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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「社会一般」の記事一覧

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慣習や伝統への囚われ

 例えば,人物を撮るシーンで平気で首から上をフレームアウトさせちゃう。「首から下だけ撮ってくれ。首なしのまま歩くから」とカメラマンに指示すると,「それはまずい」と勝手に修正しちゃうんだよ。「いや,ここはそれでいいんだ」といくら言っても,カメラを上にあげてしまう。それが映画の常識といえば常識なんだけど,それに縛られている人も多い。
 それを見ていると,日本人というのは,それまでのルールを壊して新しいものを創ろうという意識が低いのかなと思うね。違うこと,新しいことをやってみようという気はあまりないんだ。
 しかも映画に限らず芸術の分野でこそ,どんどん新しいことにトライしていかなければいけないのに,かえってそういう世界の方が「これまでの常識や伝統を守る」という意識が日本では強いよね。もっともっと自由なことをやるべき業界なのに,慣習や常識に囚われている。

ビートたけし (2012). 間抜けの構造 新潮社 pp.156
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息を吸ってしまう

 “間”が悪い人というのは,話をしている途中で息を吸っちゃう。息継ぎが下手なの。自分の頭の中で,「この話のどこで息継ぎをするか」を考えていない。
 だから,「それはですね,原子力発電というもののリスクというのは政府が思っているより安全じゃなくてそれを信用するというのがそもそも(“スーッ”と息を吸う)間違いなわけであって」なんていうことになる。息継ぎがスムーズじゃないと,話している内容が頭に入ってこないから損をする。

ビートたけし (2012). 間抜けの構造 新潮社 pp.88

なぜ「しゃべりすぎる」と思うのか

 データでは裏づけられていないにもかかわらず,なぜそんなにも多くの人々が,女性が言語的に優れると信じているのかは,推測するしかない。とはいえ,2つの可能性が思い浮かぶ。1つは,女性は「しゃべりすぎる」とよく批判さればかにされてきたので,重要な言語御能力での優位性を示すデータを曲解して,女性がけっしておしゃべりをやめない,ぐちぐち言い続ける,あるいは男性や子どもを思い通りに動かすような言葉を使い続けることの証拠だと簡単に思ってしまうのだ。しかしながら,実際のところ,デイル・スペンダーとグロリア・ステイムが指摘しているように,女性がたくさん話すように見えるのは,1つには,女性が伝統的に沈黙を守るよう期待されてきたからだ。はっきり主張する女性や本心を語る女性は,今でも,それが男性の場合よりも,強引でふさわしくないふるまいだとみなされる恐れがある。しかしながら,最近の研究では,男女のおしゃべりの量に有意な性差が見いだされていないことから,存在するとされる発話の差異は,現実というよりもむしろ,社会や大衆文化のバイアスを反映した主観的な印象なのかもしれない。また,男性のほうが言語障害が多いという(証明されていない)信念によって,女性は言語的に優れているという信念が増長しているという可能性もある。

P.J.カプラン・J.B.カプラン 森永康子(訳) (2010). 認知や行動に性差はあるのか:科学的研究を批判的に読み解く 北大路書房 pp.128-129

偽記憶症候群

 こうした記事を断片的に眺めていると,単に風変わりな海外の事件を日本の編集者が配信しただけのように思われるが,実は当時の北アメリカを中心とする欧米諸国では,前記のような「悪魔」に関する虐待事件が,集団ヒステリーとも呼ぶべき現象を巻き起こしていたのである。それは1980年代の欧米で広まった悪魔儀礼虐待(satanic ritual abuse)に対するパニックであり,アメリカを中心として悪魔カルト(satanic cult)が幼児や子供を性的に虐待しているという告発がなされ,法曹界や研究者,メディアを巻き込んだ一大センセーションを巻き起こした一連の事件であった。のちに「現代の魔女狩り」とも評されたこの現象では,告発の多くは法的に事実無根なものであるとされたものの,結果として荒唐無稽な虐待行為を「思い出す」加害者・被害者が続発し,有罪判決を受ける人々も多数にのぼった。

佐藤雅浩 (2009). 児童虐待とオカルト—1980年代女性週刊誌における猟奇的虐待報道について— 吉田司雄(編著) オカルトの惑星—1980年代,もう一つの世界地図— 青弓社 pp.183-207

