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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「生物学」の記事一覧

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抗生物質と体格

 細菌存在下で育てられ,かつ,低容量の抗生物質を与えられたニワトリは,抗生物質非投与群のニワトリよりも大きく育った。一方,無菌下で飼育されたニワトリは,抗生物質を投与されたニワトリもされなかったニワトリも,成長に違いが見られなかった。驚くべき結果だった。これはニワトリの常在細菌が「成長促進」効果の発揮に必要だということを示している。抗生物質は単独では効果がなかった。この発見は50年以上も前になされていながら,無視され,そして忘れられていたのである。
 要は,5パーセント,10パーセント,15パーセントの家畜の体重(食肉)増を低コストで達成できることに,畜産業が気づいたということである。当然の帰結として,彼らが投入する餌に対して得られる食肉は増えた。製薬会社も,抗生物質を畜産家に売ることで巨額の利益が上がることを発見した。医師にミリグラム単位で抗生物質を売るのと違い,こちらはトン単位での商売である。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 91

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ペニシリンの発見

 イギリスの研究者たちは,彼らの努力をイリノイ州ピオリアでの共同研究に向けた。そこでは,ノーザン・リージョナル・リサーチ・ラボラトリーに新設された発酵部門が,カビの代謝(発酵)の活用についての研究を加速させていた。研究スタッフは経験を持っていたし,カビの収集も行われていた。しかしペニシリンを産生する種類の株は少なく,どれも実を結びそうになかった。そこで,彼らの知り合い全員に,土壌やカビの生えた果物,果実,野菜などのサンプルを送ってくれというメッセージを送った。一人の女性が,青カビを持つサンプルを求めて,ピオリアの市場やパン屋,チーズ店を探し回るために雇われた。彼女はその仕事をよくやった。研究者たちは彼女を「カビのメアリー」と呼んだ。しかし結局は,一人の主婦が持ち込んだカビの生えたカンタロープ[メロンの一種]が歴史を変えた。このカビは,1ミリリットルあたりのペニシリン産出量が250単位にも達した。さらにその変異株のひとつは,1ミリリットルあたり5万単位もの産出量を達成した。今日ペニシリンを産出するすべての株は,この1943年のカビの子孫である。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 67

抗生物質とウィルス

 ウイルスは細菌と違って細胞壁を持たないので,ペニシリンのような抗生物質は効果を発揮しない。また,ウイルスのタンパク質合成は宿主のタンパク合成の機構に依存するので,ウイルスのタンパク合成を阻害するためには,宿主タンパク合成も同時に阻害しなくてはならない。ウイルスが人の細胞に寄生すると,風邪やヘルペス,インフルエンザ,他の感染症を起こすが,ウイルスのタンパク合成だけを阻害することはできない。タンパク合成阻害の影響はヒトの身体にも及ぼされる。ヘルペスウイルスに対して用いられるアシクロビルといった薬剤や,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製過程を阻害する薬剤のように,ウイルスが細胞に侵入したり細胞から放出されたり,あるいは複製する過程を阻害する薬もある。ウイルスを抑制することはできるが,治療することはできない。一方,抗生物質はほとんどすべての細菌感染を治療できる。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 74-75

麻疹ウィルスが生き残る条件

 麻疹ウィルスが生き残るためには,一週間か二週間に一度は感受性のある人と出会う必要がある。ネズミ講のように,麻疹ウィルスは新しい犠牲者を必要とする。事実,麻疹が持続的に維持されるためには,50万人の人口を必要とする。50万人の人口規模で,出生率3パーセントの場合,毎年約1万5000人の新生児が感受性者として社会に生まれてくる。これで,麻疹ウィルスが維持される。しかし人類が50万人の人口集団を持つようになったのは,1万年ほど前にすぎない。すなわち流行の歴史もそれくらいでしかない。麻疹ウィルスは,動物からヒトへ先史時代に何回も種を超えて感染したのかもしれない。しかし十分な人口がなければ消滅した。
 たとえば北大西洋のフェロー諸島のような島嶼部では,何十年にもわたって麻疹が見られなかった。しかし,1846年に船が感染者を運んでくると,麻疹は一気に広がった。基本的にすべての人が感染する。同じような流行は,船乗りによってウイルスが持ち込まれた18世紀半ばのハワイでも見られた。発熱で灼かれた人は,身体を冷やすために海へ入った。しかし効果はなかった。流行が終息したとき,5人に1人が死亡していた。そしてウイルスは死に絶える。何年も後に,船によってふたたびウイルスが持ち込まれるまで。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 53

