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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「パーソナリティ・個人差」の記事一覧

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相手を否定する方法

相手の価値を否定するために用いられる方法は多種多様だが,次のようなやり方が代表的である。
 まず,冷たい態度をとるのが,一番簡単である。「あなたに対しては,何かを言う価値も,何かをする価値もない」ということを見せつけるためである。極端な場合には,口をきかず,沈黙を貫く。無視するための緘黙というわけである。
 答えないのも,しばしば使われる手である。これは,相手に対して,「あなたに関心なんかない。あなたに答えるために費やす時間もエネルギーも,もったいない」と伝えているようなものである。
 話に耳を傾けようとせず,さげすむようなまなざしを向けて,相手の要求も一切考慮しないという態度を示すこともある。極端な場合には,目を合わせないとか,目の前を通り過ぎる際にも顔をそむけるとかして,その存在を無視しようとする。
 目の前の相手が属しているジャンルの人を批判したり,非難したりするのも,よく用いられる手法である。たとえば,「スポーツをしない人は……」とか「キャリアウーマンは……」というふうに一般化して悪口を言うことによって毒を薄めてはいるものの,言われている側は,すぐに気づく。
 こういう場合,「一体何が言いたいの?」と問い詰めても,向こうは「あなたのことを言っているんじゃありません」と答えて,すっと逃げるだろう。逆に,「気にしすぎて,何でも被害妄想的に受け止めているんじゃないの」などと責められるかもしれない。
 このような態度を目の当たりにすると,こちらが何か悪いことをしたわけでもないのに,言い訳したり,弁明したりしなければならないのではないかと思ってしまいがちである。これ以上厄介な事態を招くのを避けたい一心で,謝罪することを考える場合さえあるだろう。だが,このような対応は,事態をさらに悪化させるだけのことが多い。その結果,罪悪感や無価値観を覚えて,落ち込み,自身も自尊心も失っていくことになるのである。

片田珠美 (2013). 他人を攻撃せずにはいられない人 PHP研究所 pp.107-109
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よくある発言

たとえば,次のように言うことが多い。
1「うまくいかなかったら,それは悪いということだよね」→うまくできなかったあなたが悪いと責めるための言葉
2「どんなことでも,能力がないとうまくいかない」→あなたに能力がないからこんなことになったのだと責任転嫁するための言葉
3「友達同士の間では,何でも言った方がいい」→相手を攻撃する自分を正当化するための言葉
4「愛があるからこそ,厳しくするんだ」→こういう言葉で虐待や体罰が正当化されることがいかに多いか
5「いろいろ文句を言う人がいるけど,だいたいは,そんなことを言っている本人が悪い」→私に対して不平や不満をもらすあなたが悪いのだと非難するための言葉
 このような表現が用いられること自体は,それほど珍しくないかもしれない。だが,こういう言い方を多用する人が攻撃欲や支配欲を抱いていることもあるので,それを見ぬく目を養うことが必要だ。

片田珠美 (2013). 他人を攻撃せずにはいられない人 PHP研究所 pp.38-39

次第にわかる

こういう人を一目で見分けるのは,決して簡単ではない。頭に角が生えているわけでも,いつも手に刃物を握っているわけでもないのだから。ただ,対人関係に独特のパターンがあるので,それを知っておけば,早めに気づいて,ターゲットにされることからあなたの身を守ることができるだろう。
 まず,しばらく一緒にいると,何となく疲れて,重苦しい気分になる。何でもけなして無価値化する傾向が強いので,徒労感や空虚感を覚えることさえある。こんなふうに自分が枯渇していく感覚は,気づくためには非常に有用だが,同時に微妙でもある。自分が感じている徒労感と,その前に接触した人物を結びつけて考えられればいいが,普通は,過労とか年のせいとかで片づけてしまいがちだからである。
 こういう人と一緒に過ごしていると,何となく落ち込むとか,元気がなくなるとかということに気づくのに何ヶ月,あるいは何年もかかると思ってはいけない。そこまで悠長に構えていたら,あなた自身が破壊されてしまうことだってあるのだから。同僚や上司,家族や親戚,友人や知人などとしばらく接した後で,混乱したとか着かれたと感じたら,要注意だ。こういう人と接した後で決まってトラブルに巻き込まれるようなことがあれば,かなり危険と警戒すべきである。
 最初はわからないかもしれないが,言動を注意深く観察していけば,次第にわかるようになってくる。一言で言えば,こういう人と接した後は,ぐったりとして衰弱する感じがする。態度や会話なのか,全体の雰囲気なのか,ともかく,あなたの世界を混乱させて,あなたのエネルギーを空っぽにするようなところがある。