宇宙人の性的暴力の特徴

 以上のように<強姦者>として告発された宇宙人たちは,異種生物間の性行為の可能性を日本人に教え,最も80年代的な宇宙人観を産出するに至るのだが,これについて述べる前に,宇宙人からの性的暴力を報じた事例の特徴をまとめておきたい。
 第1に,被害者の大部分が女性であり,男性被害者がほとんどいないということ。
 第2に,女性被害者からの訴えと比較して,男性被害者の体験談では,宇宙人からのレイプは非常な快楽をもたらすケースが多いこと。
 第3に,事件の発生件数は海外(主としてアメリカ)に集中し,日本での報告がほとんどないということ。これらの特徴が物語るものは何か。

谷口 基 (2009). バブルとUFO 吉田司雄(編著) オカルトの惑星—1980年代,もう一つの世界地図— 青弓社 pp.155-179

海外からの電話

 海外の実行犯で特に有名なのは,中国の主に福建省のグループです。彼らはもともと留学や出稼ぎで来日したカタギの連中でした。そして日本で振り込め詐欺のノウハウや犯罪のための人脈を確保し,帰国してから地元で同じ手口の犯罪を始めました。ですから中国でも2008年ごろから振り込め詐欺が問題化しはじめています。
 次に彼らは福建省から東京へ電話を入れはじめました。東京の出し子グループとのパイプがあれば,現金の回収も容易です。中国の都市部における平均月収は2千元といわれています。日本円にするとわずか3万円です。東京で日本円を稼げば,あっという間に地元の大富豪になれるのです。
 そのうち福建省から電話をかける孫も,日本人をあてがうようになりました。その日本人もたいていはインターネットカフェ難民です。東京でスカウトされて,「中国でおいしい仕事があるから」と福建省まで連れていかれます。そこでパスポートを取り上げられ,彼らの命ずるまま軟禁状態でひたすら日本へ振り込め詐欺の電話をかけさせられているのです。

藤野明男 (2012). 悪魔のささやき「オレオレ,オレ」:日本で最初に振り込め詐欺を始めた男 光文社 pp.197-198

若者が参入する理由

 では,なぜ若者たちは振り込め詐欺に手を染めるのでしょうか。理由は簡単です。ほかの犯罪に比べて儲かり,かつ捕まるリスクが圧倒的に少ないからです。
 振り込め詐欺がうまくいくと,1ヵ月に数百万円,数千万円という現金が容易に稼げます。そして,実際に逮捕されるのはほんの氷山の一角です。
 奪った現金を元手にブティックや飲食店,不動産業といった表の事業を始める人間も少なくありません。実際,本橋刑事が追っていた事件でも,犯人逮捕の際はすでに足を洗って不動産業やブティックを経営していたケースが何例もあったそうです。
 結果,そういう成功体験を先輩から聞いた若者が,一攫千金を夢見て次々に参入してくるのだとか。だから詐欺事件を働くというより,ちょっとブラック系のベンチャービジネスをやるような感覚なのでしょう。

藤野明男 (2012). 悪魔のささやき「オレオレ,オレ」:日本で最初に振り込め詐欺を始めた男 光文社 pp.194-195

効果的な手口

 僕が1回の電話で振り込ませる額は,だいたい30万円から50万円前後でした。最初に成功した体験から分かるように,相手がすぐに振り込むことに躊躇しないラインが,このあたりの金額だったのです。それを上回るとやはり,
 「払ってあげたいのは山々だけど,お母さんも本当にお金がないの。ごめんね」
 という回答が一気に増えます。回収がゼロになるくらいなら,1件であんまり欲張らずにそのぶん,数で稼ぐほうが効率がいいわけです。
 逆にこの金額基準から発想した振り込みをお願いする理由づけとして「交通事故の示談金」を使うことを思いつきました。
 「ゴメン。オレ,友達のクルマを運転していてぶつけちゃって。人のクルマだから自動車保険が適用されないんだ。被害者がかなりヤバい人で,明日までに示談金を振り込めばそれでチャラにしてくれるって……」
 「分かった……。どこに振り込めばいいの?」
 「本当にゴメンね。近くに書くものある?今から口座番号,言うよ」
 相手の声から息子や孫の真似がうまくできないと判断したときは,とっさに事故の被害者のほうを装います。
 「お宅のお孫さんにクルマをぶつけられたんですよ。お孫さん,自動車保険に入ってないらしく『自宅に電話して家族に示談金の相談をしてくれないか』って言われましてね……」
 妊娠中絶費用のお願いをするストーリーも効果がありました。
 「お母さんごめん,彼女を妊娠させちゃったんだ。話し合って堕ろすことにしたんだけど……今,お金がないんだ。彼女の銀行口座にお金を振り込んでくれないかな!?お母さんにはオレから必ず返すから」
 そして,女性名義で作られた架空の口座番号を伝えます。状況によってはライト信販の女のコのどちらかに,彼女のフリをして電話に出てもらう手も使いました。
 母親の多くは「自分の息子がいたいけな女のコを孕ませてしまった」「人様の大事な娘さんを傷モノにしてしまった」と激しく動揺し,冷静な判断ができないまま誘導されてしまいがちでした。

