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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「パーソナリティ・個人差」の記事一覧

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MBTI

もしフランケンシュタイン博士が1950年代にいて,ETS研究部門が軽蔑して見下す可能性が最も高い生き物を作り出せと命じられて,実験室に送られたとしても,イザベル・マイヤーズを超えるものは造れなかっただろう。マイヤーズは売れない小説家で,心理学の教育は受けたことがない。男ばかりの世界に飛び込んだ女性で,大御所から何年も批判を浴びせられたが,まったくひるまず強情で粘り強かった。マイヤーズは心理タイプに関するユングの書作を読み,テスト考案のインスピレーションを得た。マイヤーズはユングの考えをもとに人格を示す4つの軸,外向/内向,感覚/直観,思考/感情,判断/知覚を考案した。マイヤーズ・ブリッグズでは,被験者が自分の好みについて一連の多肢選択の質問に答えると,各軸のどちらか一方に振り分けられる。ヘンリー・チョーンシーはマイヤーズ・ブリッグズを自ら受け,家族にも受けさせた。チョーンシーは外向ー直観ー感情ー知覚だった。

ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.113
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マレーのTAT

20世紀半ばの心理学は,プロの領域となりつつあったが,傑出したアマチュアも食い込む余地があった。その時代の優れた人物の1人が,ヘンリー・A・マレーである。ニューヨークの名家の子息で,巨額の不動産の相続人だ。グロトン校とハーバード大学を卒業し(両校を通じてデブルー・ジョセフスと同級生),医者になった。1920年代に大西洋を横断するあいだ,『白鯨』を読んで衝撃を受ける。そして即座に医者を廃業し,心理学者になると決断。マレーは博士号を取らないまま,ハーバード大学の教授に就任した。長身で礼儀正しく,こざっぱりした身なりの紳士だが,外見と違って,強迫観念,強迫衝動,抑制できない欲望といった暗い奥底の世界に完全に没頭していた。それはマレーがハーマン・メルビルの作品に強く引き寄せられていたからである。彼は長年かかって,26種に及ぶ根本的な人間の要求(need)の図式を開発。その多くは暗く恐ろしい中世欧州の感覚だ。n支配,n顕示,n屈従などである。
 マレーは長年,妻と離婚しないまま,助手の1人と苦痛に満ちた濃厚な恋愛関係にあった。相手はクリスティアナ・モルガン。カール・ユングのもとで学んだスイス女性である。マレーとモルガンは共同で,主題統覚検査(TAT)を開発した。被験者は硬いカードに描かれた白黒の絵を見て,思いつくストーリーを語る。大半の絵は,わざと動揺させるような場面が描かれている。マレーとモルガンは,被験者が表現するストーリーは無意識の深い部分から出てくると考えた。

ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.109-110

ロールシャッハ

チョーンシーが初めてロールシャッハ・テストのことを耳にしたときは,詳しい教授がハーバード大学にいるのを突き止めた。ロールシャッハ・テストは,インクのしみのついた10枚の白いカードを見せて被験者の想像力をかきたて,何に見えるかと聞くものである。チョーンシーは教官クラブの昼食に教授を誘い,さらに詳しい情報を得ようとしたが,ロールシャッハを入試に使うのは無理だと止められた。専門家が長時間かけて,1人1人に実施しなければならないからだ。やはりハーバード大学にいたころ,学界から軽蔑されていた有名な心理学者,ジョンソン・オコナーの業績にも興味を抱いた。オコナーは創造性に関するテストを開発した。被験者に「海水面が6フィート上昇したらどうなるか」とか「樹木がすべて,2フィートより高く育たなければどうなるか」といった質問をする。オコナーは回答の単語数を数え,最も語数の多い被験者が,創造性において最も高い点をとるようにした。テスト界における初期の多くの人たちと同様,オコナーは,実験による裏付けを集めて研究結果を確立する気がなかったため,この創造性テストをハーバード大学で使うのは不可能だった。しかしチョーンシーはいつも,オコナーは何かに気付いたと感じていた。

ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.108

SATの予測的妥当性

テストの初期のころは,極端に高い妥当性の報告が散見された。そういう報告は,ベン・ウッドやウィリアム・ラーニドなどテストの普及者から,しばしば出てきた。だが,数字は低下してきた。ETSの大半のテストは,0から1までのスケールで見て,0.4近辺の妥当性を示した。予測的妥当性は通常少し高めで,成績とテスト得点を組み合わせると(チョーンシーがハーバード大学の副学部長時代に考え出した方法),いずれか片方だけを見た場合より高い,0.5付近の予測的妥当性になる。確かにテストは十分有用ということになるが,それでもSATの点数自体は,大学1年目の成績の変動の約15%を説明するにすぎない。これはかなり乏しい成果で,チョーンシーがテストに対して思い描いた壮大な役割にはまったく及ぼなかった。

ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.107

考え方の転換

ブリガムはSATを大学に売り込む一方,重大な持論の変化を経験しつつあった。かつての彼自身も含めて,IQテスト派が奉っていた中心的な教義——IQテストが,生物学に基づく遺伝的に受け継がれた資質を測っていて,その資質は民族と関係していること——は誤りであるとの見解に達していたのだ。
 SAT導入からわずか1年後の1927年。米知能テスト界の巨人,ルイス・ターマンは,ボストンで主催した会合で,ブリガムに講演を依頼した。ブリガムはそれを断り,頭の中をいっぱいにしている問題を整理した。IQに関する先験的な業績の大半は,真の信奉者たちがまとめていたが,彼らはまず結論(IQテストは信頼性と妥当性が極めて高く,歴史的に最も偉大な科学的進歩の1つである)の発表から入り,客観性が著しく欠ける雰囲気の中で研究を行なった。ブリガムは1928年,優生学者の会合に出席,以前の考えの撤回を表明した。

ニコラス・レマン 久野温穏(訳) (2001). ビッグ・テスト:アメリカの大学入試制度 知的エリート階級はいかにつくられたか 早川書房 pp.43-44

扱いにくい相手

知能検査が手間どるのは,科学的に妥当な方法で行うのに心底苦労するからだが,タコ自身のせいでもある。タコは気まぐれなのだ。「ちゃんと課題に取り組んでくれる日もあれば,やる気がない日もある」と,ボールは言う。「今日はお腹が空いていないとか……」。彼女は気を静めるかのように,ちょっと口をつぐんだ。「とにかく,タコを研究して十分なデータを集めるには,根気が必要なんです」。堅苦しい研究文献でも,思わずいらだちが表に出てしまうこともある。ボールは研究仲間と分担執筆した迷路に関する論文で——きちんとした学者らしい文体で——こう結論付けている。“タコの学習能力の調査における主な障害は,被験者として相対的に扱いにくいことにある”

キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子(訳) (2014). タコの才能:いちばん賢い無脊椎動物 太田出版 pp.169

行動シンドローム

一方,ハンロンは性格礼賛の風潮には与していない。同じことを説明するなら,“行動シンドローム”という用語を使う。シンの実験結果が個々のタコにみられる典型的な行動のちがいを現していることに反論しているわけではない。「いきなり“性格”を持ちだして,哺乳類や霊長類と比べはじめるのが気に入らないんだ」と,彼は言う。

キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子(訳) (2014). タコの才能:いちばん賢い無脊椎動物 太田出版 pp.159

タコの性格

無脊椎動物の性格はどうやってたしかめればいいのか?頭足類用のタイプ別性格診断テストはないので,初期の性格テストでは,野生のマダコ属の一種(オクトプス・ルベシェンス)の行動を19タイプに分けて調べた。アンダーソンとマザーは,警戒させたり(水槽のふたを開ける),餌をやったり(水槽のなかに餌を落とす),脅したり(ブラシで触る)して,タコの様子を観察した。その結果,タコの様子を観察した。その結果,タコによって反応がまちまちであることがわかった。たとえば,ブラシで脅された場合,墨を吐きかけてジェット噴射で逃げる神経質なタイプもいれば,逆襲する豪胆なタイプもいた。実験の結果,タコの性格には大胆,内気,受身という3つの側面があることが立証された。

キャサリン・ハーモン・カレッジ 高瀬素子(訳) (2014). タコの才能:いちばん賢い無脊椎動物 太田出版 pp.158

引用者注:元論文は,Mather & Anderson (1993). Personalities of octopuses (Octopus rebescens). Journal of Comparative Psychology, 107, 336-340. 「19タイプ」は,行動を19次元で測定したという意味である。

ビッグファイブ・パーソナリティ

心理学では性格を把握するときに「5因子モデル」,別名ビッグ・ファイブを用いる。次の5つの特性に関して,どんな傾向にあるかを評価するのだ。

 情緒不安定性(敏感/神経質 安定/自信)
 外向性(精力的/社交的 孤立/内気)
 開放性(創意/好奇心 保守的/慎重)
 勤勉性(規律/熱心 怠惰/不注意)
 調和性(協力的/共感 自己中心的/対抗心)

