I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   
カテゴリー「その他心理学」の記事一覧

嘘を見抜くのが下手

なぜ私たちは,嘘を見抜くのがかくも下手なのか?なぜなら,私たちが嘘の徴候だと考えるあらゆる事象は,嘘を発見する能力とはまるで関係がないからである。確たる証拠がないにもかかわらず,態度や話し方によって誰かが嘘をついていると判断した時のことを思い出してみればよい。その際あなたは,落ち着きのない視線,言葉のつまり具合,そわそわした態度,関係のないトピックに話が飛ぶ様子などに基づいて,そのような判断に至ったはずだ。実際には,これらはすべて嘘とは関係がなく,ときに私たちを誤った方向に導く。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.258

攻撃性

今日の私たちは,攻撃性を不適応で常軌を逸したものと考えている。暴力犯罪者には,彼らや他の人々が犯罪を繰り返すのを阻止するために重い懲罰が課せられる。したがって犯罪が適応的であるとは,とても言えない。だが,進化心理学者の主張は異なる。攻撃性は,他人から資源をもぎ取るために用いられ,資源は進化というゲームの核をなし,生きるため,子孫を残すため,子どもを養育するために必要なものだ。キャンディを巻き上げるために他の子どもを脅すいじめっ子のいびりから銀行強盗に至るまで,悪行には進化的な起源が存在する。また,防御のために行使される攻撃性は,自分の資源を奪おうとする他人の意図をくじくために重要だ。酒場でのけんかは力と支配の序列の確立に役立ち,目をつけている女性やライバルたちの面前で己の強さを誇示できる。男性にとっての求愛のゲームとは,社会のなかで高い地位を手に入れることでもある。「あいつは攻撃的でけんかっ早い」という評判をとることは,社会的なグループのなかで自己の地位を向上させ,より多くの資源の獲得を可能にするばかりか,他人の攻撃を阻止するのにも役立つ。そしてこれは,遊園地で遊ぶ子どもにも,囚人にも同様に当てはまる。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.33

ロンブローゾの理論

ロンブローゾの理論には2つのポイントがある。犯罪の基盤には脳が関係するという点と,犯罪者は進化的な観点から見て,より原始的な種への退行だとする点だ。ロンブローゾの見るところでは,犯罪者は「先祖返り的な刻印」,すなわち大きなあご,傾斜した額,一本の手掌線など,人類進化の初期段階に由来する身体的特徴をもとに特定できた。これらの特徴をもとに,彼はユダヤ人や北部イタリア人を頂点に,また,(ビレラが属する)南部イタリア人,ボリビア人,ペルー人を底辺に置く進化的な序列を措定した。おそらくその見方には,農業中心の貧しい南部イタリアでは犯罪発生率が北部よりはるかに高かったという当時の事情も関係しているのだろう。それは,統一されたばかりのイタリアを悩ます「南部問題」の数ある徴候のうちの1つだった。

エイドリアン・レイン 高橋 洋(訳) (2015). 暴力の解剖学:神経犯罪学への招待 紀伊國屋書店 pp.29

準備時間2分

この「2分」という統計値を聞いた時には驚いたが,大きな大学の神経学部門のトップとして多くの大学院生とポスドクを抱える自分の経験に照らしてみると,たしかにその通りだと思えた。おそらくどこの職場でも,同僚やスタッフとの打ち合わせのための「リハーサル」や計画に,多くの時間が費やされることはないだろう。しかし,そのような個人どうしの直接的な関わりは,組織を成功に導く上で重要なはたらきをするはずだ。また,これらの打ち合わせで与えた印象が,あなたのキャリアの方向を決めることだってある。だからこそ,ごく個人的な打ち合わせであっても,事前に計画すること,少なくとも,たった数分ではなくもっと時間をかけて計画し,相手の反応を予測することが重要なのだ。
 心の中で,言いたいことを想定し,相手の反応も予測しておく。今のあなたにとって,その相手は10代の息子や娘だ。肯定的な反応と,否定的な反応の両方を予測し,それぞれのケースで,次に何を言うかを決めておくのだ。あなたがイライラしているように見えたり,頭が混乱しているように見えたりしたら,相手はあなたを信頼しないだろう。同僚や従業員であれ,10代の息子や娘であれ,それは同じだ。

フランシス・ジェンセン エイミー・エリス・ナット 渡辺久子(訳) (2015). 10代の脳:反抗期と思春期の子どもにどう対処するか 文藝春秋 pp. 19-20
(Jensen, F. E. & Nutt, A. E. (2015). The teenage brain: A neuroscientist’s survival guide to raising adolescents and young adults. New York: Harper.)