藤野明男 (2012). 悪魔のささやき「オレオレ,オレ」:日本で最初に振り込め詐欺を始めた男 光文社 pp.56-57

振り込め詐欺の手口

 僕が主に使った手口はこんな感じです。
 振り込め詐欺は必ず平日の午前中,9時過ぎぐらいから11時前までに最初の仕込みの電話を入れます。これには2つの理由がありました。まずひとつは午前中に家に居るのは専業主婦か年寄りですから,社会で働いている人より騙しやすいことです。2つ目は午前中に仕掛ければ,その日のうちに振り込ませることができるからです。夜をまたいでしまうと帰宅した家族に相談したりしますから,成功の確率はずっと下がります。
 仕込み電話のときは相手に電話が繋がってもこちらからは話しかけず,相手が話しだすのを待ちます。そして,その話し方によってこちらのキャラクターを相手に合わせます。
 「もしもし,もしもし……!?」と相手がきっかけを出してこない場合は,ひたすらすすり泣く声を演じます。そこで相手が「ミツルなの?」などと固有名詞を出したらシメたもの。「うん,オレ」とミツルに成りすまします。
 「キョウコ?」とか女のコの名前を出された場合は,「うん,わたし」と女声の声色を出してそのまま演じるか,「すみません,じつは僕,キョウコさんの彼氏なんです」とキャラを切り替えて話を続けます。
 もちろんすべてがうまくいくわけではありません。「あなた誰?うちにそんな人はいません」と言われたら潔くガチャ切りをしていました。
 仕込みで引っ掛けられたターゲットには,1時間以内に2回目の電話を入れます。
 「あ,オレ。さっき頼んだ金,振り込みにいってくれた?まだなの?頼むよ,午前中までに振り込んでおいてよ」
 という感じで再度プッシュします。そして,その数十分後に3回目の電話を入れます。この電話で誰も出なかったり,ほかの家族が電話に出れば問題ありません。相手は振り込みに出かけたという証拠ですから。逆に相手が出る場合は,まだ行動を起こしていないということですから「オレ,本当にヤバいから」と泣き脅しをします。それで振り込みがなかったときは,「結果が出なかった」ともうそこには手をつけません。でも逆に3回電話してモノにできなかったケースのほうがまれで,1回目の仕込みで引っかかった相手はほとんど逃すことはありませんでした。
 午前中に勝負をかけるわけですから,1日に電話するのは僕の場合でせいぜい5件くらいです。そのうち1,2件が成功すれば“今日のノルマは達成”という感覚でした。