 心理学者ジョーダン・ピーターソンは,革新的な人間はこの5つの因子のうち,最後の3つ(開放性,勤勉性,調和性)の組みあわせに独特の特徴があると指摘する。
 自分の殻に閉じこもっていては,革新的なことはできない。他人ができないことに想像をめぐらせ,自らの先入観を揺さぶる必要がある。勤勉さも大切だ。いくらアイデアが良くても,それを地道に実践する自制心とねばり強さがなければ,ただのドリーマーだ。ここまでは納得がいく。
 そして3つめの調和性だが,革新者に求められるのは調和性というよりも,むしろ非調和性だ。ケンカを売ったり,周囲を不快にさせるのではないが,誰もやろうとしないことにリスク承知であえて挑戦するのだから,むしろ調和性とは対極ということになる。
 それは容易なことではない。非調和な人間がいると,社会は眉をひそめる。それに人間には,周囲から承認されたい本能がある。それでも,社会を変える力がある斬新な発想を実現するには,これまでのしきたりを壊す気概が必要だ。

マルコム・グラッドウェル 藤井留美(訳) (2014). 逆転!強敵や逆境に勝てる秘密 講談社 pp.113-114

セルフヘルプのパラドックス

私たちが単独で単純な幸せ活動を実践するのを妨げるふたつ目の障害は,私が「セルフヘルプのパラドックス」と呼んでいるものです。セルフヘルプは一般に個人的で私的な活動です。ある種の活動——恐怖を克服する,キャリアの目標を見つける,慢性的な痛みに対処する,定期的な運動を始めるなど——に関しては,セルフヘルプは確かに成果をあげるでしょう。でも,日々の幸せに関しては,個人的で私的な活動は決して成果をあげません。なぜなら,ほとんどの科学的な研究結果によれば,自分ひとりで長期にわたって幸せになるよい方法は皆無に近いからです。

ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.265-266

幸せ活動の弊害

ポジティブ心理学者のマーティン・セリグマンは,「幸せ活動は本物ではないという広く行き渡っている考え」は,ポジティブ心理学を実践するうえで「深刻な障害」になると,述べています。本能的な理屈抜きの反発が相手では,科学に勝ち目はありません。それに,ポジティブ心理学者たちが提供できる最善のアドバイスは,残念ながら,私たちの皮肉で懐疑的な見方を強めるだけのようです。多くの人にとって,幸せ活動は,よいことをしてよい気分になるという構図がさほどあからさまではなく,直感的により魅力的に思えるパッケージに組み込まれる必要があるでしょう。

ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.265

内向性・外向性

第1に,内向的な人たちは,脳の活動にふたつの違いがあることが関係しているようです。脳の皮質領域は物体や空間,人間などの外界の情報を処理するところで,どんな刺激要因にも強く反応します。一方,外向的な人たちは皮質の活性度が低いところがあり,外界に関与している感覚を得るにはより強い刺激を必要としています。このことが,内向的な人がより浅いレベルの社交活動でも,精神的には消耗しやすく,外向的な人がより強い社会的な刺激を求める原因です。
 一方,外向的な人は社交的な見返り,たとえば笑顔や笑い声,会話,接触などへの反応でドーパミンをより多く分泌する傾向があります。反面,内向的な人はそうした社交的な見返りに反応するシステムの敏感さが弱いものの,問題解決やパズル,単独での探索に伴う精神活動への敏感さが強い傾向にあります。研究者たちは,この傾向が外向的な人がなぜ他の人と一緒にいたり,刺激的な環境にいたりすることでより幸せを感じるかを説明していると述べています。外向的な人は内向的な人よりも,ものすごく強いポジティブな感情を引き出しているのです。

ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.132

内発的報酬

私たちの幸福感には,どのような内発的報酬がもっとも必要とされるのでしょうか?決定的な定義はありませんが,関連する学術論文にはいくつかの鍵となる考え方や事例が何度も出てきます。私なりの分析では,ここ10年間のポジティブ心理学の内発的報酬に関する重要な知見は,大きく分けて4つの主要なカテゴリーに分類できます。