片田珠美 (2013). 他人を攻撃せずにはいられない人 PHP研究所 pp.32-33

死と離婚

調査は意外な結果になった。親の死はたしかにつらい経験だが,寿命との間には特に関連性は見られなかった。たしかに一時的にはつらくても,やがて子供は現実を受け入れ,前に進んでいくことができるようだ。
 しかし,離婚となると話は別だ。普通に考えると,死別よりも離婚のほうが心の傷は浅そうに思われるだろう。亡くなってしまったらもう会えないが,離婚なら生きているので,まだ会うことができるからだ。しかし,結果はまったく正反対になった。

ハワード・S・フリードマン,レスリー・R・マーティン 桜田直美(訳) (2012). 長寿と性格:なぜ,あの人は長生きなのか 清流出版 pp.110

心配性と勤勉性

女性で若いころに心配症だった人は,病気がちな老後を送り,幸福度も低いことが多い。そして彼女たちは他と比べて早死にする傾向がある。そこに勤勉性の低さが加わると,不幸な老後と早死にの確率はさらに高くなる。勤勉性が高く,自分の人生をコントロールし,いい友人にも恵まれている女性は,たとえ心配症であっても健康へのリスクは少ない。
 では,男性はどうだろうか。調べたところ,女性とは全く違う結果になった。若いころ心配症だった男性は,不健康で不幸な老後を迎えやすい。ここまでは女性と同じだが,男性の場合はむしろ早死にのリスクが低くなっていたのである。心配症で,なおかつ勤勉性も高ければ,長生きの可能性はさらに高くなった。

ハワード・S・フリードマン,レスリー・R・マーティン 桜田直美(訳) (2012). 長寿と性格:なぜ,あの人は長生きなのか 清流出版 pp.70

楽観性と健康リスク

楽観的な性格は,大きな健康リスクになることもある。危険を顧みなかったり,深刻な症状を見逃したりしてしまうからだ。
 このような態度は,「根拠のない楽観主義」と呼ばれる。楽観的な人は危険を過小評価し,必要な用心を怠る傾向がある。「私は大丈夫」と信じる気持ちは,手術からの回復では役に立つかもしれないが,その楽観主義が喫煙や食べ過ぎなどの悪い生活習慣につながったり,高血圧などの病気のサインを無視したりすることにつながるかもしれない。
 それに楽観的な人たちは,物事が期待どおりに運ばないとことさらにショックを受ける。だから,失業,家族の死,ガンの再発など,自分の期待を裏切ることが起こると,人並み以上にストレスを感じてしまうことになる。さらにそこでやけを起こし,回復のための努力をすべて放棄して昔の悪い生活習慣に戻ってしまうかもしれない。

ハワード・S・フリードマン,レスリー・R・マーティン 桜田直美(訳) (2012). 長寿と性格:なぜ,あの人は長生きなのか 清流出版 pp.61-62

社交性と飲酒・喫煙

社交的な子供は,大人になってからの飲酒や喫煙が他の人よりも多くなる傾向がある。勤勉性の高い子供は大人になってからも健康的な生活習慣を選ぶことが多いが,社交的なタイプはまわりのプレッシャーに負けやすく,結果として飲酒や喫煙が増えることになる。それに加えて,飲酒や喫煙が「当たり前」の環境に身を置くことも多い。また,こんな興味深い結果も出ている。社交的な人や外向的な人は,どうやらお酒や煙草に対して人並み以上に魅力を感じてしまう傾向があるようだ。これは,さまざまな研究で同じ結果が出ている。