信憑性構造

社会学者はときおり,突飛な宗教的あるいは政治的教義が道理にかなったものであるように見せかけるための社会的支援ネットワークのことを「信憑性構造」と呼ぶことがある。一般的に言って,通念から逸脱している度合いが高ければ高いほど,そのような支援はより多く必要になる。緑色のクラゲを崇拝する人々が,その信仰を守りつづけるチャンスを手にしたいなら,信者は固く結束する必要があるのだ。
 これと似たようなことは,常軌を逸したポルノにも言える。インターネットが到来する前,異常な性的嗜好を持つ人たちは,満足できる素材探しに苦労していた。だが今では,どれほど変わったフェティシズムだろうと,欲情を刺激するイメージ——さらには自分の性的嗜好を共有する人たち——を探すことは可能だ。

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 292

報酬と障害

ゲームがプレイヤーをハマらせるために使う手段は,報酬だけではない。障害,つまり”フラストレーション”も利用する。単純なゲームから複雑なゲームまで,あらゆるゲームには,慎重に仕組まれたフラストレーションが含まれている。たとえばときおり,あるレベルをクリアすると急にゲームがむずかしくなることがあるが,そういった障害は金を出せば切り抜けられるようにできていることが多い——アプリ内の課金手段を使い”パワーパック”を購入することなどによって(純粋主義者たちがこうした近道を見下していることは,言うまでもない)。

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 239-240

ネットの依存性

しかし,ツイッターは電子メールとは重要な点で異なっている。2000年代の他の”Web 2.0”製品と同様に,ツイッターではいよいよ”ゲーム化”が進んでいるのだ。企業は,ゲームからヒントを得て,顧客を病みつきにさせようとしている。あなたが使っていた電子メールソフトは,時間がある限りそれを使っていたい気持ちにさせるようにはデザインされていなかったろう。だが,ツイッターでは,はじめからそれが意図されている。

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 233-234

報酬率を高める

単純だが,それでも強調する価値のある事実がある。テクノロジーは,努力と報酬との比率において,報酬——それも通常は短期的報酬——の率を高めるという事実だ。あらゆる動物は短期的報酬を好む。その理由は,すでに見てきたように,生物の目標は生きのびることにあり,即時的な報酬は,それを可能にしてくれるからだ。しかし,いつでも望むときにすばやく報酬を手に入れるようなことは,他の動物にはできない。それは人間においても,最近まで,ごくひと握りの人にしかできなかったことだ。
 だが,無制限に物が手に入ることは,恩恵を害に変えてしまう可能性がある。たとえば糖分がその例だ。私たちは,甘い物を好むように進化してきた。果実はエネルギー源であると祖先が気づいて以来,無数の世代を経て,私たち人間の内臓は,オレンジなどの果実がもたらす糖分の爆発的横溢に適応できるようになった。でも,実際の果実より10倍も糖分濃度が高いオレンジ味の炭酸飲料水をゴクゴク飲んだとしたら?

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 114

依存とは

一度このことに気づけば,「心理的」な依存と「物理的」な依存(または病みつき行為)の従来の区別は誤解を招きやすいものだとわかるだろう。たとえば,摂食障害を持つ人が大量のアイスクリームを食べると,その行為が脳の変化によって強化されることがある(ついでに,そのあとそれを吐きもどせば,セロトニンのハイも経験できる)。このような人は,アイスクリームに物理的に病みつきになっている。しかし,この病みつき行為は,自分にそれを強いることをやめれば,完全に元に戻せるものだ。だから,どの面から見ても,病気と言うことはできない。
 一方,依存という言葉は,さまざまなことを意味する。糖尿病患者の一部は,インスリンがなければ命を落とすという意味で,インスリンに依存している。ヘロイン依存者は,ヘロインがなければ命を落とすわけではないが,ヘロインというフィックスを得られなければ離脱症状に苦しむという意味で,ヘロインに依存している。1日にエスプレッソを6杯飲む人も,突然コーヒーをやめたら,離脱症状に苦しむ。おそらく,かなりひどい頭痛に見舞われることだろう。だとすれば,その人はカフェインに依存していると言えるのではないだろうか。