最も成功した細菌

 現在,世界では50の細菌の「門」が知られているが,そのうち8から12の門はヒトの体外に見つかる。そのうちの99.9パーセントを占めるのが,バクテロイデス門とフィルミクテス門を含む6つの門である。最も成功した(つまりヒトと暮らすという意味において)細菌が,ヒト・マイクロバイオームの核心を構成する。時間とともに,彼らはヒトの身体に常在し,そこで繁栄するための特性を獲得していった。そうした特性のなかには,酸性環境下でも生存できる,ヒトの食事から栄養を摂取できる,湿潤よりも乾燥を好む,あるいはその反対といったものがある。
 すべての細菌を合わせると,一人あたり約三ポンド,つまり脳に匹敵する重量の細菌がヒトに常在し,その種は一万に及ぶ。1000種以上の動物を有する動物園はアメリカにはない。ヒトの身体の内外に棲む目に見えない「細菌動物園」は,より多様で複雑である。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 28-29

岩のなかの細菌

 細菌は岩のなかにも棲む。たとえば南アフリカのムポネン金鉱山では,細菌は放射性崩壊という現象の助けを借りて生きている。具体的には,ウラニウムが水分子を分解するときに生じる水素を硫黄と結合させて硫化水素を生成し,それを栄養源としているのである。細菌たちは金の採掘さえ行う。デルフチア・アシドヴォランスは,そのままでは自分にとって有害な金のなかの移動イオンを,不活性な形に変える特殊なタンパク質を有している。そうした変換は水中で金を沈殿させ集積する機能を持つ。一方,世界で最も強固な細菌であるデイノコッカス・ラディオデュランスは,放射能を放出している核廃棄物のなかに棲む。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 19-20

家系図のなかの位置

 別の測定基準も存在する。家系図のことは誰でも知っているだろう。祖先が,たとえば曾祖父母を筆頭に祖父母,両親など,木が枝を広げるように描かれている。世代を経るごとに枝の数は増大する。ここでは,地球上のすべての生物についての家系図を考えてみる。あまりにも多くの生物が存在しているため,家系図は一本の木というより,まるで枝々があらゆる方向に伸びた灌木林のように見えるだろう。それを,第一世代が中心にあり枝が外に突き出るような丸い灌木林だと想像してみる。そして私たち人類をその林のなかの,時計の針で言えば八時の位置に置いてみよう。
 ここで質問。私たちがトウモロコシと呼ぶ農作物は,その林のどこに位置するだろうか。一般的に言えば,緑色植物であるトウモロコシが,自分たちに遺伝的にそれほど近いとは考えないのではないだろうか。トウモロコシは円周上の反対側に位置すると思うかもしれない。しかしそれは間違いで,トウモロコシは8時01分に位置する。ヒトとトウモロコシが,遺伝的にそれほど近いのであれば,林の残りの部分と枝を占めているのは何者なのか。答えは,その大半が細菌ということになる。たとえば,よく知られている大腸菌とクロストリジウム属菌の遺伝的距離は,トウモロコシとヒトの遺伝的距離より遠い。人類は細菌が圧倒的優勢である世界の小さなシミにすぎないとも言える。私たちはこうした考え方に慣れる必要がある。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 16

微生物の成功

 微生物世界の巨大さを理解するためには別の見方も必要である。微生物は,いくつかの例外を除けば裸眼で見ることはできない。何百万個かの細菌が集まると針の穴ほどの大きさになる。しかしすべての微生物を集めると,マウス,クジラ,ヒト,鳥類,昆虫,虫,木のすべてを合わせた数よりも多くなり,私たちに馴染みのある目に見える生物すべての重さを超える。そのことについて考えてみよう。微生物は地球上の生物質量(バイオマス)の大きな部分を占める。それは,哺乳類,爬虫類,海にいるすべての魚,そして森林を合わせたより大きい。
マーティン・J・ブレイザー 山本太郎(訳) (2015). 失われてゆく,我々の内なる細菌 みすず書房 pp. 14-15

侵入者と知性

 2人が「定着」に成功した19種の鳥と,失敗した鳥の性質を調べたところ,両者のあいだに2つの大きな差異が認められた。成功した鳥のほうが大きな脳を持っていたのだ。またこれらの鳥は,ルフェーブルが鳥類のIQに組み入れた,イノベーション好きで柔軟な行動を示した。


 ソルがのちに世界中の土地に侵入した428種の鳥を観察したところ,同じパターンが認められた。侵入種の代表格と言えば,イノベーションの王様とも言えるカラス科の鳥たち――アフリカ,シンガポール,アラビア半島のイエガラス,日本のハシブトガラス,アメリカ南西部のワタリガラス――だ。これらの鳥はすべて脳が大きく,侵入地では害鳥と見なされている。