ハワード・S・フリードマン,レスリー・R・マーティン 桜田直美(訳) (2012). 長寿と性格:なぜ,あの人は長生きなのか 清流出版 pp.47

勤勉性と長寿

勤勉性の高い人は,なぜ健康で長生きできるのか。それには3つの理由がある。
 第1の理由は,おそらく誰でも思いつくだろう。勤勉性の高い人は,よく考えて慎重に行動し,自分の身を危険にさらすような向こう見ずなことはしない。喫煙,深酒,ドラッグ,危険な運転などを避ける傾向がある。車を運転するときはきちんとシートベルトをして,医師の言いつけもよく守る。リスクを極端に嫌うというわけではなく,むしろ現実的にリスクの計算ができるタイプと言えるだろう。どこまでが大丈夫で,どこからが危険かをきちんと考えている。
 第2の理由は,いちばん意外な内容である。どうもある種の人びとは,生まれつき健康で,しかも勤勉性の高い性格の持ち主でもあるらしい。もとから勤勉性と健康の両方を兼ね備えているのである。勤勉性の高い人たちはまた,生活習慣に関わる病気だけでなく,どうやら病気一般にもかかりにくいようだ。この意外な事実を発見したのは私たちだけではない。多くの研究者が,同じ結論に達している。勤勉性の高い人たちは,どういうわけかあらゆる死亡リスクが低くなっているのである。
 生理学的な根拠についてはまだはっきりしないが,どうやら勤勉性の高い人とそうでない人では,セロトニンなどの脳内物質の分泌が異なるようだ。セロトニンは脳内にある神経伝達物質で,分泌量が減ると,うつ病になったり衝動的な行動に走ったりすると考えられている。セロトニンはまた,食べる量や睡眠時間を司るという,体全体の健康に関わる大切な役割も担っている。
 そして,最後の理由が最も興味深い。勤勉性の高い人たちは,自然と健康で長生きするような人生を歩んでいるのである。脳内物質が健康的なバランスを保ち,健康的な生活習慣を身につけているというだけの話ではなく,人生全般において健康的な選択をしているということだ。彼らは概して幸せな結婚生活を送り,いい友人に恵まれ,健全な職場で満足できる仕事をしている。
 そう,勤勉性の高い人たちは,健康長寿につながる人生を自分の力で創造しているのである。

ハワード・S・フリードマン,レスリー・R・マーティン 桜田直美(訳) (2012). 長寿と性格:なぜ,あの人は長生きなのか 清流出版 pp.37-38

優生学とIQ

今日では,IQテストは主に分析能力を測定する限定的な検査だと考えられている。いま振り返ってみると,ターマンやIQに携わった心理学者たちはエリート主義者だし,あるいはそれよりタチが悪いと言えるかもしれない,と多くの心理学者も認めている。低得点者を表す「愚鈍」という言葉を生みだしたのは,知能テスト信者だったヘンリー・ゴダードである。ゴダードは移民を批判する悪質な発言を繰り返し,ユダヤ人や東欧からの移民の「知能の低い」遺伝子が,北部ヨーロッパの優良な遺伝子を薄めてしまうと主張した。知能テストの支持者たちは,「精神薄弱」を断種して,次世代の低能者を生み出さないようにすべきだと論じ,支持を得た。ターマン自身も,遺伝的な優良性は社会全体の優良性につながると記述している。

デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.43

生まれつき才能があるかないか

ターマンは,人間の可能性を評価するための研究道具のひとつとして知能検査を用い,目的に合わせて修正した。フランスの心理学者,アルフレッド・ビネーが創案した初期のバージョンはもっと教員向けのもので,特別授業が必要な子どもを識別し,必要に応じたより良い教育を与えるための手段だと考えられていた。しかし,ターマンの考えは違った。それほど同情的でなく,おそらくもっと臨床的な見方をしていたのである。彼はもっと純粋に分析能力に特化したテストに作り直した。改訂版では,三角形の角度を考える能力や,異なる速度で駅に近づいている2台の電車についての有名な問題などを解く能力を測定する。ターマンは,生徒が適切な教育を受けているかどうかを判断することにはあまり興味がなかった。関心があったのは,生まれつきの知能や,難しい問題を解くことができる生来の才能だった。いつの日か,自分のテストを使って,社会が人々を才能に応じて分類できればいいと願っていた。そうすれば,子どもたちは才能に応じた教育が受けられるようになるだろうし,賢い者はもっと賢くなれる。教え方の改善が重要な問題だとは思っていなかった。正直なところ,人には生まれつき才能があるかないかのどちらかしかないと信じていたからである。