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 103

スリープ・ランプ

たとえば,アップルのMacBook(マックブック)シリーズの魅力的な特徴の1つに,状態表示ランプがある。パソコンがスリープ状態になると,このランプが穏やかに点滅するのだ。初期のレビュアーは,このランプが持つ癒やしの効果を褒めそやしたが,それを眺めることが,なぜそれほど癒しの感覚をもたらしてくれるのかについては突きとめられなかった。が,そののちアップルが「呼吸のリズムを模した」スリープ・モード表示ランプの特許を申請し,「心理的に魅力のある」ランプは,あらかじめ意図されたものであったことが判明した。
 技術ブロガーのジェシー・ヤングが指摘するように,アップルのスリープ・モードのランプは睡眠中の呼吸ペースに合わせてあるが,デルのランプは,激しいエクササイズをしている最中の呼吸のペースに近い。「アップルをまねしようとする企業は数あるものの,どこもピントを外しているという事実は興味深い。これも,細部に徹底的にこだわりぬくアップルの姿勢を示す例の1つだ」とヤングは言う。

デイミアン・トンプソン 中里京子(訳) (2014). 依存症ビジネス:「廃人」製造社会の真実 ダイヤモンド社 pp. 35

客観性と文脈

また,心理学の研究は客観性が求められますが,それを突き詰めすぎると,三人称的なかかわりで,文化社会的な要素を一切排除した脱文脈的なものとなります。それを防ぐ一つの方法として,実験だけに限らず,観察との併用が有益と思われます。観察される知見と実験での課題通過の年齢があまりに食い違うようであれば,実験そのものに問題があることも視野に入れるべきでしょう。

林 創 (2016). 子どもの社会的な心の発達:コミュニケーションのめばえと深まり 金子書房 pp. 39

フット・イン・ザ・ドアと洗脳

同じ原則が,マイナス行動へ人を駆り立てる原動力にもなる。たとえば1970年代のはじめに,ギリシアの軍事政権は新兵たちを残酷な拷問執行人に鍛え上げようと考えた。フット・イン・ザ・ドアのテクニックを使い,新兵を少しずつ囚人の虐待に加担させていったのだ。まず最初に,兵士たちは監房の外で囚人たちが虐待される場面を見せられた。つぎの段階では,監房の中に入って虐待の場面を眺めさせられた。そのつぎの段階では,監房の中で少しだけ虐待を手伝うように言われた。笞で打たれるあいだ囚人の体を抑えつけている,などだ。そして最後の段階では,自分の手で囚人を笞で打つように命じられた。そして虐待執行人となった彼らの姿を,新たに入隊した兵士の一団が監房の外で眺めた。フット・イン・ザ・ドアのテクニックが,ゆっくりとながらも着実に効果を発揮し,最初はまったく受け入れられなかった行動を,兵士がみずからおこなうようになったのだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.188

ワトソンと広告業

アルバートの実験は,ワトソンの私生活に大きな変化をもたらした。妻帯者だったワトソンは,実験にあいだに共同研究者のロザリー・レイナーと恋に落ちた。2人の関係を知ったワトソンの妻は離婚訴訟を起こし,それを耳にしたジョンズ・ホプキンス大学の学長はワトソンに辞職を求めた。ワトソンは学究生活と決別して大手広告会社に就職し,行動主義心理学の知見を活かしてデオドラント,ベビーパウダー,煙草の売上拡大に貢献した。最大の功績は,マクスウェルのキャンペーンの一環として,アメリカに”コーヒーブレイク”の発想をもたらしたことである。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.138

ワトソンvs.フロイト

行動の観察と計測を中心に据えたワトソンの考え方はたちまち注目を集め,世の学者たちがますます沢山のネズミに,ますます複雑な迷路を走り回らせるようになった。ある新聞記事には,こんな言葉が残っている。「かつてダーウィンに魂を奪われた心理学は,いまやワトソンにうつつを抜かしている」
 勢いをえた行動主義者は,学習原則にとどまらず心理学のその他の領域にまで手を広げた。なかでもワトソンが強い興味を抱いたのは,恐怖症の原因解明と治療法の開発だった。行動主義者の例にもれず,彼はジークムント・フロイトの「えせ科学的なたわごと」に代わるものを見つけたいという欲求に駆られていた。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.134-135