藤野明男 (2012). 悪魔のささやき「オレオレ,オレ」:日本で最初に振り込め詐欺を始めた男 光文社 pp.54-56

誰が雇うのか

 マニュアル・スカベンジャーが階級を越えて活躍するのを阻む目に見えない壁は,文化的偏見だが,それ以外に経済的な問題もある。アメリカの雑誌『Fane』に,はじめてスカベンジャーのことを書いたとき,わたしの原稿は編集者の疑問つきで戻ってきた。スカベンジャーが,なぜ,その仕事を自分たちがしなければならないと考えているのか,そしてだれが彼女たちを雇っているのかが,わからないというのだ。編集者はこんな書き込みをしていた。「彼女たちのボスはだれ?教育を受けていない難民?(高い教育を受けている人にとっては,こうした状況は我慢ならないものであるはずだから)」
 そうだったら,どんなにいいだろう。実際には,スカベンジャーたちをいまも雇い続けているのは,地方の公共機関やインド鉄道だ。彼らに汚物の清掃をさせているのである。インド鉄道は昨年,線路を清掃するスカベンジャーたちの雇用を廃止する期日を明らかにしなかった。現行の「開放式」トイレにかわって,完全に密閉された水洗トイレが列車内に設置されるまでは,スカベンジャーはもっとも安価な線路清掃法だからである。ニザマバードの上級裁判所は,最高裁判決の命を受けて,乾式掘り込み便所——スカベンジャーが掃除していた——を取り壊すだけにとどまった。

ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.145-146

マニュアル・スカベンジャー

 統計によって幅はあるが,インドには40万人から120万人のマニュアル・スカベンジャー(引用者注:手作業の糞便処理人)が存在する。彼らは,個人の家庭や自治体,軍の宿舎,鉄道当局などに雇われている。線路の上であれ,詰まった下水溝のなかであれ,仕事は,糞尿がある場所からそれを取り除くことだ。そしてたいていの場合,彼らが空にするのはインドの乾式掘り込み便所だ。
 掘り込み便所といえば,地面に埋めた容器に人の糞尿を溜めるものだと思われがちだが,乾式掘り込み便所は容器を埋める手間を省いたものが多い。よくあるのは,平らな地面の上に,しゃがんだときの足の幅に2つレンガを並べただけのものである。穴はない。近くに水路や溝がある場合もあるが,それはかなり贅沢なほうだ。そして,公衆便所の場合は,仕切りも扉も水もないのがふつうだ。インドでは,現在もまだ1千万個の乾式掘り込み便所があるが,それはひとえにチャンパベンをはじめとする人々が,それをきれいにする役割を担っているからだ。

ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.139

アウトカースト

 国連人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は,「潰された人々」と題する報告書のなかで,カースト制度とは次のようなものだと総括している。「世界でもっとも長く続いている身分制度……与えられた職業の清浄さを基準に定められた,複雑な社会集団の序列である」。実際,この制度は非常に複雑で,地域によっても,また宗教的な解釈の仕方によっても,微妙なちがいがある。けれども,インドのすべての地域に共通することが1つだけある。それは,カーストの下に,さらにアウトカーストという身分があって,彼らは汚れた,触れてはいけない者たちとされていることだ。そして,触れてはいけない理由は,彼らが人間の糞便を手で触っているからである。
 昔は,彼らは「バンギー」と呼ばれていた。サンスクリット語で「潰された」,ヒンドゥー語で「ゴミ」を意味する。現代では,彼らの公式な呼び名は「指定カースト」であるが,差別撤廃の運動家たちは,「ダリット」という呼び名を好んで使う。やはり「服従させられた」とか「虐げられた」という意味だが,「バンギー」のような否定的な意味合いはない。
 いまのインド人の多くは,カーストが指定する職業にこだわることは,もはやない。異なるカースト同士の結婚が増えて,より流動的に,より自由になったが,アウトカーストは,たいていの場合,やはりアウトカーストだ。それというのも,彼らはいまだに動物の皮をなめし,死人を火葬し,人の糞便をすくいとっているからである。

ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.137-138

誤った選択

 差し迫った問題は,それだけではない。19世紀に下水道の方式を決定した際に,まちがった決断をくだしてしまったのである。当時,下水道システムには2つの選択肢があった。1つ目は,下水汚物と雨水を別々に処理するもので,分流下水道と呼ばれる。2つ目は,合流式下水道といって,汚水も雨水も1つのパイプに集める。合流式のほうが,建設費が安くて,簡単に敷設できる。しかし,このシステムには大きな弱点があった。雨である。
 下水道や下水処理場には,雨水タンクが設置されており,過剰な雨に備えている。そうすることによって,雨量が予想外に多いときにも,雨水を安全に蓄えることができるため,下水があふれることがない。しかし,ごく短時間に一定量以上の雨が降ると,雨水タンクでも対処できなくなる。すると,下水設備ではあらかじめ決められたとおりの処理が行われる。未処理の下水汚物混じりの雨水を,最寄りの水源に放流するのである。放流された汚水は合流式下水道越流水と呼ばれ,こうした措置をとることは,わりとよくある。ニューヨークでは,通常1週間に1度行われ,1週間の平均的な汚水排出量はおよそ189万キロリットルにのぼる。これは,オリンピック用スイミングプール2175個分にあたる。また,アメリカ全体では55億2600万キロリットルにものぼり,これがプールいくつぶんにあたるかは見当もつかない。「見てください」と,陽気なアイルランド人のケヴィン・バックリーが言う。「放流するか,さもなければ住宅の地下を洪水にするかなんです」。彼は,わたしを近くのジャマイカ湾にある雨水吐き口(合流式下水道の越流水を,河川などに捨てる放流口)まで案内してくれていた。雨天時には,ここからジャマイカ湾に汚水が流し込まれるのだろう。すぐそばには,「晴れた日に汚水が放流されているのを目撃した場合には,ニューヨークの非緊急時用ホットライン,311番に通報してください」と書かれた看板がある。