デボラ・ブラム 藤澤隆史・藤澤玲子(訳) (2014). 愛を科学で測った男 白楊社 pp.42

金と権力を得る資格がある

対照的に,サイコパスの応募者には,秘密の意図がある。彼らは“知恵比べ”を望む一方で,金と権力を求めている。ただし,労働への見返りとしてではない。彼らは,自分に金と権力を得る資格があると思い込んでいるのだ。彼らは面接官を丸め込んでその仕事を手に入れ,最終的には企業自体を利用しようとたくらんでいる。採用面接は,サイコパスの応募者が光り輝く格好の舞台なのだ。
 しかし,意外なことに,多くの採用責任者は面接の準備を怠っている。それどころか,面接のテクニックを習得しようともしない。そのせいで,サイコパスの応募者に面接の主導権を握らせ,彼らの術中にはまってしまうのだ。
 多くの採用責任者は,適切な質問を用意せずに面接に臨んでいる。なかには,質問を全く用意しない人もいる。応募者にとって,面接はその職務をこなす能力やモチベーションをアピールするチャンスだ。用意周到な応募者は,面接に向けて心の準備を整え,面接のシミュレーションを行う。面接のハウツー本をよく読み,よくある質問に対する答えを用意しておくのだ。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.273-274

録音すると

サイコパスの研究に携わるベテランの専門家は,サイコパスと面と向かって話をしているときには,その話術の巧みさに感銘を受けるのだが,後になってそのときの録音テープを聞き直すと,彼らの話が美辞麗句,矛盾,うそ,事実の歪曲,誤った論法のオンパレードであることに初めて気づくという。このような研究者なら,サイコパスに関する犯罪歴などの付加情報を事前につかむことができるが,少なくとも電話面接の時点では,企業にそのような強みはない。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.271

リーダーシップとの取り違え

サイコパスの特徴を企業のリーダーとしての資質と取り違えてしまうのは,上層部が採用や昇進や後継者育成計画の人選で意思決定をする際に,有能なサイコパスが,上層部が求めるリーダーシップやマネジメント能力を持っているように振る舞えるからだ。現に,サイコパスの魅力的な物腰や大仰な話しぶりは,“カリスマ的なリーダー”や“自信家”の特徴を思われがちだ。
 採用試験でも,応募者に,優れたリーダーシップに不可欠なカリスマ性があると認められた場合,その特性だけが強調されて神々しく見えてしまう。たった1つの特性からその人物の全人格を判断してしまうのだ。これは,面接官や意思決定者が陥りやすい傾向だ。ある特徴が神々しく見えることで,その人物についての足りない情報までがカバーされ,重要な判断に影を落とすのだ。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.245

弱点をつく

サイコパスには,人間の心理を理解し,他人の弱点や脆さを探り,利用することに長けている者が多い。それが持って生まれた特性なのか,他人の弱点を探るために人一倍努力したせいかなのかはわからない。
 いずれにせよ,彼らが最もてこずる相手は,ナルシストで自己主張や支配的な傾向が強い人間であるのは間違いない。サイコパス自身も強力な支配力を振るう傾向があるので,このタイプの人間は特に気になる存在だ。彼らには,強いエゴ,特権意識といった,サイコパスの特性に共通するところもあるが,サイコパスのような冷酷な有能さはない。
 だれかに心理的に操られていることに気づいていちばん驚くのは,自分はだれよりも頭が切れて強い人間だと思い込んでいる人間だ。とりわけナルシシストは,企業で管理職のポストに就く人数が不釣り合いなほど多い。彼らは自分のことしか考えないので,出世を確実にするために,部下を不当にこき使う一方で,上司には取り入ろうとする。
 私たちは,社内で誰かにだまされているような気がすると訴えるナルシシストの管理職と数多く接してきたが,彼らが一様に驚き,認めたがらないのは,社内に自分よりも格段に上手の者がいるという事実だ。そして,まさにこれが企業内詐欺師にとってのうまみなのだが,ナルシシストに代表されるようなあくの強いタイプの人間は,人一倍かたくなに助けや指導を拒み,他人の意見に耳を貸さないので,結局は手遅れになり,長期にわたってサイコパスの格好のターゲットになってしまう。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.169-170