 侵入に成功する両生類や爬虫類も成功率の低い仲間に比べて脳が大きく,この傾向はホモ・サピエンス(俗に「植民する類人猿」と呼ばれ,地上のほぼすべての陸地に侵入している)をふくむ哺乳類でも変わらない。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 359


蛾の退治のため

 鳥類学者のピーと・ダンは,イエスズメを「サイドウォーク・スズメ」と呼ぶ。1850年まで,北アメリカにイエスズメはいなかった。現在では,数知れずいる。誰かが持ちこんだはずだ。1851年,異常発生したガを退治するために16羽のイエスズメがはじめてブルックリンに持ちこまれた。これらのイエスズメはすぐ新世界に定着したわけではないが,翌年さらにイギリスから送りこまれると,今度は定着して繁栄をきわめた。個人や帰化協会が旧世界の動物を自宅の庭や公園に持ちこみ,これがイエスズメの拡散を助けたことはまちがいない。それにしても,この鳥の広がりようは驚異的だ。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 355-356


認知能力仮説

 つまり,才気あふれる正確な歌はオスの高い知力と学習能力の証だと言える。「認知能力仮説(cognitive capacity hypothesis)」によれば,メスは才知にもとづいてオスを選ぶとき,歌を手がかりにする。つまり歌の上手なオスは,自分が優秀な学習者であることをメスに見せつけているのだ。この説では,歌のうまいオスはいい歌を習得し,記憶し,忠実に再生するのがうまいだけでなく,知力が問われる作業にも長けている可能性が高い。そうした作業にはあらゆる学習,意思決定,問題解決(いつ,どこで,なにを食べるか,捕食者をどのようにして避けるか,メスの気をどのようにして引くか)があり,それらはおそらく「良好な」遺伝子と子孫に十分に餌を与えられる能力という,メスにとって最重要な形質なのだ。しかし,オスの歌のうまさとほかの認知能力を要する作業をこなす能力とのあいだに実際に相関があるか否かはわかっていない。これまでに得られている証拠ではどちらとも言いがたい。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 250


死を悼む気持ち

「カラスやワタリガラスが死んだ仲間のまわりに集まるのは,仲間の死の原因と結果を知ることが自分の生存にとって重要だからだ」とマーズラフとエンジェルは書く。「私たちは,死んだカラスのパートナーと家族は死んだカラスを悼んでいるとも考えている」


 私もそうではないかと思う。愛,欺瞞,そしてパートナーが食べたいと思っている物を知ることと同様,死んだ者を悼む気持ちは人間だけのものではないはずだ。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 204


関係性の知能指数

 認知生物学者のネイサン・エメリーによれば,このように1羽と固く結びついているためには一種の特別な認知能力が必要になる。これは「関係性の知能指数(RQ)」と呼ばれ,パートナーが出しているかすかな社会的信号を読み取り,これに適切に対処し,その情報を使って相手の未来の行動を予測する能力だ。この作業はかなりの心的能力を必要とする。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 179-180


感性満腹感

 人間と同じく,鳥もいろいろな物を食べたいので,おいしい物でもたくさんはいらない。この傾向は「感性満腹感(specific satiety effect)」と呼ばれる高度な社会的能力だ(この感覚はわかりやすいと思う。チーズをずっと食べていると,もうあと一かけらも欲しくなくなる。そこで果物を食べる)。カケスのメスが何を好むかは,経験によって異なる。オスにとって,メスのこの変わりゆく好みを知ろうとするのは当然の流れだ。なにしろ,メスが一番望んでいる餌をあげることが,互いの絆を強力にしてくれるのだから。果たして,この実験でカケスのオスはメスが食べたい餌を察することができたらしく,これまで食べていなかったほうの幼虫をメスにあげた。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 162


早期学習仮説

 この点において,カレドニアガラスはヒトの生存戦略を理解する手がかりを与えてくれそうだ。ヒトは霊長類の中でも親に依存した幼年期が長く,その期間に生存戦略をしっかり学習する。オークランド大学のチームによれば,ヒトとカレドニアガラス双方における採餌にかんする高い技術レベルと親に養育される長い幼年期は,相互に因果関係があるらしい。この考え方は「早期学習仮説(early learning hypothesis)」と呼ばれる。学習を必要とする道具づくりがあるために,幼年期が長期化するというのだ。つまりカレドニアガラスは,鳥だけでなくヒトにおいても,道具の使用が生活史に与える進化的な効果を解明する良好なモデルになるかもしれない。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 119