ジェームズvs.フロイト

フロイトが渡米したころ,ウィリアム・ジェームズは67歳で,深刻な心臓病に悩まされていた。体調がすぐれなかったにもかかわらず,彼はクラーク大学まで出かけて,フロイトの公演を聞いた。彼はその内容に不快感を示した。そしてのちにはフロイトの夢分析を,「危険な方法」であり,偉大な精神分析学者であるフロイト自身が「固定観念に取り憑かれ」,惑わされていると指摘した。
 ジェームズとフロイトは,さまざまな点で意見が分かれていた。激しい怒りの原因とその解消法に関わる問題も,その1つである。フロイトは,激しい怒りは暴力的思考が抑圧されるために生じるのであり,安全な代償行動で激情が解放され,浄化(カタルシス)がおこなわれれば解消できると考えた。たとえば,サンドバッグを叩く,叫ぶ,悲鳴を上げる,足を踏みならすなどである。かたやジェームズは,人が怒るのは怒ったかのような行動をするためであり,フロイトのカタルシス療法は,怒りをかえって増大させると考えた。2人のあとに続く心理学者たちは,どちらの説が正しいかを見極めるべく,長年にわたって研究をおこなった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.126-127

ボトックス実験

ボトックス(科学者のあいだでは「ボツリヌス・トキシン」と呼ばれている)の注入は,世界できわめて人気の高い美容整形法の1つである。もともとは顔の筋肉痙攣の治療用に開発されたボトックスは,顔の筋肉の収縮に関わる神経を麻痺させる効果がある。1990年代のはじめに,研究者たちは眉間のしわにボトックスを注入すると,額の動きが部分的に麻痺し,しわが大幅に消えることを発見した。その結果顔つきが前より若々しくなるが,同時に表情がやや固くなり,能面のようになる。
 コロンビア大学バーナード校のジョシュア・イアン・デイヴィスとそのチームは,この若返り法がジェームズ理論の実証に役立つのではないかと考えた。デイヴィスは,実験のために2通りの女性参加者グループを集めた。片方はボトックス注入の施術を受けたグループ,もう片方は額にある種の”詰めもの”を注入するなど,べつの方法による施術を受けたグループである。どちらの方法も目的は若々しい外見を作りだすことだが,顔面筋肉を麻痺させるのはボトックスのみである。デイヴィスは,女性たちにビデオを何本か見せた。男が生きた毛虫を食べるおぞましいビデオ,最高に笑える愉快なアメリカのビデオ,ジャクソン・ポロックについての深刻なドキュメンタリービデオなどである。1本見るごとに,女性たちはビデオに対する感想を点数で評価した。結果を見ると,フィラーで施術を受けた女性たちに比べ,ボトックスで施術を受けた女性たちは感情反応が鈍かった。というわけで,動かないこと(この場合は顔の表情)が,感情体験を衰弱させるというジェームズ説の正しさが実証されたのだった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.119-120

ナンパ実験

ハトフィールドとクラークは,女性5人と男性4人に頼んで,大学内で見ず知らずの相手にこう話しかけてもらった。「前からあなたのことが気になっていたんです。とても魅力的な人だと思って。今晩,一緒に寝てくれませんか?」。彼らは相手の反応をチェックシートに記録したあと,じつはこれは社会心理学の実験であり,話しかけたのは純粋に科学的な調査のためだったと被験者に説明した(この部分に対する相手の反応は記録されていない)。『セックスの誘いに対する男女の反応差』と題する論文で,クラークとハトフィールドは男女の反応がどのようにちがうか報告した。男性に声をかけられた男性の場合は,なんと75パーセントが「君のところで,それともぼくのところで?」の項目にチェックが入った。
 当然ながらというべきか,ハトフィールドの実験結果は様々な議論を呼んだ。これを見れば社会的強者が,弱者につけ込もうとする事実がひと目でわかると主張する者もいれば,これは「男=軽薄」説を裏づけるゆるぎない証拠だと決めつける者もいた。実験結果はまた,ポップカルチャーの世界に思いがけない影響をあたえた。1998年に,イギリスのジャズバンド,タッチアンドゴーが,ハトフィールドの実験用台本を女性に読み上げさせて,オリジナル曲<今晩一緒に……>に挿入したのだ。この曲はイギリスでシングル盤トップチャートの3位に入り,ユーチューブでは200万回のアクセスを記録した。
 この実験成功に気をよくしたハトフィールドは,仲間とともに恋愛心理に関してべつの実験をいくつかおこなった。
 その結果,友情も愛情もつきあいが長くなるほど強まることがわかった。理屈からすれば,誰かにつきまとえばつきまとうほど,相手はあなたに好意をもち,やがて愛へと発展する可能性が高まることになる。この理論は,人が身近な相手と結婚することが多い理由や,ゲッツィンガーの学生たちがしだいにブラッグバッグと仲よくなった理由の説明にも使われた。そしてこの理論にしたがってある男性が恋人に700通手紙を出したところ,彼女は郵便配達員と結婚してしまった(というのは冗談)。
 細々と続けられた愛に関する研究はしだいに勢いを増し,1970年代なかば以降は,何百人もの学者が人間の心の神秘を探るため,何千件もの実験をおこなった。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.62-63