サイコパス社員のサバイバル

では,いわゆる「サイコパス社員」は,どのようにして大企業で生き延び,成功するのだろうか。実際,企業の多くは,起業家志向で他人をだますのに必要な特性と社交術を持つサイコパスにとって最高の餌場になっている。捕食者たるサイコパスは,活動の場を狙って動き回る。権力や支配権や地位や財産を搾取でき,利用価値のある人間と近づきになれる機会を提供してくれるポストや業務や専門職や組織を見つけると,すかさず飛びつくのだ。
 大企業での勤務にはさまざまな問題や課題もあるが,得るものも多い。そして,他の多くの企業と同様,サイコパスも,報酬に対するリスクを計算する。高収入と地位と権力に加え,それに伴う役得も手に入れるチャンスがある一方で,詐欺や着服を働く,同僚を虐待する,高級を貪るといった形で企業を搾取するには,一般社会で他人を操るよりも,さらに洗練されたテクニックが必要になる。サイコパス社員にとって,それは究極のチャレンジだ。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.128

サイコパスの対人関係は

では,このようなサイコパスと被害者の関係と,本物の人間関係,つまり,2人の人間が出会い,共通項を見いだし,意気投合して築いていく誠実な関係とでは,何が違うのだろうか。
 第1に,被害者が真の姿だと思い込んでいるサイコパスのペルソナは,現実のものではない。それは,被害者をだますために慎重に積み重ねたうそのうえにつくられた“仮面”なのだ。どの仮面もサイコパスが被害者1人ひとりの心理的な欲求や期待に合わせてあつらえたもので,仮面の下にあるサイコパス本人のパーソナリティを反映するものではない。ただの便利なつくりものにすぎないのだ。
 第2に,サイコパスとの関係には,第三者の意見は反映されていない。サイコパスが一方的に被害者を選択し,接近していく。サイコパスの口車に乗せられていない第三者の目には,その様子がはっきり見えるだろう。だが,被害者は第三者の意見に耳を貸さず,むしろ,サイコパスが特別な存在なのだと説得しようとする。
 第3に,サイコパスとの関係は,偽物であるがゆえに長続きはしない。誠実な関係は,時間の経過とともに変化していく。恋愛は憎しみに変わり,結婚は離婚という結末に終わることもある。だが,当初,2人の関係は,少なくとも当時把握していた本物の情報に基づいて築かれたものだった。人は変わり,別々の道を歩むこともある。ところがサイコパスは,相手との関係を維持することに最小限のエネルギーしか費やそうとしない。もっとも,相手から何か飛び抜けてすばらしいものを奪えそうな場合はその限りではないが,そんなことはめったにない。したがって,関係に終止符が打たれると,相手は訳もわからないまま置き去りにされてしまう。
 第4に,サイコパスには下心,あるいは邪心があり,必ずどこかに利己的な動機が隠れているので,サイコパスとの関係は一方的に偏ったものになる。この虐待行為は,デートや仕事の取引で相手を利用することだけにとどまらない。サイコパスによる虐待行為には,捕食者の性質がうかがえる。相手に深刻な金銭的,身体的,精神的ダメージを与えることも少なくない。健全な本物の人間関係は,お互いの尊敬と信頼のうえに成り立ち,率直な意見を交わし,感情をさらけ出せる関係だ。サイコパスとの関係も,こうした尊敬や信頼に基づいているという被害者の思い込みが,サイコパスの成功に手をかしている。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.106-108