知性の理由

 諸説あるが,2つの仮説が有力だ。最初の説では,おもに採餌にかかわる生態学的な問題によって脳が肥大して,認知能力が上がったとされる。その生態学的な問題とは,厳しい季節もある年間をとおして餌をどう探すか,というものだ。種子を隠した場所をどのようにして覚えておくか?手に入れるのが難しい餌をどのようにして得るか?一般に,過酷な環境や予測が難しい環境に棲む動物は認知能力が高い。これには高い問題解決能力や,新しいものを探したり試したりする柔軟性がふくまれる。


 2番目の説は,社会圧によって柔軟で知的な心の進化がうながされた,というものだ。他者と仲良くし,自分の縄張りを主張して守り,盗みをはたらく個体に対処し,つがい相手を見つけ,子育てし,責任を分担するようになったということだ(野生のトキが渡りのあいだに編隊のリーダーを入れ替わるのは,一種の社会適応の認知,つまり互助性の理解を示唆する。一度リーダーを務めればほかの鳥がリーダーになってくれるし,それで群れ全体がうまくいく)。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 93


鳥の脳の大きさ

 では,これらの鳥類は脳も小型化したのだろうか?


 じつは,それほど大幅に小型化したわけではない。鳥類につながった恐竜は,飛行が進化する以前から肥大化した脳を持っていた。木から木へと移る際に互いに衝突するのを防ぐために,大きい目と優秀な視力を制御する必要にかられ,恐竜の脳の視覚中枢はすでに膨張していた。聴覚と協調運動のための処理をおこなう脳領域にしても同様だった。一方で鳥類の脳は,新たな生態学的地位を見つけ,捕食者から逃れるために高度な神経・筋肉協調を実現するように進化した。


 生物はどのようにして大きな脳を維持しつつ,体のほかの部分を小型化するのだろうか?鳥類はこの問題をヒトと同じ方法で解決した。答えは,ヒナのような頭と顔を維持することにあった。これは「幼形進化」(文字通りには,「幼少化」)と呼ばれる進化の過程で,成体になっても若年のころの形質をとどめるよう進化することを指す。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 74


圧縮されたゲノム

 鳥の圧縮されたゲノムも,強力な飛行のための適応かもしれない。陸上に卵を産む羊膜類(爬虫類や哺乳類を含む)の中では,鳥類が最小のゲノムを持つ。典型的な哺乳類のゲノムが10億~80億個の塩基対を持つ一方で,鳥類の場合はおよそ10億個にとどまる。反復配列が少なく,進化の過程でDNAが排除される,いわゆる削除イベントが多かったためだ。こうして圧縮されたゲノムを持つからこそ,鳥は飛ぶ条件を満たすために遺伝子をすばやく調整することができる。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 69


一番賢い鳥は

 ルフェーブルのスケールで一番賢い鳥はなんだろう?


 カラス科の鳥たちだ。この結果に意外性はない。ワタリガラスとカラスが明らかに飛び抜けて賢く,これにオウム・インコ類が続く。そのあとにムクドリモドキ,猛禽類(とくにハヤブサやタカ),キツツキ,サイチョウ,カモメ,カワセミ,ミチバシリ,サギなどがいる(フクロウは研究対象から外した。この鳥は夜行性なので,何か新しいことをしてもまず直接観察されることがなく,糞などから推測することしかできないからだ)。やはり上位にいるのがスズメ科やカラ類の鳥たちで,下位に甘んじているのがウズラ,ダチョウ,ノガン,シチメンチョウ,ヨタカなど。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 56-57


知能という言葉

 動物学者は「知能(intelligence)」という言葉を避けがちだが,ルフェーブルによれば,それはこの言葉が人間を暗示するからだという。著書『動物誌』でアリストテレスは,動物には「人間の特質や態度」の要素が見受けられると書いた。それらの要素は,「荒々しさ,柔和さ,穏健さ,勇気や臆病さ,恐怖や自信,威勢の良さやずる賢さ,そして知能にかんして言えば聡明さに近いもの」だという。しかし最近では,動物学者は人間の知能,意識,主観に似通ったものをすべて持ち合わせているかのように鳥を扱う。そこで擬人化のそしりを受ける。鳥の行動を人間に羽が生えただけのように解釈している,と非難されるのだ。自分の経験をほかの動物に投影するのは人間としては自然なことでも,それは私たちの判断を誤らせかねない。いや,謝らせる。ヒトと同様,鳥類は動物界,脊索動物門,脊椎動物亜門に属する。だが系統が共通するのはここまでだ。鳥類は鳥綱,私たちは哺乳綱だ。そして,この枝分かれで大きな生物学的差異が生じた。



ジェニファー・アッカーマン 鍛原多惠子(訳) (2018). 鳥!驚異の知能:道具をつくり,心を読み,確立を理解する 講談社 pp. 37


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