タブー

1960年代以前,心理学の世界では友情や恋や愛情を,実験で解明することはタブーとみなされていた。人間心理をあまりに性欲と結びつけて解釈したがるフロイトの非科学的な姿勢と一線を画したかったためか,各地の大学は実験の中で被験者のプライバシーに立ち入ることを奨励しなかった。禁止領域に立ち入った場合は,実際に処罰もおこなわれた。「性欲をそそる目的で誰かの耳に息を吹き込んだことはありますか」と被験者に質問し,謹慎処分になった教授の例もある。
 1960年代に入っても,科学の世界では人がたがいに好意をもったり愛しあったりする過程について,ごく初歩なことしか解明されていなかった。そしてブラックバックの謎が解き明かせない現実に直面して,心理学者は自分たちの知識不足をあらためて思い知った。それが1つのきっかけとなり,何人かの研究者が学問の未開の地に踏み込み,友情や恋愛の心理について調べはじめた。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.61

歩き方から情動へ

フロリダ州アトランティック大学の心理学者サラ・スノドグラスは,歩き方が感情にどのように影響を与えるか調べることにした。運動が心拍にあたえる影響を調べるという名目で,スノドグラスは2日間に分けて参加者に3分ずつ歩いてもらった。参加者の半数は大股で,腕を振り,背筋をのばして歩くよう指示された。もう半数は小股で,のろのろと,うなだれて歩くように指示された。そして参加者の全員が,歩いたあとに感じた幸福度を点数で答えた。結果には,アズイフの法則の威力が示された。大股で歩いた人たちのほうが,のろのろ歩いた参加者より幸福感を感じる度合いがはるかに高かったのだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.37

表情から情動へ

写真の撮影で,人を笑顔にさせたい場合に「チーズ」と言わせるのにならい,ミシガン大学の研究者は笑顔を作らせるときは被験者に「イー」と言ってもらい,嫌な顔をしてもらうときは「ユー」と言ってもらった。
 ワシントン大学の心理学者は,左右の眉頭にゴルフティーを取り付け,2つのグループにそれぞれちがう表情をしてもらった。片方のグループには,ゴルフティー同士が触れ合うように両眉を寄せて不機嫌顔を作らせた。もう片方のグループには,眉頭のゴルフティーをたがいに引き離すようにして,穏やかな表情を作らせたのである。
 同じ主旨の実験でおそらく一番有名なのが,首から下が麻痺した人に筆記を可能にする方法を開発するためという名目で,ドイツの研究者たちがおこなったものだろう。集められた被験者の半数は,鉛筆を横にして上下の歯のあいだでくわえるように頼まれ(表情は笑っているようになる),もう半数は鉛筆を上下の唇のあいだにはさむように頼まれた(表情は不満げになる)。
 「イー」と言い続けた被験者,眉頭のゴルフティーを左右に引き離すようにした被験者,上下の歯で鉛筆をくわえた被験者は,それまでより気分が明るくなった。さまざまな実験が繰り返し何度もレアードの実験結果を裏書きし,ジェームズの理論の正しさを証明した。人の行動はたしかに感情に影響する。言い換えれば,アズイフの法則が暗示しているとおり,行動しだいで思うがままに感情を生み出すことも可能なのだ。

リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2013). その科学があなたを変える 文藝春秋 pp.31

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

Copyright ©  -- I'm Standing on the Shoulders of Giants. --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS /  /