 心は「空白の石版」か 日本放送出版協会 p.103-104.

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]