 第1に,一番重要なこととして,私たちは,「満足のいく仕事」を日々求めています。この「満足のいく仕事」の具体的な性質は人によって異なりますが,すべての人にとってそれは,明確に定義された,レベルの高い活動で,自分の投じた努力の影響が直接目に見えてわかる仕事です。

 第2に,私たちは,「成功体験,あるいは少なくとも成功への希望」を求めています。私たちは影響力の大きさを感じたいと思い,自分の得意なことを人に見てもらいたいと思います。私たちはまた,成功のチャンスについて楽観的に考え,何かに憧れ,時とともに何かがよくなることを求めています。

 第3に,私たちは「社会的つながり」を求めています。人間は非常に社会的な生き物で,どんなに内向的な人であっても,幸福感のかなりの割合を大事に思う誰かと過ごす時間から得ています。私たちは経験を共有して,つながりを作り,他の人と一緒に何か大事なことを達成することを求めています。

 そして最後に,私たちは「意味」や自分自身よりもなにか大きなものの一部になる機会を求めています。壮大な規模のものへの好奇心や,怖れ,疑問を感じる気持ちを求めています。さらには,私たち個人の生活を超える永久で重大な何かの一員となって貢献することを求めているのです。

 これらの4種類の内発的報酬は,人間の最適な経験の基礎となるものです。これらは基本的な生存欲求(食・安全・生殖)以外で,もっとも強力なやる気の源です。そしてこの報酬すべてに共通しているのは,いずれも私たちを取り巻く世界や環境,他者,あるいは大義や自分自身よりも大きな活動に,深く関わる方法だということです。

ジェイン・マクゴニガル 妹尾堅一郎(訳) (2011). 幸せな未来は「ゲーム」が創る 早川書房 pp.76-77

サイコパスはモテる

ここで,ある意味興味深い研究結果があります。サイコパスの傾向がある人は,異性にモテるようです。例えば,ちょっと悪そうに見えるほうが女性には魅力的にみえるのかもしれません。しかし,ヘアは彼らに魅力があったとしても,表面的な魅力に過ぎないと主張していますので,きちんと付き合えば,彼らの魅力が表面的なものに過ぎないのかどうかがわかるはずです。ですから,若い人には,あまり焦らずに相手をよく知ってから結婚してほしいと思います。そして,サイコパスの傾向をもつ人は,結婚にこだわらず,多くの異性との関係をもち,子どもを多くもつ傾向があります。この傾向は特に男性のサイコパスの人において顕著なので,サイコパスの男性は,一般の男性よりもかなり多くの子どもをもつことになります。もっとも,彼らは自分の子供に責任をもたないケースが多いようですので,彼らと結婚した女性は大変な苦労をすることになります。結果として日本では,教養があり慎重なタイプの人の子どもの割合が少なくなり,サイコパスの子どもの割合が増えていくことが予想されるのです。

木島伸彦 (2014). クロニンジャーのパーソナリティ理論入門—自分を知り,自分をデザインする— 北大路書房 pp.83

反社会的な性格

さて,ここで,反社会性パーソナリティあるいはサイコパスの傾向について,私たち全員にとって重要な点について書いておかなければならないと思います。そもそもなぜ,このような傾向のある人たちが存在するのでしょうか?多くの人は,こんな種類の人たちがいないほうがよりよい社会になると考えると思います。こうした危険な人たちが存在する理由についてはいろんな仮説がありますが,中でも理解しやすいのは,進化心理学的説明です。進化心理学によると,それぞれの種の中でも,より生存競争に適した特性のある個が生存競争に勝ち,その種の中でもそうした生存競争に適した特性がある個が増えていくと考えられます。反社会性パーソナリティ障碍にしてもサイコパスにしても,100人いれば,1人はいると考えられますので,彼らの行動特性は生存競争に適していたと考えられます。

木島伸彦 (2014). クロニンジャーのパーソナリティ理論入門—自分を知り,自分をデザインする— 北大路書房 pp.81-82

遺伝子と行動

現在のところ,遺伝子情報で人の特徴のすべてがわかるわけでもありませんし,同じ遺伝子情報であっても,一卵性双生児の2人がまったく同じ個人ではなく,それぞれの特性も異なっていることから,遺伝子情報だけで,どんな人になるのかは説明できません。また,人間はなんといっても,いつでも成長することが可能な存在なので,これからどんな人になっていくのか正確には予測できないでしょう。しかし,例えば,拳銃を携帯することが許されている警官の採用に,遺伝子情報を活用することは是か非かと問われれば,いろいろな考えがあると思います。こうした倫理的な問題については,まだまだ活発な議論がなされていませんが,遺伝子情報で個人の行動パターンの関係がより明確になっていけば,重要な問題になっていくと思われます。