目の前の現実

人間は,だれかを傷つけたら,少なくとも多少の罪悪感や良心の呵責を覚え,謝罪したいと思うものだ。だが,サイコパスには,そのような考えかたをぼんやりとしか理解できない。ときには,罪悪感や良心の呵責を感じるのは世間の人々の興味深い弱点で,自分はそれをうまく利用できるのではないかと考える。自分の行動が,自分にとっても他人にとっても最悪の結果を招く可能性にひるむこともない。その理由として,サイコパスが過去や未来よりも,目の前の現実を重視することが挙げられる。
 また,感情が乏しいせいで,他人が自分とは比較にならないほど豊かな感情を持っていることを理解しにくいともいえるだろう。薄情であるがゆえに,他人のことを自分の思いどおりに動かせる駒や道具として見ることができる。
 言い換えると,サイコパスは,他人の感情の動きよりも,知性や認識力を理解することが得意ともいえる。その結果,自分にとって利用できるか否かによって,相手の価値が決まることになる。使用ずみの他人はさっさと捨ててしまう。相手の気持に無関心でなければ,これほど非情で乱暴なやり方で人を見捨てることはできない。他人との情緒的,社会的な絆がほとんど見られず,あったとしても希薄だからこそ,サイコパスは平然と他人との関係を断てるのだ。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.77-78

嘘がバレても慌てない

サイコパスはうすがばれたりとがめられたりしても,慌てることはない。話の筋立てを変えたり,もう一度説明し直したりして,つじつまの合わないディテールを解きほぐし,信ずるに足る作品をもう一度編みあげるのだ。果てしない偽情報の羅列も,彼らの熟練の話術にかかれば,もっともらしい,合理的で筋のとおった話に変わってしまう。とくに話術が巧みなサイコパスは,ユートピアのような彼ら独自の世界観を相手の心のなかに植えつける。サイコパス本人も,その世界観が本物だと思い込んでいるかのように。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.74

優越感と特権意識

サイコパスは優越感と特権意識が強く,他人の財産を勝手に使うのを何とも思っていない。自分が特別な存在だという誇大妄想を抱き,他人は自分の世話をするために存在しているのだと信じている。サイコパスという詐欺師の目には,たいていの人は,弱く,自分より劣っていて,たやすくだませるように見えるので,彼らがだまされるのは自業自得だと豪語する。ときには,優越感が強すぎて,自分に尽くすという栄誉を恵んでやっているのだと言ってはばからない。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.71

他人を利用・搾取

もちろん,すべてのサイコパスが遊び暮らしているわけではない。だが,サイコパスは,健康に何の問題もなく,自活できる状況にあっても,平気で他人を利用する。定職についているサイコパスでも,何かと他人にたかりたがる。同僚だろうと上司だろうとお構いなしだ。
 共感能力のないサイコパスは,おそらく,きわめて基本的な感情さえ持ち合わせていない。自分の身勝手な行動が他人に及ぼす経済的,感情的な影響には無頓着で,この弱肉強食の世界で生きている人々は,自分と同じように貪欲で非情だと思い込んでいる。また,彼らは他人の感情を正確に読み取れず,人は誰しも自分と同じように深みがなく無味乾燥な感情しか持っていないと決めつけている。
 サイコパスの精神世界では,自分以外の人間は皆,単なる物体か,標的か,障害物でしかない。さらにサイコパスは,自責の念や罪悪感を覚えることもない。一般の人々は他人を利用したり操ったり傷つけたりすることを妄想こそすれ,実際にそれを行動に移すのを思いとどまらせる道徳観念を持っているが,サイコパスにはそれがない。サイコパスは,良心から生じる疑念や懸念に苛まれることがないので,腕の良い捕食者になれるといえるかもしれない。

ポール・バビアク&ロバート・D・ヘア 真喜志順子(訳) (2007). 社内の「知的確信犯」を探し出せ ファーストプレス pp.68-69

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