ローズ・ジョージ 大沢章子(訳) (2009). トイレの話をしよう:世界65億人が抱える大問題 日本放送出版協会 pp.87-88

来るのか来ないのか

 マヤ文明の暦には2012年12月22日までしか記載がないとし,それに結びつけて12月23日に人類が滅亡すると明言する人もいる。いずれにしても,みんな言っていることがはっきりせず,2012年に何が起こるのかは,やっぱりよくはわからない。
 こうした話を聞くたびに,1999年に人類が滅亡するといった「ノストラダムスの大予言」を思い出す。私も予言に振り回されたひとりだが,結局,何も起きなかった。当時は世の中に終末思想が蔓延し,ブームに乗じて現れたさまざまな狂信的団体が人と金をかき集めた。2012年に天変地異が来るのか,来ないのか。それとも他の何かが起きるのか。それはわからない。だが,このブームにつけこんで金を儲けようとする人間が出てくることだけは間違いない。

多田文明 (2009). クリックしたら,こうなった メディアファクトリー pp.174

架空名義

 なぜ,架空の業者名を出してサイトの運営をするのか?それには大きく分けて2つの理由が考えられる。ひとつは,架空の会社を立ち上げて架空のアルバイトを雇い,それをもとの会社の経費として計上する。つまり脱税目的である。過去にもこの手口で脱税を行って摘発された出会い系サイト業者がいる。
 もうひとつは,架空の会社にすることで,被害に遭った人の返金請求をかわすためだ。記載の住所に会社がなければどこに交渉してよいかわからず,たいていの被害者は諦めてしまうだろう。業者はそれを狙っている。

多田文明 (2009). クリックしたら,こうなった メディアファクトリー pp.48-49

知っておくこと

 振り込め詐欺の被害を防ぐには,彼らがどんな手口でやってくるか,その手口をあらかじめ知ることで防ぐことができる。金を要求する怪しい電話がかかってきても,「このパターンかもしれない」と思うことで冷静に対応できるのだ。
 ここまで被害が広がった理由のひとつに,警察が詐欺手口の公表を手控えたことにある。おそらく,手口を公にするとそれをマネした犯罪が増えると考えたのかもしれない。だが,詐欺の実態を知らせないことで逆に被害は広がった。裏社会ではこうした金になる詐欺情報はすぐに伝わり,多用される。警察が公開しようとしまいと,こうした詐欺は水面下ですでに伝わっているものなのだ。ちなみに,新聞などからの安易な情報だけを得て,マネしたまぬけな詐欺師はすぐに捕まっている。
 実際,被害情報をオープンにすることで,社会全体が危機感を持ち,振り込め詐欺,架空請求は沈静化に向かってきている。被害の情報公開は誘拐などのように命の危険がある場合は別だが,私は新手の詐欺の場合はできるだけ早めにオープンにすべきだと思っている。

多田文明 (2005). 電話に出たらこうなった! 大洋図書 pp.160-161

キッパリ断る

 かかってきた勧誘電話に対しては,キッパリと断る必要がある。私のように「今のところは,結構です」などあいまいな言い方で断ると,「まだ落とせる(騙せる)余地あり」と彼らは考える。その顧客情報は業者間を巡り,電話が頻発するようになる。