木島伸彦 (2014). クロニンジャーのパーソナリティ理論入門—自分を知り,自分をデザインする— 北大路書房 pp.78-79

自己提示

さらに,パーソナリティ・テストでは,自分自身についての自己概念をどのように自己提示するのか,という点についても考えなければなりません。単純なのは,繰り返しになりますが,人事採用場面において,自分をよく見せるための自己提示を行なう場合があるということを指摘できます。逆に,まれではありますが,特定の場面においては,自己概念を自虐的に自己提示する場合もありえます。例えば,周りからの期待が高すぎて,その高すぎる期待に応えられないと判断した場合,「いえいえ,それほどでもありません」と自己概念を低めに提示することは,日本人にはむしろ習慣にさえなっていると思います。したがって,パーソナリティ・テストの結果を判断する際には,そのテストがどのような状況下において用いられたのか,ということも考慮に入れなければなりません。

木島伸彦 (2014). クロニンジャーのパーソナリティ理論入門—自分を知り,自分をデザインする— 北大路書房 pp.71

準拠集団

まず,準拠集団とは,人が態度や価値を決定する場合や行動指針を求める場合などに,判断の根拠を提供する社会集団のことです。そして,その人の属する準拠集団によって,その人のパーソナリティ・テストの結果も変わってくるのです。例えば,社会の流れに敏感で先進的な仕事を求められる職場と,とても保守的で変化を嫌う職場とでは,その職場に勤めている人自体が異なってくるわけです。そして,普通の人が,先進的な職場に勤めた場合,周りの人と比較して,自分はとても先進的ではないと考え,新奇性探究の得点が低くなったり,逆に,保守的な職場に勤めた場合,新奇性探究の得点が高くなったりするわけです。これをより大きな集団で考える場合,例えば国際比較をする際にも,同様のことがいえます。例えば,新奇性探究が高い人が多いと考えられるブラジルと,相対的には新奇性探究が低い人が多いと考えられる日本で,新奇性探求の得点を比較したところ,ほとんど差がなかった,という結果が得られています。おそらくは,ブラジル人のほうが日本人よりも新奇性探究の傾向が高いと考えられますが,ブラジル人は周りのブラジル人と比較して自分の傾向を判断し,日本人は周りの日本人と比較して自分の傾向を判断するからです。このように,パーソナリティ・テストの結果を判断する際には,その人がどういう集団に所属しているのか,ということも同時に判断しなければならないと考えられます。

木島伸彦 (2014). クロニンジャーのパーソナリティ理論入門—自分を知り,自分をデザインする— 北大路書房 pp.70-71

遺伝子とパーソナリティ

最近の研究で,2万人以上の人を対象に120万以上の遺伝子マーカーとTCIの尺度値との関係を検証した精緻で大がかりな研究の結果,遺伝子とパーソナリティ尺度には有意な関連性がないという研究が発表されています(Verweij et al., 2010)。この報告は当時の研究としては最高レベルの研究に基づいたもので,この研究結果から,おそらく多くの研究者は,遺伝子とパーソナリティ尺度の直接的な関連性はないと考えているのではないかと想像できます。
 さて,私自身,当初のTCIと遺伝子多型に関連性があるという研究発表がなされた後,かなり振り回されてしまった感がありますが,それでも結局のところ,TCIの測定値と遺伝子情報に関連性があると考えています。

木島伸彦 (2014). クロニンジャーのパーソナリティ理論入門—自分を知り,自分をデザインする— 北大路書房 pp.49-50

気質の組み合わせ

クロニンジャー理論の気質の組み合わせによるパーソナリティのタイプは,図1-6で簡単に表わすことができます。この図の見方ですが,垂直方向を見て,上にある4つが「新奇性探究」が高いタイプです。逆に,下の4つが「新奇性探究」の低いタイプです。水平方向を見て,左にある4つのタイプは「報酬依存」が高く,逆に,右にある4つは「報酬依存」が低いタイプです。そして,奥にある4つは「損害回避」が低いタイプで,手前にある4つが「損害回避」の高いタイプです。

木島伸彦 (2014). クロニンジャーのパーソナリティ理論入門—自分を知り,自分をデザインする— 北大路書房 pp.28

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