多田文明 (2005). 電話に出たらこうなった! 大洋図書 pp.90

団体名に弱い

 日本人はこうした権威ある団体名に弱い。◯◯協会や◯◯団体のお墨つきだから安心,と思ってしまうけれど,必ずしもそれがそのまま勧誘会社の信頼度を示すとは限らない。
 シスアド勧誘の男性は「ここの協会員になっている」と,自社の健全性を訴えた。それどころか,この協会のお墨つきを利用して商売をしているフシさえ見受けられた。もしかすると,先に摘発された英会話教材会社も同等の手口で契約を迫っていたのかもしれない。
 今回はある協会を利用している例だが,最近の悪質な勧誘会社はこぞって,会社内部に苦情センターを置く傾向がある。一見,これは企業の自浄努力に見えるが,そうではない。その会社の勧誘被害が消費者センターなどの外部にもれないようにするための方策なのである。身内で固めた苦情センターにかけさせることで,勧誘被害者を自分たちの都合のいい方向に誘導していく。
 それゆえ強引な勧誘でいやな目にあったら,彼らの指定する苦情先だけではなく,消費者センターなどの第三者機関にも相談することを忘れてはならない。

多田文明 (2005). 電話に出たらこうなった! 大洋図書 pp.80

超正常刺激の世界

 現代生活にはさまざまな誘惑や要求があって,人類が進化してきた環境よりもはるかに複雑(かつ敵対的)な場所になっている。これは良いことだ。人類が進化してきた環境におかれたら,現代人はとっくに生命を落としていただろう。だが現代生活の短所として,自己コントロールに対する圧力がはるかに大きくなった。理由はノーベル賞受賞者の動物行動学者ニコラス・ティンバーゲンが「超正常刺激」と呼んだものにある。たとえばティンバーゲンは動物にとってつがいの相手の魅力は何なのかを調べ,その特徴を過剰に協調した「おとり」を作った。するとこの「おとり」のほうが本物よりも魅力的であることがわかった。巣から持ち出された卵を取り戻す本能があるガンは,それらしく作ってあればバレーボールを巣に運び込もうとした。また雛に餌を運ぶ小鳥は,本物よりも色彩が強烈で大きくくちばしを広げる「おとり」に先に餌を与えようとした。
 わたしたちはいま,そういう「超正常刺激」の世界に住んでいる。豊かな国では「超正常」な魅力をもつ報酬(すごく甘いラッテや不自然に大きな胸,やり始めたら止まらないコンピュータゲームなど)が本能を刺激するが,その誘惑の力はこれまでの進化では本能が太刀打ちできないほど強力だ。砂糖やコカインからガソリンまで,相対的に安価な精製製品は,わたしたちと本能のあいだを隔てているのが意志力という薄い皮膜でしかない,いやもっと薄い「気づき」という皮膜でしかないことを意味している。

ダニエル・アクスト 吉田利子(訳) (2011). なぜ意志の力はあてにならないのか:自己コントロールの文化史 NTT出版 pp.189-190

スピードが最大の敵

 自己コントロールにとってはスピードが最大の敵なのに,技術の進歩であらゆることのスピードが上がり,抑制がとても難しくなった。怒りを鎮めるために10数える,というのは昔ながらのやり方だし,熟慮が必要な重大な事柄の場合には,規則で待機期間を設ける(銃の購入や妊娠中絶のように)こともある。
 ところが技術進歩のおかげで暮らしは一方的に加速した。大西洋を数時間を飛び越えたり,微生物学の最新の成果を数秒で知ることができるのはすばらしい。だが加速化は自制という前線では良いニュースではない。衝動から行動まで,誘いから決断までの時間がほとんどなくなって,どうしても熟慮よりも衝動,将来よりも現在が優位に立つようになった。スピードは熟慮を妨げ,楽しみを後回しにする習慣が薄れて,考え直すチャンスがなくなる。何でも手軽になれば,すぐに欲求を満たしたくなる。食べたいと思えばいつでもフライドチキンや熱々のポプコーンが手に入るから,いくらカロリーが高くても我慢できない。鶏の羽根をむしり,衣をつけて揚げて,台所まわりの油汚れを掃除するという手間があれば,そして考え直す余裕があれば,胴回りやコレステロールへの影響を思って我慢できただろうに。

ダニエル・アクスト 吉田利子(訳) (2011). なぜ意志の力はあてにならないのか:自己コントロールの文化史 NTT出版 pp.74-75

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